4.総合討論(12)

前川そうですね。一番困るのが、精神疾患の親に育てられている子どもです。僕らの力ではどうにもならない。もう一つは、軽度知恵遅れの親が大変です。知恵は遅れているけどセックスができるので、子どもを産んじゃうんです。そうすると、その子どもを見るのはなかなか大変で、不適切養育になってしまうのです。

そういう人々は、いろいろな地域の資源を活用して、ある程度ほかの人に育ててもらうしか方法はないと思いますが、子を育てるのは親ですので、言うは易し、行うは難しで大変なことです。僕らのタッチケアではどうにもならない。子どもがかわいいとか、そういうのは事実だと思いますから。吉永先生がおっしゃるとおりです。

今、私がやっている育児相談だとか、保健所の二次健診では、意外とそういうお母さんたちが多いです。僕の力ではどうにもならない、虚しさを感じます。余計なことですが。

橋本別にいただいております。「愛着形成が不完全な子どもが幼児になっています。やり直しのよい方法があれば教えてください」。

これはよく聞かれることですが、話を聞かれた後に、「ああ、早く聞いておけばよかった、自分はどうもうまくいけなかったけれども、今から何か、やり直しの償いみたいなことでできることがありますか?」という質問をよく受けます。これは難しいですけれども、救い道は十分あります。一言で簡単に言えば、〝乳児期に戻りましょう〟という事から始めます。もう一回、赤ちゃんの育児に戻って、子どもが何かサインを出したときにそれを受けてあげる。何かあればすぐ子どもに、「何? どうしたの? どうしたの?」と言って、抱いてやる、聞いてやる、キャッチボールですね。言葉を出してきたら、それに対して必ず返していく。まさに乳児期の育児にもう一回戻ってみましょうよ、ということです。

さらに、その後、小学校の後半、4、5、6年ぐらいになると、子どもは、子どもの世界から大人の世界を覗き見るようになります。そして、大人の醜さとか、大人の問題、そういうものに非常に敏感になってきます。そして、生意気なことを言い出します。そのときに親がよく使う言葉が、「子どものくせに、何てこと言ってるの」というのが出てきます。それを言ったらおしまいですね。

そういうときにこそ子どもの話をしっかり聞いて、受け入れて、そこで修正していく。もう一回乳児期に戻って、「どうしたの?」と抱いてやって、話をよく聞いて、対応してやると、ちょっと問題になろうとしていた子どもがいい方向にもどっていくという、大切な時でしょうね。小学校の後半というのは大きなポイントだと思います。それをそのままにずっと行ってしまいますと、17歳の犯罪とか、よく言われますね。そういうことで、もう一回赤ちゃんに戻って子どもと対応していきましょう、ということをよく言います。