設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(東京会場)
「保育における言葉とコミュニケーション」子ども達と保護者と共に育ちあいつながりあう保育

総合討論(2)

それから保育園に行っている子どもと母親との愛着関係についても質問ですが、これについてはいろいろな調査がされていますが、基本的には家庭で育てられている子どもと変わりません。幼稚園に入る3歳ぐらいまで家庭の中で育っている子どもと、ゼロ歳から保育園に行っている子どもとで、アタッチメントの質は変わりません。ただ、家庭にいる子どもも保育園に行っている子どもも、お母さんが(あるいは父親でもいいですが)よく相手をしてあげて、遊んであげて、困ったときに抱っこしてあげて、鎮まるのを助けてあげて、気持ちをわかろうとしてあげて……こういうことを多くしているほうがアタッチメントは安定することになるわけで、これは、かかわり方の質の問題ということになります。ですから、保育園の子どもたちが愛着関係が薄いのかというと、そうでもないということです。

私のところで分担したのは大体この辺のところですけれども、今のことで、皆さんから、これはどうですかということはありますか。

質問者今の件で少しお伺いしたいことがあります。暴力のことで、例えばですけれども、暴力をする際には必ずエネルギーを消費するわけで、その際、五感が怒りに集中しているわけですよね。その中で、五感をシフトしてあげる。中心に怒りがあるから、そうではなくて、例えば違ったにおいを嗅がせるとか、甘いものを口に入れるだとか、五感をシフトさせることによって、暴力の中心をずらしてあげる方法というのは好ましい行為でしょうか。それとも、そういう行為というのはないほうがいいのか、という質問です。

吉田暴力をおさめたら報酬をあげる、みたいな形になってしまうのもよくないということはありますね。ただ、イライラしているときに、ケーキとかを食べると何か気分がおさまるということは我々みんなあるわけで、そういうレベルの話ですか。

質問者はい。

吉田そういうことはあるかなと思います。ただ、暴力は確かに力をボーンと出すので、ある時期は必要なこともあるんです。だんだんとおさまっていくのが発達ということですね。ありがとうございました。 よろしいでしょうか。

では、片野先生のほうにいきまして、また何かありましたらお答えしましょう。

先生、お願いします。

片野すみません。たくさんいただきました。見て、どうしようかなと思ったり、本音で話していいのかなと思ったりして……。

まず一番目に、「今、保育士不足がどこの園でも叫ばれていますが、私の園ではどうなさっていますか」というご質問をいただきました。うちは24時間、夜間専門園ですから、どうしてもエイビイシイでというポリシーとか、そういう気持ちを持ってくれる人が来ます。保育実習も、手はかかりますけれども、年間、どんどん受け入れています。そして、職員全部で受け止めてあげて、学校に帰す。そういうスタイルをとっていますから、やはり就職につながる大部分の人は、実習先でここは良かったからという理由で来ますね。

また、新卒の人を育てたいという思いはたくさんあるんですけど、一回企業に入って働いて、そしてうちに就職したいという、そういう方も多かったです。だから、うちの園では保育士不足は余りありません。そして、先ほどお話ししたように、平均年齢はまだ若いです。30歳ぐらいです。でも、70代もいるし、60代もいるし、50代もいる、40代もいる。でも、一番パワーを発揮してくれている先生たちは30 代が多いです。

先生たちが20代のときは、夜勤もあるし泊まりもあるしこの先続けられるかなと思って、何年か先はどうしようかと心配しましたけれど、結婚して子どもが生まれて、それでも帰ってきて働き続けてくれているということは、とても幸せなことだと思います。平均年齢が30歳と言いましたけれども、夜間保育園で、10年以上働いている人が多いです。長く頑張ってくれています。とても感謝しています。

だから、保育士不足は早め早めで対応したほうがいいと思います。企業の対応の仕方も、専門学校にバスを連ねて、食事付き・お茶付き等で引っ張ってくる学生も多いと聞きますが、そういう人たちは、ハードのものがきれいとか、いろいろなところに憧れて行くのですね。しかし、3〜4カ月しか続かないとか、自分の思った保育とは違うということで、退職するということはよく聞いています。やはり実習生が来たら、自分のところの保育のよさを教えてあげたり、丁寧にかわいがってやるとか、そういうふうにしたら、採用は余り難しくないと思いますが、どうでしょうかね。よその園長先生の話を新宿区の園長会などでよく聞きますが、実習生が来たら、ノートの記録がいけないとか、ちゃんとしなさいとか、いろいろ言われて、涙流して帰る学生が意外と多いんですよ。でも、若い学生が来たときには、将来保育士になりたいという希望を持っているから、そういうときに実習ノートが何だとか……。そりゃあ大事ですよ。職員がよくかわいがって、やさしい言葉をかけてやるとか、いろいろわからなかったら教えてやるとか、昼ご飯を一緒に食べるとか、そんなことで十分いけると思います。

私は園長会へ行ったときは、園長のみんなによくそんな話をするんですよ。「あの実習生はもう大変よ」とか、「あの学校」とか、いろいろ批判をするんです。でも、「私たちが二十歳のときには、どうだった?」と言いますよ。「それを思い出そうよ」と。私でも二十歳のときは、実習していたらやっぱり涙することもあったし、巡回してくる先生に助けてと言ってすがったこともあるし、もう一回行ってこいとか言われたこともあります。逆に、そういうのを学生に与えたらかわいそうだなと思います。

だから私は、0歳児クラスとか、5歳児クラスに学生が入ったら、クラスの5人の先生みんなに評価させます。評価シートが上がったら、もう一回評価しにくいから、私は私の園長の決裁で、「普通」とか、「ちょっといい」とかにマルをつけてやります。でも、それが普通だなと思います。泣かせてまで実習しなくてもいいと思う。そんな人も社会に出たら、理論と現実の狭間で、就職先で、一生懸命頑張るんですよね。だから、そんなに慌てないでいいと思います。

今は就職困難の時代と言うけど、違う、違う。今は保育士のバブルの時代だから、保育士が足りない。だけど、誰でもかれでも採用したらいいというものでもないですよね。やっぱり性格がよくて、やさしい人がほしいです。でも今のところ、うちでは、足りないというのはないんですよ。ありがたいことです。結婚しても泊まりをやって助けてくれる。それというのも、職員同士が仲がいいんです。多分そうだと思います。あと、理事長がよくハローワークにも求人を出しています。そんな感じでやっています。

次は、「嫌な親に対してどうしたらいいのか」「嫌な先生に対してどうしたらいいのか」というご質問です。そうですねえ……。相性が悪いのはしょうがないんですよ。子どもと先生の相性が悪いのもしょうがない。かといって、私も先生を呼んで、「4 歳児が嫌だったら、半年あるから、赤ちゃんシフトするぞ」と言うんです。そうしたら、「嫌だ」と言う。「そしたら、もうちょっと頑張ってみたら? 保育の方法を先輩に聞いて考えてみたら? 園長とか主任の先生に聞いてみて。どうしたらいいか、ノウハウをもらったらいいじゃない。一人で悩まないでもいいじゃない」とか言います。

そして、本当に子どもと保育者の相性が悪かったら、うちは、4人、5人、1クラスに担任がいますから、1週間とか10日、そのクラスの担任をちょっと代えるとか、そういう工夫をします。親と相性が悪いのは、ほったらかしとったらいい。きついときは、一時、モグラのように、静かにしとったらいいんですよ。そしたら、「園長先生」と言ってくるから、そのときに答えてあげたらいい。ほったらかしといていいですよ。

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