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財団法人母子健康協会 第31回シンポジウム 「保育園・幼稚園における感染症と対応」
3.「保育園での対応の実際…看護師の立場から」

足立区立沼田保育園 看護士 佐藤直子先生

佐藤沼田保育園の看護師の佐藤です。どうぞよろしくお願いします。

私は、資料の順に話をしますので、資料に目を通していただきながら聞いていただければと思います。

それから、話の中で「発症」という言葉を使わせていただきます。園においては、先生方のようなお医者様が診断を下した発病という前の、熱や発疹の症状が見られたときからの対応・対策が大切だということの思いを込めて、「発症」という言葉を使わせていただきますので、ご理解ください。

今日、私は、前川先生、和田先生より、保育園や幼稚園をご理解いただいている小児医療の専門のお立場からの、感染症とその対応について最新の知識に触れるシンポジウムに参加させていただいております。そして、貴重な知識を得て、皆様と同じように、園に戻り、子どもたちの健やかな成長のために生かしていくことが日々の務めになります。

感染症に対する対応は各園で工夫していることがたくさんあると思います。両先生からもお話がありました感染症ガイドラインを一定の基準とし、活用しやすいようにマニュアルが作成されている園も多くなっていると思います。

足立区では平成21年8月のガイドラインを受けて、公立看護師会で既存の衛生管理マニュアルをガイドラインを踏まえて話し合って改訂し、平成22年の4月より公・私立で活用しているところです。今回は、ガイドラインやマニュアルで実施している対応を系統的にまとめ、確認できたらと思います。そして、少しですが、私が日頃行っていることから、伝わりやすいことや、昨シーズンより流行している新型インフルエンザの対応で効果的だったことなどをお話しできればと思います。

まず、園での感染症対応ですが、「感染予防対応」と「感染症発症及び流行時の対応」に分けて実施されていると思います。

1つ目として、園での感染予防対応は、園児、保護者、職員への働きかけをしっかり行っていくことと、園医や主管、行政などとの連携が大切だと思います。

園児への感染予防対応については、年齢別に計画した内容を各クラスの保育士と確認しながら話し合い、進めています。具体的には、手洗い、うがいの実施、歯磨き指導、おむつ交換やトイレでの排泄介助時の感染予防などです。

表1 年齢別手あらいの実施表

今回は手洗いについての年齢別計画をご紹介いたします。「表1」をごらんください。これは、固形石けんを使用して手を洗い、携帯しているハンカチで手を拭くことができることを最終目的にした年齢別の計画の一覧です。詳細な計画は各クラスの保育士と話し合い、成長発達に応じて柔軟に対応し、1年間で段階を追いながら実施しています。手洗いを計画的に実施すると、ゼロ歳から就学前まで継続して、無理なく、確実な手洗いを身につけることができます。

具体的にいいますと、ポケットに当たり前にハンカチを携帯し、手を洗ったらポケットから出して、それを落とさないでちゃんとポケットにしまうことができるようになります。小学校へ行くと、それはとても大事なことです。このことを、年長さんからするというのではなく、0歳から行うことにとても効果的な様子が見られます。

続いて、保護者への対応としては、資料にありますような内容について、正しい知識や情報をもとにわかりやすく伝えることが重要だととらえています。正しい情報を的確に伝え合える関係は、昨年度の新型インフルエンザ流行時に生かされたと思います。
後ほど補足いたしますが、このときの正しい情報を的確に伝えていくことは、さらなる信頼関係の構築へとつながりました。

保護者や職員の働きかけでは、本日の前川先生や和田先生のお話の内容を、私も早速、園で生かしていきたいと思います。

保護者への感染予防の啓蒙活動と協力依頼

  • 感染予防などについて情報を提供
    → 園だより・保健だより・園内掲示 など
  • 園内掲示 など各種予防接種の実施依頼
    → 保健カードなどを活用し予防接種状況を把握シーズンや年齢別に定期接種・任意接種の予防接種の情報を提供し、実施を呼びかける
  • 衛生活動の協力依頼
    → 手あらい・うがいなどの家庭での継続実施感染源となる恐れがある汚れた衣類やシーツの洗濯方法の説明と依頼感染症発症時の園への報告や早期治療の依頼 など

次に、職員への感染予防対応です。こちらは、初めにお話ししましたが、ガイドラインやマニュアルを活用し、全職員が共通認識の上、感染を拡大させない対応や手順、手技を身につけて実施していることが大変重要となります。

職員間での感染予防対策の共通認識と手順や手技の確認

正しい情報の共有やガイドライン・マニュアルに沿っての共通認識

  • 感染を拡大させない対応や手順・手技の確認
    → 感染源について目に見えるもの・見えないものへの正しい対応を全職員が理解して、衛生活動・感染防止・保育を進めることの重要性

ここで、私が悩んでいたことについて発表いたします。感染予防対策について全職員の共通認識は大変重要です。そのため、私は、園での会議や打ち合わせで、毎年それぞれの機会を通じて何度も説明しています。しかし、いままでの説明で完全に徹底していないことがありました。

その中の一つとして、おむつ交換時の使い捨ての手袋の使い方がありました。これは、嘔吐物などの処理をするときも共通することですが、「いつ手袋をはずすか」です。

使い捨ての手袋は、感染を予防し拡大させないために使うわけです。感染源となり得る便や嘔吐物などの処理をした場合は、直ちにはずさなければなりません。おむつ交換時にいつまでも手袋をして新しいおむつや服を着せていると、感染源となり得るウイルスなどをまき散らしてしまいます。皆さん、どうしていますか?

例えば手袋についていれば、「くさい」とか、「あ、色がついている」と気がつきますが、見えない、においがないものに対しては意識が薄くなりがちです。見えない、においがないものに対しての意識の差が、予防か、拡大かの分かれ道になります。見えないものへの意識をどのように説明すればよいかということが伝わらないので、ずっと悩んでいました。

ところが、今年度の初めに、ふっと、園にあるもので実演したんですね。そうしましたら、良い反応があったので、ご紹介します。大したものではないので、エーッと思われちゃったらどうしようかと思うんですけれども、(使い捨て手袋を出して)使い捨て手袋、皆さん、使っていらっしゃいますよね。保育士さんだけでなく、補助員さんなどいろいろな方がおむつを交換するときがあります。

朱肉を出して)ハンコを押す朱肉です。(手袋に朱肉をつけて)、後ろの方、見えますか?
「におわなくても、ついていなくても、こういうことを意識しておむつ交換をしてください」というふうにお願いしてみたのです。今日はちょっとできないんですけれども、手にペタッとつけたのです。
「見えなくても、におわなくても、赤い朱肉がベタッとつくことと同じなので、うんちを拭いた手袋は、拭きおえたら直ちにはずしてください」、と説明してみたのです。

使い捨て手袋は、手首の所から汚れた面を引っ繰り返してはずします。炊事場でつけるゴム手袋のように、指先をもってはずそうとする方がいて、エッというときがありませんでしょうか。手袋のはずし方についても伝える事が大切ですね。

いまお話した事をどのように説明したかといいますと、「この赤い色が、新しいおむつ、赤ちゃんの体、服につく前に手袋をはずしてください」ということ。それから、引っ繰り返した手袋もそばに置かずに、必ずおむつと一緒に処分できるようにしましょうと伝えました。

このことは、共通認識を得るためには、相手が本当に理解できる方法を考え、伝える工夫をしなければならないということを改めて実感しました。共通認識と信頼関係の力が、感染症流行時には特に重要となることは皆様もご経験があると思います。

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