設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(大阪会場)
「保育に役立つ健康知識」子ども達の健やかな発育・成長のために

総合討論(1)

吉岡それでは、シンポジウムの後半に入りたいと思います。一方的に話を聞いていただくというよりは、自分だったらどういうふうに聞くか、質問するか、というお気持ちでお願いします。双方向でやらせていただければと思います。あらかじめ、一部の方からご質問をいただいております。また、この会場でたくさんのご質問をいただきました。ありがとうございます。さすがに現場の方は、目のつけどころといいましょうか、普段から意識されていることがわれわれとは違うなあということを、3 人で話をしておりました。

まず、それぞれ3人が担当しております部分について、質問が共通したところ、大事なところを、それぞれが15分程度回答させていただきます。さらにご質問をいただいても結構ですので、双方向的にやらせていただきたいと考えております。

それでは、伊藤先生に、アレルギー、それも余り広くアレルギーということになってしまいますと、せっかくの食物アレルギーの話題を散逸させてしまいますので、今日は食物アレルギーをメインにお話をいただき、さらに必要なものはQ&Aをよろしくお願いしたいと思います。

伊藤いろいろご質問をいただいていますが、まず、「保育所での食物アレルギーの対応」ということでまとめられる部分が幾つかございました。そこには、例えば診断についてのご質問もあります。IgE抗体のレベルと除去の関係というのがあります。確かに保育所のガイドラインでも、除去の根拠というのにIgE抗体が陽性であるとか、負荷試験が陽性であると書くところもあります。

ただ、注意することは、IgE抗体が陽性だったから、それだけで除去しなくてはいけないということにはなりません。つまり、医療機関で本当に除去が必要であるかどうかということを、診断していただくということが大事です。

一般論としては、高いほうが症状は出やすい傾向にはありますけれども、実は必ずしもそうとは限りません。不必要な除去を避ける。食品除去は実際に親御さんにとっても非常に負担が大きく、園のほうでも、除去が必要なお子さんが多いほど対応が大変ですので、最初にきちんと診断するということがまず大事です。

保育所では、「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」にある生活管理指導表、あるいは、独自のもの、京都などは府の医師会でつくっておりますし、各都市におきましてもつくっていらっしゃるものがあるかと思いますが、必ず診断書を出していただくということを基本にされて、それをもとに対応していかれるといいと思います。

小さいお子さんで、本当に除去が必要なものは、卵、牛乳、小麦がメインで、その他のものはそれほど多くありません。少なくとも人数的には多くないです。

それで、どういうふうに対応していけばいいか。まず、診断がちゃんとしていること。除去する場合には、先ほども申し上げましたように、献立を立てる段階で工夫をされるのが一番うまくいく方法です。例えば、フライは卵を使わなくてもできますので、皆が使わないものにすれば、卵アレルギーの子も卵アレルギーのない子も同じ給食になりますので取り違えも起こりません。ハンバーグのつなぎもそうです。実際に使わないでできるレシピには使わない、そういう工夫は、栄養士さんがいらっしゃらない園でも、調理の方に理解していただけば実行可能です。このようにできるだけ共通メニューを増やしていくということが大事と思います。

本当に重症な方ですと、少量入っても症状を起こすことがあります。通常の場合は、きちんと洗える調理器具は共通のものを使えますが、小さな調理器具は専用にして印をつけておくと、その器具で調理しているときには、アレルギー対応の食事を作っているという注意喚起になります。

「たくさんの食物に対してアレルギーがある場合にどうするか」というようなご質問もいただいていますが、本当にいくつもの食品に対してアレルギーがあるのかということをまずきちんと専門医に診断をしていただく。保護者の申し入れだけで除去されると、非常にたくさんの食物をやめないといけないこともありますので、確認が大事です。

また、赤ちゃんのときに食物アレルギーと診断されて、この時期にはアトピー性皮膚炎の形で出て来ることが多く、10%ぐらいの赤ちゃんが食物アレルギーと診断されますが、多くの場合、1歳を過ぎたころから症状を起こさずに食べることができるようになり始めます。新たに食物アレルギーを発症する場合も含めて5歳児で食品除去が必要なお子さんは2〜3%にまで減ります。治っていく大切な時期ですので、最低年に1回はきちんと指示書なり診断書をいただくことが大切です。京都府医師会作成の診断書・指示書ですと、大体月に1回は受診をして治る時期を逃さないようにするということで、診断書は年度初めに提出していただき、食事の対応に変更があれば変更届けだけにしていただいています。形式も、除去するものを書いていただくのではなくて、食べていいものにどんどん〇を追加していくという形にしています。書類を書くほうも楽になりますし、お母様も保育園のほうも、この子は今こんなものが食べられるということがわかるようにしておくというのも、一つの方法かと思います。

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