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設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(大阪会場)
「保育に役立つ健康知識」子ども達の健やかな発育・成長のために

子どものけが・事故とその対応・対策(3)

奈良県立医科大学 名誉教授 吉岡 章先生

行政機関への連絡については、電話やメールはやめてください。ファックスがいいです。なぜファックスがいいかと言うと、相手がいようがいまいが、とにかく送ったという証拠が残ります。かつ、改ざんができません。書いたものが行きます。言った、言わないということがありませんので、ぜひ、あなた方を守るという意味でも、子どもたちを守るという意味でも、保護者を守るという意味でもそうしてください。それ以外に、園全体を守るということも先ほど申しました。記録を一人ひとりがわかる範囲で全員が書くということも大事です。

表4

他の保護者に対してどういうふうに言うのがいいのかという例を、表4に示しました。

また、近隣の方だけではなくて、今はすぐにマスコミも来ます。鵜の目鷹の目で来ます。そのマスコミに対しても、余りつっけんどんにやりすぎると、なんじゃこれはということで、複雑、困難なことになります。しかし、丁寧すぎても意味はありません。とにかくこちらは修羅場、忙しいのですから。「今はこれ以上はお話できません」でいいですから、きちっと言うべきことだけは言う。場合によれば、ファックスで送ったような内容を紙でお示しするということも必要かもしれません。

さて、1日が過ぎましても、明くる日からがまた大変です。これも重要でありまして、当該保護者との連携を常に保っていく必要があります。とにかく自宅に行けばいいというわけではなく、向こうも取り込んでいますし、こちらも取り込んでいます。したがって、都合のよいときにはいつでも伺うという説明をいたします。とにかく連絡をお互いに取り合いましょうということでいいのではないでしょうか。

そして、事故が大きければ大きいほど、専門家である弁護士の知恵をかりることも大事だと思います。理事長、園長、主任保母は、隠れているわけにいきません。前に出ていく。これは、私が病院長、学長をしたときにも思いましたが、部下に任せるということは余り得策ではありません。まずは責任者が出る。そのときに、素直になって出る。何でこんなことが起こったんだ、あいつが抜かったではないかとか、こんなことしとけばよかったのにとか、そういう感じは避けます。あるいはマスコミの一言、二言、非常に詰問調に聞こえます。責任者を追及する警察のようなことを言いますので、そういうときにも冷静になってできるだけ素直になって答える。申し訳ないということは必ず言わなければなりません。しかし、どんな責任でもとります、すべて私どもが悪いんです、ということまでは言う必要はありません。

事故というものは、それが死であっても決して犯罪というわけではないのです。やむを得ないことが幾らでもあります。したがって、余り取り乱してすべての責任をとるようなことまで言う必要はありません。しかし、相手のお父さん、お母さんの立場になって考えれば、そういうことになったということについては、大変申し訳ない、自分たちの落ち度であるという気持ちは伝える必要があります。マスコミからは逃れられません。逃げ隠れしないということが大事であります。

さて、具体的な事例についても、ここに10例ほどを書きました。実は私ども、日本小児科学会は今から8年ほど前に、「Injury Alert(傷害速報)」と言いまして、例えば浮輪で溺水になったとか、スーパーボールで窒息したとか、何かを食べて詰まらせたとか、そういう事故がある度に、小児科医が中心になって学術誌であります日本小児科学会雑誌にきちっとしたレポートを出しています。それがすでに50以上を超えています。日本小児科学会のホームページからリンクすることができます。小児科の医師も一生懸命やっていますので、ぜひ責任者の方は、こんなことが起こって取り返しのつかないことになっている、ということを知って今後に備えてください。

さらに、日本小児科学会は、単にそれらの警告を発するだけではなく、それをどのようにして予防するのか、どのようにして対応するのかということについても、提言などをそこに載せています。そして、業界、企業、行政、場合によれば警察、裁判所と連携をして具体的な予防策についても提言をしています。

そして、日本工業規格(JIS)と一緒に委員会をつくって、規格の変更、修正をしてもらって、新しい規格によってより安全なものをつくり上げていくという活動もしております。ぜひ、時間があればそういうところも見ていただいて、時々勉強していただきたいと考えております。ちょっと恐ろしい話をいたしましたが、ご清聴ありがとうございました。

「Injury Alert(I・A・傷害速報)」

例1  固定遊具の隙間に首が引っ掛かった(I・A・No・29)( 3歳11か月、回復)
状況: 登り棒つきすべり台上の横棒に首をひっかけてぶら下がった(わな)状態で発見。
対応: わな状態になる幅は8・8〜22・8㎝であるが、17㎝であった。現在の安全基準で点検する。
例2  おもちゃの誤嚥による窒息(I・A・No・47)(2歳0か月、死亡)
状況: 木製のままごとセットのイチゴ(マジックテープで2つに分離できる)を口に入れていた。母が「すぐに出しなさい」と叱ったところ、誤嚥した。
対応: 長径3・9㎝以下のものは容易に幼児の口にはいり、咽頭、喉頭部にはまり込む。最新の国際基準では4・45㎝の円を通り抜けるボール状のおもちゃは危険である。撤去する。
例3  スーパーボールによる窒息(I・A・No・3)(3歳9か月、死亡
状況: 直径3・5㎝のスーパーボールを口の中に入れて遊んでいた。母が「危ないから出しなさい」と叱ったところ、児は驚いて、飲み込み、窒息した。人工呼吸が続き、6か月後に死亡。
対応: 3歳児の最大開口径は3・9㎝であるので、スーパーボールの直径を5・5㎝以上にする。かつ、通気孔を入れる。類似のおもちゃにも対応〜除去。
例4 その他の誤嚥
状況: ミニトマト、ブドウ、ピーナツ、あめ、白玉、餅などでしばしば誤嚥、窒息する。また、タバコ、熱い飲みものなども飲み込む。
対応: 1/4程度に切る。小さくする。また、危険物を手の届く範囲に置かない。
例5  室内ブランコ遊び中の頭蓋内損傷(I・A・No・21)(3歳0か月、後遺症)
状況: ブランコを支える棒の両端に高さ調整用金属棒(17㎝)が固定されずに差し込まれており、右眼球に刺さった。先端は後頭部に達していた。除去されたが、発達への影響が懸念される。
対応: ピンは遊具から5㎝突き出た状態で、子どもでも引き抜ける状態。ピンを固定する
例6  溺水・溺死(プール、浴槽、バケツの水、トイレの水)
状況:プールでの溺水では子どもは必ずしもバタバタしない。静かに起こる。
対策: プールではこまめに一人一人に声をかける。返事がなかったら、すぐに水から出る。川や海はさらに危険。浴槽には残し湯をしない。ドアに鍵をかける。
例7 頭部外傷、脳震盪
状況: 頭は表面のけが・傷よりも頭を何かにぶつけたとか何かがぶつかった、頭を強く揺さぶられた時の方が危険。
対応: 傷やコブが大きくなくても、すぐに遊びや活動には戻さない。念のため専門医へ。さらに数日〜数週間十分な観察をする。
例8 ドアや引き出しの開閉で指を損傷
対応: ストッパーを付ける。
例9  箸、スプーン、フォーク、ストロー、歯ブラシなどで口腔内を損傷
対応: 材質を選び、鈍角にする。
例10 ベランダ、窓からの転落。
対策: 物理的に登れないようにする。

参考文献

  1. 保育現場の「深刻事故」対応ハンドブック、山中龍宏、寺町東子、栗並えみ、掛札逸美共著、ぎょうせい、2014。
  2. 保育所におけるリスク・マネジメント-ヒヤリハット/障害/発症事例報告書、掛札逸美監修、公益社団法人兵庫県保育協会、2014。
  3. 小児の事故による障害とその予防、小児内科、39巻7 号、東京医学社、2007。
  4. 都市公園における遊具の安全確保に関する指針、国土交通省
    (http://www.mlit.go.jp/crd/city/park/yugushishin/shishin.pdf)
  5. 小保内俊雄、五島弘樹、遠藤郁夫、帆足英一、仁志田博司: 保育施設内で発生した死亡事案、日本小児科学会雑誌、118(11)、1628-1635、2014
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