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財団法人母子健康協会 第31回シンポジウム 「保育園・幼稚園における感染症と対応」
2.「保育園における感染症対策…園医の立場から」

和田小児科医院院長 和田紀之先生


園児へのワクチン接種の推奨

また、任意予防接種の接種費用が自己負担であることも接種率の低下につながっていると思われます。予防接種率を向上させるため、任意予防接種の定期接種化あるいは保険適応など、行政を巻き込んだ制度改革も必要と思われます。2010年9月12日〜10月の末、日本医師会と関連団体及び学会が加盟する「予防接種推進専門協議会」というのがあります。予防接種推進専門協議会は私もメンバーに入っておりますけれども、そこで、「希望するすべての子どもに予防接種を!」というキャンペーンをして、公式サイト上で署名を募集いたしました。

また、海外では、ルーティンに行われている同時接種も、日本においては消極的であるが、接種率を向上させるためには同時接種を勧めていく必要があると思われます。

その一方、同時接種を勧めるに当たっては、その効果と安全性を検証しなければならないと思います。アメリカでは、当然、ルーティンに行われていると言われておりましても、それが本当に日本では大丈夫かということも、同時にしていかなければいけないのではないかと考えまして、東京小児科医会ではそれに対する調査研究を行う予定であります。乳幼児に接種する三種混合、BCG、ポリオ、ヒブ、肺炎球菌、6カ月の間にその辺が集中してまいります。その辺のことも検証していこうと考えております。

次に、最後の大きなテーマですけれども、「サーベイランスの重要性について」であります。小さいお子さんが集団で生活する保育所では、インフルエンザ、麻疹、水疱瘡などの小児感染症が起きやすいわけです。保育所は感染症の感染増幅機関となり得るため、そこから社会へと拡大する可能性もあるわけです。

保育園サーベイランス(保育園欠席者・発症者情報収集システム

感染症が広がれば、多数の園児が感染症に罹患し、本人の健康に影響が及ぶばかりではなく、欠席者が増える事態を招く。そうなれば、子どもたちの最善の利益を守り、子どもたちを心身ともに健やかに育てるという保育所の責任を果たすことが困難になるわけです。

さらに、園内のスタッフや園児家族に感染がうつり、社会活動にも影響が及ぶことが考えられます。これらの施設における感染症の流行状況を把握し、対策を立てることが極めて重要だと思います。

感染症の発症動向を迅速かつ正確に情報を把握することが重要であり、特に大規模な流行が危惧される感染症については、集団的な発生を迅速に把握する必要があります。情報の多くは、保健所や公的機関、地区医師会等のホームページ上で公開されているので、活用してほしいと思います。

また、2010年に国立感染症研究所感染情報センターにおいて保育園サーベイランスシステムが立ち上がりました。保育園欠席者や発熱・頭痛等、症状別に発症者の情報を収集するシステムであり、記録・連携・早期探知を一元化した新しいリアルタイムサーベイランスとして注目されております。今後も、さらに活用しやすく、参加しやすいサーベイランスシステムを構築し、情報の共有化を推進していく必要があると思います。

そのシステムは左に図で示しております。

最後のページになります。「まとめ」であります。

1番として、保育所において感染症ガイドラインはほぼ整備されていると思います。ただし、その実効性、活動性を上げる工夫が必要だと思います。

(1)として、保育施設に看護師を導入するなど、環境を整備すること。(2)として、登園基準の明確化と徹底の仕組みをつくること。

2番目として、予防接種の強化であります。保護者・職員の意識の向上は必要だと思いますし、任意接種の定期接種化など、行政を巻き込んだ対応であります。

これに関しましては、昨年、細川労働大臣のところに、保育園協議会の代表として、医師会の先生、予防接種推進専門協議会の先生等と一緒に参りまして、280万人以上の署名を提出しております。

そして、恐らく4月から、ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、そしてHPVワクチンが公費助成化されてくると思います。各自治体によって、早いところは2月から始まってくるところもありますし、4月からスタートするところもあります。皆さんの声、署名活動の結果だと思います。

3番目に、活用しやすく、参加しやすいサーベイランスシステムの構築であります。新たに始めるというのはなかなか難しいと思いますけれども、国立感染症研究所の保育園サーベイランスというのは簡単に参加するのはできると思います。そういったものも検討していただきたいと思います。

4番目は、保育園と直接的な関係はありませんけれども、抗菌薬の適正使用を考えるということ。保育園の中におりますと、いろいろな感染症が起きやすい。今日はお話しておりませんけれども、耐性菌の問題が出てきています。いろいろなお薬を使われていくことによって、お薬を飲んでいないお子さんにも交差感染を起こしてしまって、耐性菌を持ってしまうという現状があります。それから、中耳炎、気管支炎を起こしやすいお子さんから感染を受けることもあるわけです。

保育園の中はリスク因子が多いわけです。そういったものを考えますと、予防接種をちゃんとやっておくということ。ヒブワクチンとか肺炎球菌ワクチンをしっかり打っておくことにもつながるわけであります。

その中で、抗菌薬の適正使用も考えなければいけないと思います。これは、先生方も含めてそうですし、親御さんもそうですけれども、不必要な抗菌薬の排除と有効な抗菌薬の使用が重要になってくるわけです。ですから、抗菌薬の必要のないときは使わないことが大前提ですし、ガイドラインに基づいた使用の仕方、必要最小限度、使う必要があった場合にはきちっと使うということが重要になってくると思います。

以上であります。ありがとうございました。(拍手)

前川園医の立場から、保育園における感染症対策を非常にわかりやすくまとめていただきました。ありがとうございます。

特に、何かでわからなかったことはございますか。よろしいですか。

それでは、時間の関係で、次の「保育園での対応の実際・看護師の立場から」ということで、佐藤先生のお話を伺います。

佐藤先生は『ふたば』の大ファンです。この雑誌のいいところは、理論ではなく、現場で役に立つことがよく討論されているということで、今日は恐らく、現場の保育園の立場で感染症にどう対応したらいいかという本音のお話が聞けるのではないかと思います。

では、先生、よろしくお願いします。

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