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設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(大阪会場)
「保育に役立つ健康知識」子ども達の健やかな発育・成長のために

季節と感染症 -幼稚園・保育園で流行する病気とその対策-(4)

大阪府立呼吸器・アレルギーセンター小児科部長 亀田 誠先生

次に、消化器の感染症、胃腸炎です。これを引き起こすウイルスを二つご紹介したいと思います。

一つ目はノロウイルスです。ちょうど今ごろピークになっているものですけれども、これもインフルエンザと同様、潜伏期間がとても短く、あっという間に集団発生するということが知られています。特に高齢の方では命を落としたりするということもよくあります。一般的には、急に悪くなりますけれども、1〜2日の持続でスーッと治まってくるということが多いです。最初はしんどくて、「きのうは全然飲めませんでした」とおっしゃっても「点滴が必要かな、でもその前に1回飲ませてみてください」と言うと、結構ゴクゴク飲めたりするというのが、ノロウイルス感染症の特徴であるということが言えるかと思います。症状は胃腸炎そのものです。

治療は、最近は経口補液の有用性が示されています。もちろん市販のものもありますけれども、簡単につくろうと思いますと、水1ℓに塩3g と砂糖40g、これを足していただきますと、経口補液ができ上がります。これは「経口補液」で検索をしていただきましても、いろんなものが出てきますし、某メーカーのものが、これと混ぜると飲みやすいというふうなこともレシピとして書いておりますので、そういったところも参考になさるといいかと思います。

治療的に重要なことを一つだけ指摘をしておきたいのですが、下痢や吐き気があるから、あるいは下痢や嘔吐があるから、それらに対する治療というのは必要なのではないかと思われると思いますが、実は下痢止め、吐き気止めというのは、病気の回復を遅らせる可能性があり、使用しないことが望ましいということが言われております。これはぜひ覚えておいてください。あんまりしゃかりきになって症状を抑えるというのは、必ずしも適切ではないのだということを知っておいていただくとよろしいかと思います。

予防は、ワクチンはありません。ではどうするか。

ウイルスが付着した手指、食品などを介する経口感染に対しての予防対策を立てるということが重要になってくると思います。一つには、糞便や吐物には大量のウイルスが排出されているということで、これらに対して手洗いの励行。下痢・嘔吐のある方は食品を直接取り扱わない。そして、便や吐物は、乾燥する前にできるだけ早く処理するということがポイントになってきます。消毒のためには次亜塩素酸ナトリウムを使うということが重要です。

それから、ゴム手袋を使用するということですが、外して捨てるまで注意が必要です。皆さんの資料のほうに手袋の外し方についても書いてありますが、表面をできるだけ直接触らないようにということがポイントになってきますから、手袋を持ったほうの手で、この一番端のところを持って片一方の手袋を外していただく。そして、外したほうの手は、手袋の端から滑らせるように内側を持って、片方の手の手袋を外すということがポイントになってきます。もちろん、そのときに、最初に外したほうの手袋は、後で外すほうの手で握っておけばいいという形になりますので、そういう形で外は触れずに外していただくということを覚えておいていただきたいと思います。

調理としては、しっかりと加熱をするということが重要になってきます。「何はともあれ十分に加熱をしましょう」ということを、ここでは覚えておいてください。調理器具に対しての対応、注意せねばならない食材として、二枚貝があるということも記載されておりますので、一緒に覚えておいていただくとよろしいかと思います。

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