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財団法人母子健康協会 第31回シンポジウム 「保育園・幼稚園における感染症と対応」
4.総合討論(10)

前川あと10分ぐらい時間を余しました。すべての皆様のご質問に答えられたわけではありませんので、何か質問される方がいらしたら、手を挙げてください。

はい、どうぞ。

○早乙女 葛飾区の小合保育園というから来ました、早乙女と申します。よろしくお願いします。

今日はお話をありがとうございました。一つ質問なのですが、予防接種を打つ時間帯というのが、最近、午前中に打ってそのまま保育園にいらして元気に遊ぶというお子さんがいらっしゃる。どうも医者のほうで、「打って30分ぐらいたったら問題ないから、行っていいよ」というお話だったみたいなんですけれども、その辺の打つ時間帯というのは、いま、どういう流れになっているのかを教えていただきたいと思います。

和田私のところでは予防接種の時間帯は決めています。なぜならば、診療所で感染をもらわないということも含めて、3時〜4時とか、時間を決めてやっております。しかし、お仕事の関係とか、保育所に預けているお子さんに関しては、午前中に打ってくるのは事実だと思います。それに関しては決まりがありません。例えば午前中に打って、その後、保育所に行ってはいけないということはないのです。足立区でも一度調べたことがありますけれども、特にそれはないようです。

ですから、打って調子よければいいのですけれども、我々が一番心配することは、その後に反応が出るということですけれども、一番怖いのは即時型反応です。呼吸器に来る即時型反応、これは15分以内に起こすことが多いです。病院・診療所にいてもらって経過を見ているわけですけれども、30分ぐらいいた後に特に問題がなければ、普通の生活はできると思います。

○早乙女 ありがとうございます。

前川あと、お一人だけ、最後にどうぞ。

○井上 西東京にあります武蔵野大学附属幼稚園というところから来ました、井上と申します。

私どもは幼稚園ですので、看護師や保健師がいないんですね。いま、感染性の胃腸炎というのが流行っていまして、感染マニュアルなども作って対応していますが、保育室の中にたくさんの園児がいる前で嘔吐した場合、嘔吐物の処理はきちんとしていますが、周りに子どもたちがたくさんいる状態です。親御さんにお渡しするまでの間に、幼稚園の中で感染を防ぐという意味で、一番やらなければいけないことはどういうことがあるでしょうか。

前川どうですか。佐藤さんのほうがいいかな。

佐藤各園の施設の状況によると思いますが、私がいま、そうだとしましたら、吐いたお子さん以外のお子さんをまず別室に移動します。それについては、吐いたお子さんとお友達に十分配慮しながらです。
そして正しい方法で嘔吐物を処理して、吐いたお子さんの体調もよく見て、部屋の中を消毒します。室内の換気が終り乾燥してから、お部屋に戻ってくるのがよろしいのではないかと思います。

この間、保育園で、夕方3歳の男の子が大量に吐きました。そのときちょうど私が通りかかったので、「皆さ〜ん、集合」といって、防犯用につけている笛で「ピッピッ、ピッピッ、イッチ、ニッ、イッチ、ニッ」といって吐いたお子さん以外の子ども達を隣のお部屋に移動して、「遊びましょう」といった対応をとりました。そうして、吐物からほかのお子さんをまず遠ざけることが集団保育の中では大事だと思います。

前川もどした子どもを別室に入れる必要はありますか、親が迎えに来るまで。

佐藤その子の状態にもよると思いますが、もし感染性胃腸炎にかかっているとすると、繰り返し吐く場合がありますので、そのお子さんについては、なるべく別室で、体調をよく見ることが大事だと思います。

前川そうですね。

○井上 ありがとうございます。

もう1点聞いていいですか。別室に子どもたちを誘導して、元気な子どもたちに対してどういうことができるか。例えば手洗い、うがいを確実にしてから家に帰すとか、そういう細かい配慮の点で何かありますか。

和田まず、吐いた吐物とか、そういったものの処置を十分やることと、子どもたちは、当然、そこですぐにうがい、手洗いをやるということ。それで、帰すときにもう一度やる。

もう一つ大事なことは、こういうことがあったということはなかなか言いにくいのですけれども、お母様方が迎えに来たときにお話をしておくことだと思います。

○井上 ありがとうございました。

前川ちょうど時間がまいりましたので、まとめに入りたいと思います。

ご参加の皆様、本日のシンポジウムはいかがでしたか。参考になることがたくさんありましたか。

今日のお話を聞いて、免疫学的に感染症にかかりやすい乳幼児に対しては、最大公約数で対応する以外に方法はないのではないかと思います。最大公約数って何ですかというと、手洗い、うがい、消毒などで防止できるものは、正しい方法でこれを行う。それから、予防接種で防止できる感染症は予防接種を行う。接種を受けない乳幼児は、感染症が起こったときは休ませるか、予防接種を受けさせる。もう一つ欲を言えば、病気のときは体力が回復するまで1日余分に休ませる等が、いわゆる最大公約数だと思います。

子どもを預かる保育士さんも、保護者も、乳幼児の感染症の特徴をよく理解して対応することが大切だと考えます。今日のシンポジウムが、保育園や幼稚園における感染症の対応に役立つことを願ってやみません。

最後に、本日のシンポジウムにご多忙のところをご参加いただきました、和田先生、佐藤先生に、皆様から盛大な拍手をよろしくお願いします。(拍手)

これを持ちまして、本日のシンポジウムを終わりたいと思います。長時間、ありがとうございました。

講師紹介

前川 喜平(まえかわ きへい)
東京慈恵会医科大学名誉教授
東京慈恵会医科大学卒業後、同大小児科教授を経て現職。
1996年より(財)母子健康協会主催 シンポジウム 統括を務める、同協会理事。
第百回日本小児科学会会長、元日本小児保健学会会長、神奈川県立保健福祉大学名誉教授。
主な著書に 「小児神経と発達の診かた」(新興医学出版社)、「乳児検診の神経学的チェック法」(南山堂)、「小児の神経と発達の診かた」(新興医学出版社)など。
和田 紀之(わだ のりゆき)
1972年 東京慈恵会医科大学卒業
1974年 東京慈恵会医科大学小児科学教室 助手
1977年 パリ大学小児病院免疫学教室留学(仏国給費留学生として)
1979年 学位授与(研究論文:溶連菌感染症における遅延型過敏反応に関する研究)
1987年 東京慈恵会医科大学小児科学教室 講師
1992年 和田小児科医院 開業
1998年 日本小児リウマチ学会 会長
2000年 日本小児科学会代議員、東京小児科医会理事
現在に至る
《 学会関係 ・ その他 》
日本小児科学会 専門医・代議員
日本感染症学会 認定医・評議員・指導医・インフェクションコントロールドクター
日本リウマチ学会 認定医・評議員・指導医
日本小児リウマチ学会 運営委員
日本小児皮膚科学会 運営委員
日本保育園保健協議会 理事
厚生省予防接種研究班 班員
中央感染症発生動向調査委員
佐藤 直子(さとう なおこ)
東京都立府中看護専門学校卒業後、都立駒込病院に勤務
平成4年より足立区に入区、区立保育園看護師として足立区立沼田保育園に勤務
財団法人母子衛生研究会 月刊母子保健 平成18年7月
保育・福祉部門 「どうしていますか?」感染症予防の保護者への呼びかけ 執筆
日本保育園保健協議会
平成19年7月 平成20年1月
保育と保健 特集レポート 座談会 「保育園における感染症対策」参加
平成20年度・こども未来財団調査委託事業
「保育所における保健予防対策についての調査研究」他に現在まで研究協力員として参加
足立区子育てサポーター養成 看護部門 講師
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