3.タッチケアのきっかけと日本における広まり(7)
6.育児支援の根幹は、寄り添いとエモーショナルサポートを
次の写真は昔から行われていたタッチケアの原型です。
双子の赤ちゃんにお母さんがおっぱいをやっています。背中を壁によりかけて足を投げ出して、ちょっとお行儀が悪いかもしれませんが、本当にいい光景です。しかしここに県の保健師さんが家庭への巡回訪問で回ってきて、「お母さん、何ちゅうことやってるんですか、お行儀の悪い!」と言って、カバンからマニュアルを取り出して、「はい、縦抱き、横抱き、フットボール抱き」をお母さんに教えて帰られたというのです。
私に言わせると、それはいらぬお世話です。プロはどこを見ているのか。背中と足しか見ていない。見なければならないのは親子の素晴らしい顔、表情ですね。いい顔をしておっぱいを飲んでいます。「お母さん、いいねえ。赤ちゃん喜んでるねえ、いい育児やってるよ、お母さん」と言ってお母さんを元気づけてやらなければいけない。今、専門家はマニュアル化してしまって、こういうものが見えなくなっています。逆に今、専門家がお母さんに育児ストレスを与えているケースのほうが多いかもしれません。マニュアルの提供ではなくやさしく寄り添ってエモーショナルサポート(やさしい勇気づけ)が求められているのです。
このように愛着というのは、児との日々のやり取りからなのです。難しいものではない。目と目を合わせ、抱っこしたり、声を出し合ったり、一緒に笑う。乳児にとって最高のおもちゃはお母さんの百面相です。園でもそうだと思います。子どもが一番喜ぶのは園の先生の百面相です。お風呂に入る、歌を歌ったり、それからタッチケア。じゃれ合うこと。まさに子どもが発する要求に応えてキャッチボールをしてやること、そこから愛着というものが形成されるわけで、普通に行われていた人間同士のふれ愛で、これが原点だと思います。