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《子どもとのふれあいを大切に》—スマホに子守をさせないで—

日本大学医学部小児科客員教授 岡田 知雄先生

提言

  1. 2歳以下の子どもには、テレビ・ビデオを長時間見せないようにしましょう。内容や見方によらず、長時間視聴児は言語発達が遅れる危険性が高まります。
  2. テレビはつけっぱなしにせず、見たら消しましょう。
  3. 乳幼児にテレビ・ビデオを一人で見せないようにしましょう。見せるときは親も一緒に歌ったり、子どもの問いかけに応えることが大切です。
  4. 授乳中や食事中はテレビをつけないようにしましょう。
  5. 乳幼児にもテレビの適切な使い方を身につけさせましょう。見おわったら消すこと.ビデオは続けて反復視聴しないこと。
  6. 子ども部屋にはテレビ・ビデオを置かないようにしましょう。

2004年には日本小児科医会も「子どもとメディア」の問題に対する提言(3)を発信している。これによると、乳幼児期の子どもは、身近な人とのかかわりあい、そして遊びなどの実体験を重ねることによって、人間関係を築き、心と身体を成長させます。ところが乳児期からのメディア漬けの生活では、外遊びの機会を奪い、人とのかかわり体験の不足を招きます。実際、運動不足、睡眠不足そしてコミュニケーション能力の低下などを生じさせ、その結果、心身の発達の遅れや歪みが生じた事例が臨床の場から報告されています。このようなメディアの弊害は、ごく一部の影響を受けやすい個々の子どもの問題としてではなく、メディアが子ども全体に及ぼす影響の甚大さの警鐘と私たちはとらえています。特に象徴機能が未熟な2歳以下の子どもや、発達に問題のある子どものテレビ画面への早期接触や長時間化は、親子が顔をあわせ一緒に遊ぶ時間を奪い、言葉や心の発達を妨げます。また、メディアの内容の影響として、メディアで流される情報は成長期の子どもに直接的な影響をもたらします。幼児期からの暴力映像への長時間接触が、後年の暴力的行動や事件に関係していることは、すでに明らかにされている事実です。メディアによって与えられる情報の質、その影響を問う必要があります。その一方でメディアを活用し、批判的な見方を含めて読み解く力(メディアリテラシー)を育てることが重要です。具体的提言の内容は、先述した小児科学会の提言と一致しています。

参考文献

  1. (1)清川輝基 著 現代子育ての落とし穴、人間になれない子どもたち。枻出版社、2003年4月30日
  2. (2)日本小児科学会子どもの生活改善委員会:乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です。日本小児科学会雑誌、108:709-712, 2004.
  3. (3)日本小児科医会「子どもとメディア」対策委員会:「子どもとメディア」の問題に対する提言。日本小児科医会会報、27:7-10,2004
  4. (4)村田光範。子どもとICT〜健やか成長のためにはどうあるべきか〜。小児保健研究 2014
  5. (5)American Academy of Pediatrics. Policy statement.
    Media use by children younger than 2years. Pediatrics 2014, 128:1040-1045.
  6. (6)岡田尊司著「インターネット・ゲーム依存症、ネトゲからスマホまで」文春新書、文藝春秋社、2014年12月20日
  7. (7)日本小児科医会。スマホに子守りをさせないで! http://jpa.umin.jp/
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