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設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(大阪会場)
「保育に役立つ健康知識」子ども達の健やかな発育・成長のために

季節と感染症 -幼稚園・保育園で流行する病気とその対策-(5)

大阪府立呼吸器・アレルギーセンター小児科部長 亀田 誠先生

次はロタウイルスです。入院するお子さんというのは、ノロよりもロタのほうが厄介だと思っております。なぜかと言うと、それだけ重症化するからです。「冬季白色便性下痢症」という言葉でロタウイルス感染症のことを理解されている方もおられるかもしれません。それは便の色が白っぽくなるからですけれども、大体5歳ぐらいまでにほぼすべての子供が感染し、大人で感染するというのはそう多いわけではないということが言われております。ただ、ウイルス感染性は強くて、本当にわずかなウイルスだけでも感染が成立するというのが、これの特徴です。

症状は、ノロと同じ胃腸炎という形になりますが、ここで重要なのは、合併症としてけいれん、意識が朦朧としてくる脳症、こういったものを起こしてくることがあるということは、ノロウイルスと異なり、少し覚えておいていただくといいかなと思います。

治療については、基本的にはノロウイルスと同じであるということでご理解いただきたいと思います。ただ、ロタウイルスはノロウイルスと違いまして、最近、ワクチンが接種できるようになりました。小さいうちに打たねばならないということで、1回目の接種は14週6日目までが推奨されております。ワクチンの種類にもよりますが、2 回、あるいは3 回打つ、そういった形でワクチンが終了するという形になっております。これが広く普及すると、重症化することも随分防げるのではないかと考えております。

夏に感染する感染症について、少しだけ触れておきたいと思います。手足口病と咽頭結膜熱について少しお話をします。手足口病は、皆さんご承知のように口の中や手のひら、足の裏などにブツブツの水疱性の発疹が出現する。これを手足口病と言うわけですけれども、通常は比較的軽く済むことが多いです。これがどうして出席停止事由にならないかと思っておられる方も多いでしょうが、なかなか予防が難しいからなのです。

治療は、ある意味放っておけばいいという形になるわけですが、予防として、発症者への対策だけでは有効な予防策とはならないということが知られておりまして、保育園などでの集団発生の予防も困難であるということが言われております。それはなぜかというと、症状を出さない不顕性感染のお子さん、あるいは症状がなくなった後もウイルスを排出することがよくあるからです。こういったことで、十分な対応がとりにくいということが言われております。しかし、何もしないでいいのかというと、そういうわけにはいかないので、飛沫感染、接触感染、便に注意して対応せねばならない経口感染、この三つについて意識をしておけばいいだろうということが、一応推奨されております。

それぞれにつきましては、やはりどこでも手洗い、うがいが入ってくるということは間違いないですし、先ほど来お話をしております咳エチケットが重要であるというところは間違いございません。

最後に、咽頭結膜熱についてお話をさせていただきたいと思います。これは結構熱が高くて大変な病気です。アデノウイルスというウイルスが原因になります。潜伏期間が長いのですけれども、プールなどで感染が拡大することが多いです。発熱の期間も随分長いわけですけれども、基本的な治療は、症状に応じた治療しかないというのが現状です。予防で極めて重要なのは、タオルの共用を避けるということです。手足口病のところもそう書いてあったかと思いますけれども、余計なものを共用しないということが大変重要になってきます。それ以外はほかのところと全く同じですので、こういう形で、本当にしんどい思いをせねばならないお子さんを、できるだけ少なくしていくということが重要ではないかと思っております。

駆け足でお話をしてきましたけれども、これはごく一部の感染症のお話にすぎません。病気になったから、熱が出たからといって、本当にドキドキなさるおうちの方も多いのですけれども、一たん診断がつけばある程度の経過はわかりますし、その上で一番大切なことは、お子さんの全身状態をしっかりと見て対応していくということが大変重要になってきます。それは、私たち自身が感染症から完全に切り離された生活ができるかというと、そういうことはまずないからです。恐れすぎず、一方で不要な感染を避ける、このことを意識して日常生活をしていければと思っております。

ご清聴ありがとうございました。

吉岡亀田先生、ありがとうございました。

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