4.総合討論(16)
質問者エリクソンのベーシック・トラスト、「基本的信頼感」ですが、これもやはり大きく関係があるのではないかと思うんですね。そのことが1点と、もう1点お伺いしたいと思います。
これはジェンダーから来ていると思いますが、母性本能というのはないと。保育の大家である心理学の先生方も、講習会や授業でもそういうことを言うようになってきているようですが、私は、先生方からお話をお聞きして、改めて、男性とは違う、母親というのは母性本能がある。そして、あるべき。まあ、後天的かもしれませんけれども、そういうふうに私は思ってはいるのですが、その辺を先生方、お願いします。
前川難しいね。子どもを育てる上で、女性的な人と男性的な人が必要だということは事実だと思うのです。それが女性ホルモンかどうかはわかりません。それで、母親の長所というのは、いいも悪いも子ども全体を丸ごと受け入れるのです。それが僕は母性だと思います。ですから母親に丸ごと受け入れられない子どもはかわいそうなんです。それが一つ。
それから、男性は……まあ、男性的な人でもいいと思います。社会に出たときに、この子がちゃんとやっていかれるかということを厳しく評価するのです。それが父親であれ母親であれ、子どもがちゃんと育つには、この2つの役割をする人が必要ではないかと僕は思っています。
ただ、子育ての理論というのは、僕がそう思っていても、いろいろな理論がありますから、そう思っていない人はたくさんいますからね。僕はそれが正しいとは思っていないですけど、僕はそう感じているというだけです。よろしいですか。
橋本ジェンダーという言葉が出てきましたけれども、これがちょっと方向が変わって、男女平等とか男女同権とか、そういうものに強く訴えられるようになりましたね。育児に関してもそういうものが入ってきて、父親の育児参加とか叫ばれますが、乳児期だけは、生物学的に男・女は違う。男は子どもを産めません。おっぱいもやれません。ですから、この時期だけは限って考えていかないといけない。やはり乳児期の中心はお母さんです。これは脳生理学的にも少しずつわかってきました。
じゃあ、お父さんはどうしたらいいか。お母さんをHug してやればいい。家事を手伝ったり、風呂へ入れたり、おむつをかえたり、これもいいでしょうけれども、父親の育児参加で一番大事なものは、妊娠中や乳児期は、お母さんを抱きしめてやることが父親の育児のポイントだと思います。