では、まず最初に、前川先生へ「予防接種の種類によっては、微量の水銀が入っていて自閉症の誘因になると聞きました。現在、国内で使用されているワクチン内に混入されているのか、因果関係などを知りたいです。」
3歳児の女児で、「家庭の方針でBCGのみ接種していない園児がいます。必要性や集団生活をしている上での感染や、他児への影響についてもあることを説明したが…」、「今後、このような園児の保護者がいたときどのように介入していったらいいか、よきアドバイスを」ということです。
前川チメロサールという水銀がワクチンに入っているのです。いまから数年前に、アメリカで、それが自閉症の発症と関係があると問題になりましたが、関係がないということで、現在は否定されています。予防接種の中の微量の水銀で自閉症が起こるということはまずありません。
それから、現在発売されている予防接種の中には、水銀が入っているものと入っていないものがありますが どのワクチンに入っていないかはここでは言えませんので、ご自分でお調べになってください。優劣はそれほどない筈です。
次に健康被害を心配して、BCGしか接種していないということですが、こういう方は、予防接種で防げる病気が流行ったときは、登園を禁止することです。学校で麻疹が流行ったときにそれをやったら、わりと効果がありました。麻疹でも風疹でも、予防接種を打っていないのだったら、そういう子は来させないわけです。
予防接種は集団生活を行う場合の親がしなければいけない義務と考えて居ります。予防接種は決して害でなく、子どもを守るものであって、集団生活には必要だということを根気よく話し合っていく以外、方法がないのではないですか。強制的に接種できません。
看護師さんや保育士さんは「何で接種しないのですか」と、その理由を聞かれたらいいと思います。そうすると、副反応とかいろんなことを話しますから、「いまの副反応はほとんど偶発だ」とか、いろいろなことを話し合っているうちに、だんだんお母さんの不安が融けてくると思います。頭から、「集団生活には予防接種が必要だ」とか、「接種しなくちゃだめだ」というのは、いまの日本では言えません。予防接種というのは努力義務ですからね。だけど、集団生活では接種しなくてはいけないと。
アメリカでは、学校へ入学するのに、予防接種を条件としています。入学をさせないのです。日本では医療関係の学校、看護学校ではそれをやっておりますので、そのことも話されたらどうでしょうか。
佐藤私もこのことは日頃悩んでいるので、前川先生にお願いしたいのですけれども、「おたふくの疑い」ということで登園してきた園児がいて、「疑い」だったので保育園に来ていたわけですね。そして「2週間後に違う子がおたふくになってしまった。こういう場合はどうしたらいいのでしょうか」、ということです。どうでしょうか。
前川耳下腺が腫れればおたふくの疑いという臨床診断なのです。このような事例が起こらないようにするには疑いでも登園許可証を提出してもらうことです。おたふくということで疑いがあったら、やはり主治医に相談して登園許可証をもらってから登園さす。それから、逆に、おたふくの疑いで来て固有の反復性耳下腺炎でおたふくでないときもあるし、接触しても発病しないことがあるし、園の外からうつることもあります。保育の立場から「『疑い』は感染する可能性があるから、はっきりするまでは休んでください」と言ったほうがベターだと思います。
「疑い」は登園していいことではないのです。
おたふくと水疱瘡は、一度流行ってしまうと、次から次へと出てくるので、予防接種を受けることが大切です。それでいいですか、和田先生。。
和田そうですね。いま、前川先生がおっしゃったとおりだと思いますけれども、なかなか診断がつけられない。それから、おたふくかぜの場合は不顕性感染というのが非常に多いんです。血液を採って調べてみて初めて抗体が上がっている。既往歴がないというケースもあります。そうすると、臨床診断でつけなくてはいけない。やはり、疑わしきは登園許可証をもらってきてほしいと思います。
なぜならば、私が持ったケースで、保育園に通っているお子さんで、おたふくにかかってしまって脳症を起こしたケースがあります。そのとき、誰からうつったかわからないわけです。
皆が登園許可証を持ってきていれば問題ないですけれども、持ってきていないと、「誰からうつったか」ということで、いろいろ問題が大きくなるわけです。さらに、おたふくでも脳症を起こすという重症例になってしまったので、大きな問題になりました。そういうことのないように、登園許可証をもらってくることも一つなのではないかなと思います。
それと同時に、はっきりしなかった場合は予防接種を受けておいてほしいと思います。予防接種を受けていれば、一応、予防接種を受けたという事実がございます。それはかなり強くなりますので、予防接種を受けるように勧めたいと思います。
佐藤同じようなお話ですが、「おたふくに罹患したが、検査をしたケースが2件あって、免疫グロブリンの検査をしていると聞きましたが、どういうことなのか」という、専門用語のことですね。
和田抗体価を測るわけです。抗体価は、ELISAというもので測ったり、CF(補体結合反応)とか、いろいろな検査法があります。その検査法の感度によって、出る場合と出ない場合があります。一般にCF法とHI法が用いられますが、CF抗体の方がほんのわずかですが早期に陽性となることが多いです。NT法は日数もかかり、煩雑ですが、特異性が高く最も確実です。
ですから、我々は、抗体価を測りましたとおっしゃっていたとしても、何の検査でやったかというものを見せてもらうわけです。それによって、上がりがいいものと、上がりが悪いものがあります。あるいは、急性期に上がるけれども時間がたてばすぐ下がってしまうものとか、持続するものとか、いろいろとその特徴がありますので、その辺を確認して診断をつけることが重要になってくると思います。かかったら免疫グロブリンは上がるんです。免疫グロブリン(IgG)というのが上がってまいります。最初はIgMが上がって次にIgGが上がります。