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《子どもとのふれあいを大切に》—スマホに子守をさせないで—

日本大学医学部小児科客員教授 岡田 知雄先生

わが国のメディアと子育ての問題

2004年日本小児科学会は、「乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です」と題する緊急提言を行った(2)。同学会こどもの生活環境改善委員会は、2003年に、乳幼児のテレビ視聴の発達への影響を検討するため、3地域(首都、中核市、農村地区)の1歳6カ月健診対象児について調査を行った。無記名方式による質問紙調査で、回答が得られた17カ月から19カ月児1900人について解析した(回収率は地域で異なる。平均75・2%)。視聴時間別に運動、社会性、言語の発達状況を調べたところ、1日4時間以上の子ども(長時間視聴児)で、4時間未満の子どもに比べ有意語出現の遅れの割合が1・3倍という高率で見られた。

また、子どもの近くでテレビが8時間以上ついている家庭(長時間視聴家庭)で4時間以上視聴している子どもと、子どもの近くでテレビが8時間未満ついている家庭(短時間視聴家庭)で4時間未満視聴している子どもを比べたところ、有意語出現の遅れの率は、前者が後者の2倍と高かった。

調査では、子どもがテレビを視聴しているときに親がどのように関わっているかで運動や社会性、言語の発達状況に違いがあるのかも調べている。その結果、テレビを見ながら親が一緒になって歌ったり内容について語りあったりする家庭では、子どもの視聴時の反応(たとえばテレビの視聴時に「にこっと笑って親の顔を見る」「指さして質問する」など)が活発だったという。しかし、テレビの視聴時に親が関わっていても、長時間視聴する子どもの場合は、有意語出現が遅れる率が高かった。

視聴時の親の関わりが少なく、かつ長時間視聴する子どもの場合は、視聴時に親の関わりがあり、かつ視聴時間が短い子どもの場合より、有意語出現が遅れる率が2・7倍と著しく高かった。この両群の比較では、言語理解や社会性、運動能力にも遅れが見られたという。これらの結果を元に、同学会では以下のような提言をまとめている。

参考文献

  1. (1)清川輝基 著 現代子育ての落とし穴、人間になれない子どもたち。枻出版社、2003年4月30日
  2. (2)日本小児科学会子どもの生活改善委員会:乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です。日本小児科学会雑誌、108:709-712, 2004.
  3. (3)日本小児科医会「子どもとメディア」対策委員会:「子どもとメディア」の問題に対する提言。日本小児科医会会報、27:7-10,2004
  4. (4)村田光範。子どもとICT〜健やか成長のためにはどうあるべきか〜。小児保健研究 2014
  5. (5)American Academy of Pediatrics. Policy statement.
    Media use by children younger than 2years. Pediatrics 2014, 128:1040-1045.
  6. (6)岡田尊司著「インターネット・ゲーム依存症、ネトゲからスマホまで」文春新書、文藝春秋社、2014年12月20日
  7. (7)日本小児科医会。スマホに子守りをさせないで! http://jpa.umin.jp/
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