4.総合討論(11)

前川さっき、どうでもいいという変な発言をしましたが、何かをやるときに名前があったほうがいいよね。それでタッチケアという名前を利用したら良いのです。

「快いタッチ、40回1分」というのは、これは方法じゃなくて、ラットです。動物です。人間ではありませんから、お間違いなく。

それから、「子どもに目が行かない無関心の親に、どのような導入方法でやっていけばよいでしょうか」というのですが、これはやはり親より、まず、その子どもにみんなしてふれあって、遊んであげたりして、子どもらしい表情にすると、親が今度はそれが親心を呼び戻せば親自身が変わってきます。親にアプローチするより、まず子どもにしたほうが僕はいいと思うけど、どうでしょう、先生。

吉永ここまでこんなところで言うと言い過ぎなのかもしれませんが、児童相談所の嘱託医をしているのですが、お母さんに、こうしてもらいたい、ああしてもらいたいと、いろんなことを思うんですね。だけど、通常よりも高い確率でお母さんに疾患があることがある。お母さん自身が診断されなかった発達障害ではなかろうかという感じだとか、中には、実際に精神疾患が診断されているということを多く経験するんですね。

恐らくその方は、学生時代も、「あいつ、何か変わっているよね」と言われてきた子どもだったかもしれません。親の手を煩わせた子かもしれません。就職しても何かうまくいかないし、「どうして私、うまくいかないんだろう」と自分でも思っていらっしゃったかもしれません。その頃は、残念ながらうまくいかなかったけど、犠牲者はご本人だけだったのですが、そこに子どもが出来ると、子どもも犠牲者になっていくんです。そうすると、もう説明だとか説得ではどうしようもない。一生懸命こんなに言葉を尽くして説明しているのに、こんなに何度もお願いしますと言っているのに、あのお母さんは子どもにそうやってくれない。中には完全にその能力がないという人がいたり、それから、出来ないことをずっと言われているうちにだんだん依怙地になって、外との関係を遮断する方もいらっしゃいます。そうなると、こんなことを言うといけないかもしれませんが、その家庭で親子関係がうまくいかないのは仕方がないんですよね。どうしようもないと言いますか。

だけど、子どもには愛されてきた記憶を持って育ってもらいたいという思いが、母子にかかわる我々にはあるわけです。中には、お母さんと死別した子どももいますし、お母さんとお父さんがうまくいかなくて離婚した子どももいます。その子たちにみんな愛着障害という問題が起きるのかというと、そういうわけではない。この世の中って素敵だよ、君のことを思っている人が世の中にいるよ、ということを誰かに伝えてもらいたいなと思うんです。その最初の一人が皆さんである可能性があります。