公益財団法人 母子健康協会 第37回シンポジウム
「タッチケアで絆を育む」…安らぎの物質オキシトシン

質問者埼玉県から来ました。今、ゼロ歳児の担任をしています。ゼロ歳児に限らずなんですけれども、時間外保育で、3、4、5歳の幼児を見ることがありますが、年長児になっても、誰構わず、大人の先生たちのおっぱいをさわってきたりですとか、特定の保育士に限らず、くっついて求めてくる子というのは、愛情が不足しているということなのでしょうか。それとも、ただの甘えん坊の性格なのでしょうか。

前川どう思いますか。

吉永難しいですけどね。そのことだけとり上げて話をしていいのかどうか。ほかの場面でどんな子なのかによって、全然違うと思います。ただ、いたずらでキャーキャー言うのが面白いのか、それとも、ママのおっぱいをさわりたいけど、さわらせてもらっていないのか、下の子に取られているので代替品を探しているのか。

これは多分当たらないと思いますが、児童相談所の子どもたちを見ていると、ある時、家に帰った時に自宅で、性的なやりとりをずっと見せられている子がいました。小学校高学年、中学校になると、外泊をしたその後、必ず性的に乱れるのです。多分このことは御質問のその子には当てはまらないだろうと思いますけれども、いろんな原因があることはまちがいない。だから、その行為だけを取って、甘えなのか、愛情不足なのか、遊びなのかどうなのかというのは、少々難しいと私は思います。

橋本そうですね。だから、もしそういうことで、ちょっとどうかしないといけないなということがあれば、家族、お母さんなり、じっくり話を聞いてみることも必要かもわかりません。「どんなでしたか」とか、どんなふうにされたかとか。お母さんから、「そうですね、あまり抱いてなかったですね」というのがあれば、今からでも遅くないので、そういうふうにしていきましょうと言って、園でも家庭でも一緒にやれると思います。

もうひとつ、今みたいなことで、園でその子どもが何か先生と合わないとか、いたずらするとか、反抗する子がいて園長から相談を受けたことがありますが、いろいろ話を探ると結局は園とちょっと問題があって、そのお母さんが園の先生を好きになれずに、うまくコミュニケーションできていないという究極の原因がそこに行き着いたのです。それでお母さんに、「子どもの状況を園で変えようと思ったら、まずお母さんが担任を好きにならんとだめよ」と。家で園の先生の悪口とか、そんなことばっかり言っていたら、子どもはそれを聞いて園に行っても同じようになる。逆に、「園の先生優しいねえ」とか繰り返していると、子どもはそれを聞いて、子どもも園の先生をだんだん好きになるよ…と。

1カ月過ぎて園長から電話があって、「先生、どんな魔法を使われたんですか」というぐらい、それだけで変わっていく。そんなこともありました。