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財団法人母子健康協会 第31回シンポジウム 「保育園・幼稚園における感染症と対応」
4.総合討論(6)

佐藤続いて、水いぼのことで随分質問が出ています。水いぼの園児に対して、「登園許可証が必要か」「プールに入るのはどうなのか」「水いぼをとってもらうか、とってもらわないか」という質問です。

私の看護師としての経験ですと、全然うつらないで、その子だけが3年ぐらいポツポツある場合と、皆さんもご経験があるかもしれないですが、着替えをしているところを見ると、脇の下とか背中に、不思議とそのクラスの子たちだけ、何だかいっぱいあるということでやはり悩んでいます。前川先生、和田先生にその点についてお答えいただければと思います。

和田水いぼというのはポックスウイルスというウイルスです。それほど感染力はないし、水いぼ自体、良性のいぼです。そんなに心配することはないんですけれども、アトピー性素因のあるお子さんとか、乳児湿疹のあるお子さんなどはなかなか治りにくいです。自分で掻爬、掻いてしまうことが多いと思います。掻いてつぶしてしまうと、そこからウイルスが出て広がっていくわけです。とびひと同じように広がっていくわけです。ですから、乾燥肌の子はなかなか治らない。

では、我々は水いぼを保存的治療をするにはどうしたらいいのか。掻かせないようにしましょうということで、場合によっては保湿剤をちゃんと塗りなさいとか、あるいは、飲み薬の抗アレルギー剤の中で掻痒感をとるものをあげるとか、そういったことで対処して、あとは爪をよく切るということです。

私自身は、プールは入れてはいけないということは考えていません。入れていいと思います。ただし、グジュグジュになってつぶれかかっているもの、要するに水いぼがクキみたいになって、下のところが狭くなっていて取れそうなものは、場合によっては取らなくてはいけないかもわかりません。それはピンセットでちょっとつまんでしまえばいいと思いますけれども、クキがしっかりしていて取れそうもないもの、あれを取れというのは残酷物語だと思いますし、後で、トラウマじゃないですけれども、残る可能性もあるのではないか。皮膚科の先生は往々にして取ります。あとは液体窒素で焼いてしまうとか、いろいろやっています。小児科医は一般的には、保存的に見ていきましょうという考え方が多いわけです。

あと、プールに入っていいかどうか。プールは塩素消毒しています。そこから感染するというと、ビート板につぶしたものがついてしまった場合は、ビート板でうつる可能性はあるかもわかりませんけれども、一般的にはうつる可能性は少ないと思います。どうしても嫌がる人は、「少し長めの水着を着てください」と、そこまで徹底する保育園もありますけれども、私自身はそこまでやらなくてもよろしいのではないかなと考えています。これは保護者の方が、取ってきてほしい、一緒に入りたくないということでしたら、私は逆に、その親御さんの子どもが入らなければいいのではないかと、そう思っているぐらいです。

我々は、さわってもうつりませんよね。それは免疫ができているわけです。ですから、その子どもたちも早く免疫ができてくれればいいなと思っています。ものすごくたくさん水いぼがあったお子さんも、きれいに治っています。大きな水いぼもいっぱい経験しています。それもきれいに治ります。ただ、それがちょっと長くなることはありますね。例えば1年、2年たつことはありますけれども、最終的にはきれいになります。良性な腫瘍ですから、心配することはないと思います。

佐藤このように、足立区の園医である和田先生の判断のもとに、園では入っているんですね。プールに入る工夫としては、直接水いぼがお友達と触れたりしないようにということで、皆さんの園でもしていると思いますが、長袖のTシャツを着たりしています。大きなプールは塩素消毒をしっかりしていますが、乳児のプールでは、個別に入って、塩素消毒を低めにしている園もあると思います。

ですから、先生方のご意見を踏まえて、各園でどのように工夫をして入れていくかということが大事なのではないかと思います。一律に入れない、入れるということではなく、どのようにしたら入れるか。それから、先ほどもお話ししましたが、保育園や幼稚園というのは子どもの成長・発達を育むところなので、楽しめる工夫をみんなで考えていけたらいいのではないかなと思います。「こう」という答えはないかもしれないのですが、それぞれの園医さんや嘱託医の先生と話し合いができるといいと思います。

続いて、りんご病は、全身状態がよいことが登園基準ですが、昨年、あまり症状がよくない子が、ゼロ歳、1歳3カ月で登園しました。このような場合は、登園許可証を持ってきているので保育園にいたのですが、「どうなのでしょうか」ということ。それから、溶連菌感染症の後、1日だけお休みして登園してきているのですが、「熱が下がっていれば保育は可能なのでしょうか」というご質問です。

和田りんご病に関しましては、原因は、病原体がヒトパルボウイルスB19というのが決まっております。先ほどお話ししたように、発疹が出たときは感染力がないというふうに考えられておりますので、登園しても構わないわけですが、大人がヒトパルボウイルスにかかりますと、多発性関節症症候群、妊娠前半だと子宮内胎児発育遅延、胎児水種・胎児死亡の原因になることもあります。ですから、どちらかというと、子どもより大人がかかった場合に重症になることがありますし、流産の原因になるということは知っていていただきたいと思います。

感染力があるのはいつかというと、発疹が出る前ですから、わからないわけです。ちょっと風邪ぎみかなというぐらい、だるさが残るぐらいで、幼児期の子どもたちに聞いてみるとそうなんですね。大人がかかると、かなり関節に痛みがきます。子どもたちはわからなくて登園しています。

やはり気になるのは妊婦さんです。保育士さんの中で妊娠されている方がいた場合には、気をつけてほしいわけです。ですから、伝染性紅斑はサーベイランスでチェックしてほしいです。サーベイランスによって、近くで伝染性紅斑が流行っているのであれば、妊婦さんは特に気をつけて、うがい、手洗いはもちろん徹底していただきたいと思います。

それから、溶連菌というのはたくさんの種類がございます。溶連菌感染症にはA群、B群、C群、D群、いっぱいあるわけです。一般的に悪さをするのはA群です。B群連鎖球菌は、周産期細菌感染症の主要な起炎菌で、分娩女性に菌血症、子宮内膜炎、尿路感染症を引き起こし、出生後から生後3カ月、稀にそれ以上の月齢の乳児に全身感染症を引き起こします。赤ちゃんが重症になるのはB群です。B群も髄膜炎を起こします。溶連菌のA群に関しましては、2歳以降から感染していきますけれども、重症化するのは4歳以降です。例えばリウマチ熱とか、腎炎を起こすのは4歳以降が多くなります。

溶連菌感染症というのは何回も繰り返します。タイプが違えば何回も感染します。麻疹は、一回やれば終生免疫、もうかかりません。昔はペニシリン系統の薬を長く飲んだりしたことがありますけれども、最近は、溶連菌に関しては、ペニシリンを10日間、あるいはセフェム系の抗生物質を5日間飲むというようなことが言われています。

溶連菌感染症は、熱が下がってしまって全身状態がよければ、もう感染力はないと解釈してよろしいと思います。ただし、ここで一つ、全身状態が悪いことがありますよね。そのときに、1日たったから来てもいいというのではなく、全身状態がよければ翌日来てもいいという登園基準になっていますので、それを守っていただければいい。

何の登園基準もそうですけれども、その子によって違うわけです。普通の場合には、熱が下がって元気になったら来てもいいですけれども、まだ元気がない、グタッとしてゴロゴロしているのに、来なさいと言うわけにはいきません。その辺は十分よく考えて登園基準を理解していただきたいと思います。

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