母子健康協会 > ふたば > No.75/2011 > 保育園・幼稚園における感染症と対応 > 総合討論(5)

財団法人母子健康協会 第31回シンポジウム 「保育園・幼稚園における感染症と対応」
4.総合討論(5)

佐藤保育園の現場からお話をすると、口唇ヘルペスの場合ですけれども、大概皆さん、口内炎だという事で登園してきていませんか? でも、看護師を含め園に勤めている職員は、数多くのお子さんの口の中を見ているので、「あれ?」と思う症状がありますよね。

そのときにどのように対応していくかということでは、一概には言えないですが、大体、治りが悪いです。ですから、別の病院に行ってもらいたいというお願いをしてみると、「ヘルペスでした」という事があります。

ですから、お医者さんの診断が違っている場合がありますので、長引くようであれば、別の病院での診察をお願いしたり、違う科の診察を受けてもらったりすることの工夫も必要です。

それから、登園許可証のことですが、実際に登園許可証の項目にないものがありお悩みのご質問もありました。私がいつもお願いしていることは、かかりつけの先生に、「保育園で普通に過ごしていいですか」ということをぜひ聞いてきてくださいという事です。

子どもたちの体の症状を、皆さんが日頃の経験から判断しながらお医者さんに見極めてもらいたいときは、保護者の方にしっかり声をかけていく。登園許可証が使えないものについても何とか努力していくということが、感染が拡大しない方法の一つではないかと思います

続いて、和田先生にです。「ヒブワクチン、肺炎球菌、その他、無料化になる方向ということですが、市民にはどのような形でお知らせが行くのでしょうか」ということです。似たような質問が何点かありました。

和田ヒブワクチンと小児肺炎球菌について、少し詳しくお話をしたいと思います。

子どもの細菌性髄膜炎をはじめとする全身感染症を起こす2つの大きなバイ菌が、ヒブ(インフルエンザ桿菌B)と肺炎球菌の2つなのです。その菌は耐性菌を起こしやすいということで、保育園のお子さんたちの鼻咽頭を調べてみますと、入って1年すれば、8〜9割はみんな耐性菌を持っているのが現実です。

そのことに関しまして、その2つのワクチンを打つこと以外に抑える方法がないわけです。あるいは、抗生物質を使わないでほしいという方法になってくるわけですけれども、そのワクチンが、今年の4月ぐらいから公費助成化されることが決まりました。しかし自治体によってその対応はまちまちです。全額出すところもあります。半分しか出さないところもあります。大切なワクチンです。

この2つのワクチンは生後2カ月から打てるんですね。生後2か月のときに、ヒブワクチンと、肺炎球菌ワクチン(7価の肺炎球菌)を接種します。その2つを同時に打つことがこれからは一般的になるわけです。

そして、3カ月になりましたら三種混合という予防接種を始めて欲しいわけです。先ほどお話ししたように、大人も含めて周囲に百日咳の方がいます。結構出ているわけです。そうすると、小さいお子様が百日咳にかかりますと、百日咳脳症とか、肺炎を起こしやすくなります。ですから、予防接種をしっかり受けてほしい。

生後3カ月には、場合によっては3つの予防接種を同時にやるという可能性が出てまいります。そして6カ月までにBCGをやらなくてはいけないということがあります。その間に入ってくるわけです。そうすると、1週間、三種混合を受けて、1週間たてばBCGを受けられる。BCGを受けて4週間たてば、その次の三種混合なり、ヒブと肺炎球菌ができるということです。

そうすると、スケジュールがすごく大変です。ばらばらに打ったらば、しょっちゅう予防接種で病院に行かなくてはいけなくなってまいります。それは大変ですから、同時接種をしましょうと。同時接種したことによって、熱が出やすいかどうか、免疫がちゃんとつくかどうかという問題点があります。しかし、「諸外国では一般的に行われている」、「複数のワクチンを同時に接種してそれぞれのワクチンに対する有効性について、お互いのワクチンによる干渉はない」ことが分かっています。
小児科学会を含めて「同時接種を進めましょう」という形になってきています。先ほど少しお話ししましたけれども、外国ではもう当たり前に同時接種が10年も20年も前からやっております。ですが、日本では始まったばかりであります。でも、予防接種を2カ月、3カ月から始めるためには、同時接種を勧めていこうという方向になっています。

そして、いま言ったように、同時接種することによるデメリットは非常に少ないです。メリットのほうが多いと思います。

前川同時接種は外国でもやられているし、これから大いに進めるべきものだと思います。一番反対しているのは誰ですかというと、厚労省と、市町村の予防接種担当者です。あれは予防接種法を変えないとダメなのです。いまの担当者は事なかれ主義で、次に送りたいわけです。同時接種については日本小児科学会の答申がありますので、これを参考にしてください。予防接種を熟知している医師の判断で行えば問題はありません。

和田この知らせは、受身では来ないと思います。行政のほうからは決まった時点で「広報」で流れてくると思いますけれども、各自治体はもう、どういう配分でやるかというのは決まっていますので、恐らく2月か3月頃に広報で流れると思います。

佐藤先に進みます。RSウイルス感染症のことで何点か出ています。これは事前の質問票にもありましたので、和田先生にお願いしたいと思います。「現在、私の園では、RSウイルス感染症の場合、登園許可証を必要としていません。ただ、系列園では許可証をいただいています。登園許可証は必要でしょうか」ということです。

和田RSウイルスというのは、呼吸系ウイルスの代表的なものの一つですけれども、小さいお子さんがかかりますと、重症になります。好発の季節というのがございまして、一年じゅう見られますけれども、多いときは10月から4月と言われています。

RSウイルスにかかりますと、呼吸器疾患ですから、呼吸がすごく苦しくなってくる。毛細気管支という一番細いところ、酸素と炭酸ガスを交換するところが炎症を起こしまして、呼吸困難を起こします。我々がかかって鼻づまりぐらいで済むわけですが、子どもたちがかかると非常に重症になることがあります。一般的には、お母さんの免疫がなくなる生後6カ月ぐらいから1歳半ぐらいまでが多いのですが、最近は3歳、4歳のお子さんも結構熱が続いて、調べてみるとRSウイルスだということをよく経験します。

もちろん、抗生物質が効くわけではございません。対症療法しかないのですけれども、小さいお子さんは、場合によっては点滴の処置が必要になってくる、酸素テントが必要になってくるということで、できれば診断を早くつけたいということです。診断をつけるときにキットというのがあります。そのキットが我々開業医のところでは使えない。使えるんですけれども、保険がきかないということがあります。大きな病院に入院するお子さんは、RS検査をして保険適用が通るわけです。

特に先天性心疾患のあるお子さんとか、弱いお子さんがかかりますと重症になってしまうわけです。そんなことを考えますと、これもキットが我々の手元にあって、診断をつけて、場合によっては休ませるということも必要かと考えます。現在はRSウイルスの感染症も、登園許可証の登園基準の、親が書けばいい疾患の中に入っています。ただし、もっとランクを上に上げてもいいのではないかなと思っております。

母子健康協会 > ふたば > No.75/2011 > 保育園・幼稚園における感染症と対応 > 総合討論(5)
事業内容のご紹介 協会の概要活動の概要設立の経緯協会のあゆみ健康優良幼児表彰の歴史
最近の活動のご紹介
小児医学研究への助成 機関誌「ふたば」の発行シンポジウムの開催 Link:Glico