設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(大阪会場)
「保育に役立つ健康知識」子ども達の健やかな発育・成長のために

総合討論(5)

次に、具体な感染症に対して、インフルエンザ等々についてのご質問をいただきました。一番多いのがインフルエンザであったかと思いますけれども、「インフルエンザにうがいが有効かどうか」ということです。うがいをすること自体は有効であるとご理解をいただいてよろしいかと思います。それは、ウイルスを外に排せつするということはもちろんですけれども、それ以上に、のどの部分にウイルスの付着を防ぐ水というバリアをつくってやるということが挙げられます。一方で、この会場もそうですが、乾燥している中でずっといて、ここにインフルエンザの患者さんが一人おられると、それだけ蔓延しやすいということが挙げられるわけです。チョロチョロであっても、うがいをする。あるいはのどを湿すということは有効であるとご理解をいただけるとよろしいかと思います。

バラバラにご質問にお答えする形になりますが、次は解熱剤に関してです。「発熱でつらそうなときに解熱剤を使っていいのかどうか」ということですけれども、もちろん使っていただくこと自体は構いません。

ただ、この解熱剤が感染症そのものを治すようなものではないということはご理解をいただきたいと思いますし、私自身は、子どもたちを診ておりますと、いつしんどいかというと、熱が上がってくるときがしんどいんです。一たん上がりきってしまいますと、比較的ましになります。そこで耐えていれば、あるいは比較的落ち着いていればそれでいいわけですが、解熱剤で一生懸命下げると、また上がってくるというしんどさをその子に与える、ということも考えねばならないということがあろうかと思います。ですから、熱そのものを治療の対象として、これを下げねばならないということは余り考える必要はないかなと思います。

「熱を取る冷却シート」の使用は必ずしも有効ではありません。特におでこに貼ったところで熱は下がりません。熱を下げるために有効なのは、皆さんよく知っておられると思いますが、太い血管が体の比較的表層を流れているところが熱を下げやすい。ですから、首根っこのところ、脇、足の付け根、こういったところを冷やしてやるのが重要であるということは、よく知られていることですので、ぜひ覚えておいてください。

ちなみに、脇を冷やしますと、通常の体温計では正確な熱がはかれなくなってしまうときもありますので、熱をはかる直前にはいったん、冷やしている氷水などは避けていただくということが必要ではないかと思います。

さらに、異常行動についてのご質問もいただいております。タミフルとの因果関係についてのご質問です。結論はまだ出ておりません。しかし、インフルエンザにかかるということが異常行動を起こすという点は間違いございませんので、この点、もし誤解をされているようであれば、ぜひご理解をいただきたいと思います。

けいれんにつきましても、ご意見をいただいております。「熱が出たときにけいれんを起こした子どもがいました」ということですので、典型的な熱性けいれんのパターンをとったのではないかと思います。熱性けいれんというのは、熱がグーッと上がってくるときに一番生じやすいというのは、皆さんよくご承知のことかと思います。インフルエンザにかかってすぐにけいれんを起こすというわけでは必ずしもございませんので、この点はご理解いただいてよろしいかと思います。

あと、インフルエンザの検査に関して。これは100% 分かるものではございません。レジメのほうにも書かせていただきましたが、発熱後12時間ぐらい経ちますと、お子さんの場合であったら、9割方、陽性に出ると言われておりますが、それでも100%ではないのです。このあたりは十分ご理解をいただいた上で、検査がすべてではない、ですから、多くの医者は、周りでの流行状況、お子さんの症状も勘案して、陰性であってもインフルエンザという診断を下すことがあるということは、ぜひ知っておいていただければと思います。

2 度検査をするということは、もちろんございます。しかし、1度目の検査が発熱24時間後に行っていて、もう1回48時間後に行うかというと、これはドクターの裁量によるところが随分大きいかと思います。

特に48時間を過ぎますと、薬を使う使わないという判断材料に余りこの診断が使えないということがありますので、「インフルエンザとして隔離しておいて」というふうな指示だけで、診断には必ずしも白黒をつけるというところにまでは至らないということも多いかと思いますので、そういう形でご理解をいただきたいと思います。

ほかにもたくさんご意見をいただいておりますが。15分ということで、一たんここまでにさせていただきます。

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