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先天性免疫不全症について

富山大学大学院医学薬学研究部 小児科学教授 宮脇利男先生

からだの感染防御の仕組み

私たちヒトは毎日外界から無数のウイルス、細菌、真菌、原虫、寄生虫等の病原体に曝されていますが、普通であれば、それらを排除する感染防御の仕組みが備わっており、同じ病原体による感染症を繰り返したり、重症化したりしません。からだの感染防御の仕組みは、図1のように理解できます。

ヒトの感染防御の仕組み

基本的には、外界から、病原体がからだの中に侵入するのを阻止するための解剖・生理的バリアが大きな役割をしています。解剖・生理的バリアとして、先ずは皮膚、胃や腸等の消化官、呼吸器が外界とからだの中を隔てています。健常な皮膚であること、喀痰をしっかり排出すること、胃液が酸性になっていること、涙や唾液出すことで、病原体の侵入を食い止めていることは、容易に理解できるでしょう。

病原体が、解剖・生理的バリアをすり抜けてからだに侵入した場合に働くのが、所謂、免疫系と言われる仕組みです。免疫には、自然免疫と獲得免疫の2種類があります。自然免疫は、細菌やウイルス等の病原体を排除するためのいわば先兵です。自然免疫には、貪食細胞としての好中球や溶菌に関わる補体等が関与します。傷ついた皮膚から膿が出たり、風邪は引いたりしたとき喀痰がでたりするのが、自然免疫の反応と考えられます。その結果、細菌がからだの深部に入っていくのが止められます。

獲得免疫は、病原体それぞれに特異的に機能するもので、病原体に曝された経験を記憶して、病原体のさらなる攻撃に備えるものです。獲得免疫は、免疫記憶とも称され、加齢とともに蓄積されます。子どものころは、良く発熱を出したり、咳をしたりするが、大人になると比較的少ないのは、大人では免疫記憶が多くもっているからです。一回、麻疹や水ぼうそうにかかるともう一度かからないのが、免疫記憶ができたからです。獲得免疫に関わるのが免疫細胞のリンパ球で、T細胞とB細胞の2種類があります。B細胞は、骨髄由来のリンパ球で、病原体と特異的に反応して、中和や殺菌作用をもつ抗体を産生する働きをもっています。抗体には、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEのクラスがあります。免疫記憶で主役を果たすのがIgGで、IgAは腸管免疫に大切と考えられます。T細胞は胸腺由来のリンパ球で、ウイルス、真菌、がん等の腫瘍の排除に加えて、B細胞の抗体産生にヘルパーとして働きます。

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