4.総合討論(6)
前川ここに、まどか保育園の方から、事例が1歳4カ月で、お昼寝の際の云々と出ていますが、もしできたら、この子に、理屈を言う前に、お昼寝の前に、要するにタッチケアをやっていただければいいのではないでしょうか。
さらに、卒乳の話が出ていました。卒乳の条件は、離乳食が十分に行って、栄養が賄ってなくちゃだめですよね。それが十分条件ですね。
それから、「もし母乳をやるのでしたら……」。母乳をやめるのではなくて、夜の母乳をやめて、それから昼間の母乳をやめるほうが、やめやすいのです。幾つか条件がありますけれども、これはタッチケアと関係ないので、あとは経験のある人に聞いてください
それから、家庭のお母さんのことも書いてあります。これはちょっと難しいですが、お母さんを改めさせるより、保育している子どもたちがかわいくなれば親も変わります。それだけのことです。
橋本今、卒乳の話題が出ましたので、ちょっと外れますけれども、ぜひ皆さんに知っておいていただきたいのですが、卒乳という言葉は日本で僕が最初に提言したのですが、正確には「自然」という言葉が入って「自然卒乳」という言葉で出したのです。
昔の断乳という言葉の中には、自然にだんだんやめていく子も含まれていたのです。ところが、あるときから、アメリカからの育児の影響で、いつまでも飲んでいると自立しないよということが出てきて、早くやめさせないといけないといって、1歳断乳とかやって、これが断乳儀式にまで発展したのです。もう1歳になったから、甘えん坊になるからやめさせないといけない。乳房に「へのへのもへ」を書いたり、鬼の絵を描いたり、乳首に塩を塗ったり、嫌がらせて離すようなことが出てきたので、これはとんでもないと。せっかく乳児期に母子の絆、愛着が構築されているのに、最後の最後に、嫌がらせて、怖がらせて離させるというのは、これはとんでもないことだということで、親主導型の断乳と児主導型の「自然卒乳」という言葉を分けて提唱したのです。すなわち、赤ちゃんがお母さんのおっぱいから離れるのは、赤ちゃんが決めることであって、赤ちゃんが自然に、「もう要らないよ」というところまで待ちましょうということなのです。
ところが、次第に「自然」が省略されて「卒乳」になって、最近の育児雑誌を見たら、この前も『ひよこ』で、断乳という言葉はもう消えてしまっているんですね。「あと2カ月で卒乳したいと思います」とか、「もうそろそろ卒乳したいと思いますけど」といって、親主導型の言葉が入ってきて卒乳という言葉が誤解されているんですよ。
自然卒乳というのは、子ども主導型です。断乳というのは親主導型です。病気でやれないとか、仕事があるからやめるというのが断乳です。また、幼稚園に行くから、お昼はやめて夜だけにしようかな、などとこれも卒乳ではなくて部分断乳、計画断乳という言葉であらわします。今、世界中でも、おっぱいをやめるのは赤ちゃんが決めていることで、2歳過ぎでも赤ちゃんが欲しがればどうぞ飲ませてくださいというのが、世界の趨勢です。
だって、吉永先生でもまだ時々は吸っていると思いますよ(笑)。一生やめられないんです。だから、吉永先生がもう吸わないと言ったら、それは自然卒乳です。そういうふうに理解してください。以上です。