設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(東京会場)
「保育における言葉とコミュニケーション」子ども達と保護者と共に育ちあいつながりあう保育
総合討論(4)
いろんな保護者がいるから、精神的に保育者とか私たちが病んでもしょうがない。のんきに構えて、園長先生にみんなやらせたらいいですよ。下の人に言われてもわからんわね。だから、上の役職に就いている先生とか、先輩とか、10年選手以上の人に言ったほうがいい。かえって泣かないでいいと思いますよ。
それから、経験の長い先生からもたくさん質問をもらっていますが。うちは、エイビイシイの理念やポリシーを持って、子どもを中心に、親の就労支援をやったり、保護者支援をやったり、子どもの成長・発達に喜びを感じながら成長している保育園です。だから、みんなと比べたらいけないし、皆さんの保育園は保育園でやっぱり理念があってやっていることだから、それは十分、それでいいと思います。
ただ、うちの保育園では、きちんと子どものことを中心に置いて、ちゃんと生活ができている親はいいのですが、夜就労している親たちはやれない人たちがいます。私は、そういう子どもたちを守っていきたいから、やっているんです。みんながみんな一緒じゃないですよね。それはそれでいいと思います。
でも、皆さんご存じと思いますが、4月から「認定子ども園」がスタートします。いろいろ議論されていますが、難しいですよね。1 号、2 号、3 号認定とか、いろいろありますけれども、少子化の時代、子どもの募集が問題になってくる、そんな時代になっているんですね。だから、保育所は足を踏ん張って頑張らないと、地方は過疎状態になって、認定子ども園にならないと運営はできない状態になってくる。
きのうも、夜間保育所連盟の全国大会があり、「どうしたらいいでしょうか」と聞かれましたが、自分のところの園でポリシーを持って、オーダーメード的なそんな保育をやっているとか、親のことを守っていける、そんな保育所であったらつぶれないと思います。私は、絶対つぶれないと思う。今度、4月から大変ですけど、頑張ってほしいなと思います。
私はオーナーであって、経営者であって、園長をやっています。ですからこれをしなさいと言ったら、やるかもしれないけど、私はトップダウンはしません。
先生たちに、ああしなさい、こうしなさいとは絶対言いません。みんな任せています。あとは各クラスに、みんなから信頼を受けた役職が、アドバイザーとか、リーダーとか、たくさんいます。そんな人たちがクラス運営をしながら、自分の意見を反映させて役職会で上にあげてもらう。私たちが思っていることを今度はクラスに帰って、ちゃんとみんなにわかるようにホウレンソウしてもらう。それができてたら十分で、何でもいいと思いますよ。
うちは夜間や泊まりがあるから、職員全体に平等にシフトが回るようにみんなで考えてやっています。だから私は、先生に、こうしなさいとか、ああしなさいとか言いません。保育でも悩む先生はたくさんいると思います。私の保育の方法と違う、先輩と違うとか言うけど、思ったら、言ったらいいじゃないですか。うちでもありますよ。先輩に言ったらにらまれたとか、ひどい目に遭うかもしれないとか、いろいろあるけど、そんなのはグチに終わるんですよね。グチですよ。だから経験が豊富な先生が、アンテナを張って、この先生はどう思っている、ああ思っているというのを察知して聞き取りをしてあげるとかしないと下の先生がかわいそうじゃないですか。
職員会議でも、怖いとかそんなことを思わないで、「私はこういうふうに思っています」、そういうふうに意見を発表できる。それが一番大事です。だから、養成校とか、大学の先生たちには、自分の意見をちゃんと手を挙げてちゃんと言えるような学生に育てて入らせてくださいねと、そう言います。後から、誰が言った、これが言ったとかいうのは私は絶対嫌いだから、その職員を呼びます。「アンテナになったらだめ、スピーカーになったらだめ、人は傷つくよ」と。言いたいことがあったら役職を通して言ってくるとか、そうしています。
だから、下の人をかわいがっていかないと、意見を吸い取ってやれないと、不満不平がたくさん出てきます。私は、できないことはできないと言います。いくら現場の園長であっても、できないですよ。理事会があって、理事長の決裁をもらわないといけないでしょう。私が勝手にやったら理事長から怒られるし、責任を取らされます。でも、やっぱり現場にいるから、みんなのことを守っていきたいし、聞いてやりたいじゃないですか。
ちゃんとみんなの意見を吸い取るためには、みんなの意見を聞いてやるのが役職の役目だし、「疲れた」とかそんなことがあったら、個人的に飲み会をよくやっているみたいですよ、うちの職員は。泊まりがあっても、元気がいいから、みんなで飲み会に行っています。バスを使ってスキーに行ったり、飲み会もよく行っている。でも、仕事にはちゃんと出てくる。そういうことですよね。仕事ばかりが人生じゃないし、遊ぶことも覚えないといけない。中途半端はいけないけど、保育士というのは先輩を見て育つから、先輩はちゃんと努力して働かないといけない。給料をたくさんもらっている人は、いっぱい働かないといけない、と私は思いますよ。
次に「全てを受容して受け入れることが大事と言うけど、なかなか難しい。時には自分がだめになりそうになります」との感想をいただいています。私も、きついときには泣いたことがたくさんあるから。本当にきついとき、運営が守られないとき、お金がないとき、もう辞めたいなとか、この保護者がきついなとか、児童相談所から来た子どもを児童相談所が引っ張っていくときに、どうにかして守ってやりたいなとか、そういうことは本当にたくさんあります。自分たちでどうにかしてやりたいとか、職員と意見が合わないとか、いろいろあります、長いこと園長をしていたら。
しかし、そういうときには気分を切りかえて、あ、私はこの保育園に必要とされているんだなと、思い返しています。だからもうちょっと頑張ろうとか、いろいろ考えます。だから、疲れたときはストレスを解消したほうがいいですよ。好きな本を読むとか、おいしいものを食べるとか、旅行に行く。
あとは、自分と同じぐらいの年齢の先生がいらっしゃいますよね。そういう人にグチを聞いてもらうとか、そんなことをやっています。たまに一緒に飲んでグチをしゃべる。「あの保護者はね」とか、「あの先生はね」とか、中では言わないけど、私も外で言っています。そういうふうに気持ちを切りかえてやったらいい。全てを受容しなくていいと思いますよ。できることだけをやる。自分に力量があってこれだけやれるかなと思ったら、やったらいいと思います。無理なことは、余り頑張ると疲れるから、やらないほうがいいと思います。できないときは、モグラのように静かにしとったらいいと思いますよ。そういうときはある。
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