先天性免疫不全症について
富山大学大学院医学薬学研究部 小児科学教授 宮脇利男先生
先天性免疫不全症をもつ患者の行く末は、いかに早くみつけるかにかかっています。先天性免疫不全症は比較的まれな病気ですので、一般の先生方は念頭にないことが多いと思われます。しかし、一般的な検査で、意外に簡単に先天性免疫不全症である可能性を疑うことができます。白血球数、とりわけリンパ球数が少ないときには、T細胞機能不良を来す病気が見つかります。血清のガンマグロブリン値が低い時には、B細胞機能の欠陥に属する病気であることに気付きます。白血球数が少ないとき、逆に通常より多めの時には、好中球の機能や数の異常を来す病気であるかもしれません。補体価全体をみることができるCH50という検査を提出すれば、その低下で補体欠損がみつかります。
普通ではない臨床経過で気になれば、普通の風邪、肺炎や中耳炎と考え一般的な対処で済まさないで、何よりも先天性免疫不全症の可能性がないか、専門の先生に相談して欲しいものです。先天性免疫不全症の専門医は、インターネット(http://pidj.rcai.riken.jp/public.html)で紹介されています。アメリカの原発性免疫不全症の団体であるジェフェリー・モデル基金では、「原発性免疫不全症を疑う10の徴候」を患者・プライマリー医師に向けてキャンペーンしています。厚生労働省原発性免疫不全症候群調査研究班が中心となり、日本版の「原発性免疫不全症を疑う10の徴候」を作成し(図2)、全国の医師や患者・家族に配布しています。