次に移ります。「場合によっては医師の診断や治療が必要な感染症」、「登園届は必要としない」ということになっていますけれども、よく質問を受けるところは、とびひと伝染性軟属腫の問題です。
特に水いぼの場合ですけれども、掻きこわし傷から浸出液が出ているときは、被覆する(カバーする)ということになりますけれども、原則としては、伝染性軟属腫で休むことはないと思っております。
次に、「予防接種の向上について」です。ウイルスに有効な薬はわずかです。ワクチン接種による予防も最も重要な感染症対策であります。健康診断を活用して、必要とされているワクチンの予防接種の確認を行い、保護者に対して予防接種の必要性を説明し、理解を求め、未接種者には特別な理由がない限りワクチン接種を勧める必要があると思います。
特に保育園においては、チェックリスト(表)を作成し、予防接種歴や感染歴の管理をすることが望ましいと思います。
職員の採用時には、健康状態の確認とともに各種予防接種歴、感染症の罹患歴も必ず確認する必要があります。麻疹、風疹、水疱瘡、流行性耳下腺炎などにかかったことがない職員には予防接種を受けることを勧め、インフルエンザの予防接種も毎年積極的に接種するように指導します。
短期間の教育実習生も、各種予防接種歴と感染症の罹患歴を必ず確認することです。
各園で、予防接種のチェックシートを園児用と職員用と2つつくって常備していただきたい。そして、3カ月ごとぐらいに勧めて、ちゃんと接種が行われているかどうか、これを確認していただきたいと思います。
それから、いま、大人の百日咳あるいは中学生の百日咳がかなり多く出ております。そうしますと、保育士さん、看護師さんが百日咳にかかっているという現状がございます。いま、予防接種部会と予防接種推進協議会では、小学校6年生相当の時に、DT(2種混合ワクチン)の代わりにDPT(3種混合ワクチン)にして追加接種した方が良いのではないかと検討中です。
現行の三種混合のワクチン、普通は0・5cc打つわけですけれども、学童期あるいは大人の方には0・2ccで打とうという話が、かなり具体的に進んできております。それを打つことによって百日咳は防げるわけです。そういう検討もされております。
次のページに移ります。我が国の制度では、予防接種は定期予防接種と任意予防接種に分けられています。任意接種の予防接種はそこに書いてあります。任意接種というシステムは日本だけです。
任意予防接種は、国が勧めている予防接種に比べて病気としての程度はやや軽く、社会的な重要性もやや低く、国として広く接種を勧めていないものを指します。そのため認知度も低く、ともすれば「接種しなくてもよい予防接種」と間違った認識をされがちであります。
WHOでは、B型肝炎、Hib(インフルエンザ桿菌b型)、小児用肺炎球菌ワクチンについては、病気の重さなどから、どんなに貧しい国でも、国の定期接種に入れて国民を守るべきと勧告しております。先進国においては、おたふくかぜと水疱瘡もこれに準ずるとされております。
日本は欧米に比べてワクチンの恩恵を受けておらず、先進国の中にあって「ワクチン後進国」と言われています。下の図は、米国での12ヵ月以下のお子さんの接種です。これらを同時接種するわけです。同時接種についても後で時間があればお話ししたいと思います。
このお子さんは、2カ月から、肺炎球菌、ロタウイルス(これは飲むわけですが)、B型肝炎、ヒブワクチン、三種混合、不活化ポリオワクチン等、6つぐらいを同時に打つわけであります。
2010年8月に足立区の保育園・幼稚園91施設に行ったアンケート調査においても、予防接種をしていない園児の保護者への接種の推奨について、定期予防接種では95%以上の施設で勧めております。水疱瘡、おたふくかぜの任意接種のワクチンを推奨するとしたのは67%にすぎないわけです。これは、どうしてもお金がかかるという問題とか、いろいろな問題があると思いますけれども、勧めているのは67%であったという結果です。
園児へのワクチン接種の推奨ですけれども、予防接種をしていない園児の保護者への接種の推奨について、定期予防接種は95%以上、水疱瘡、おたふくは67%程度でありました。同じようなアンケートを2003年度にもとってみたのですけれども、若干増えている印象がございます。