設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(東京会場)
「保育における言葉とコミュニケーション」子ども達と保護者と共に育ちあいつながりあう保育

気持ちに寄り添う言葉(2)

専修大学人間科学部心理学科教授 吉田 弘道先生

それから、褒めるという言葉も、前川先生、片野先生が話されていましたけれども、上手に褒めるということはけっこうやっていて、皆さん、お母さん方の髪形や服装を上手に褒めているのではないかなと思います。「きょう素敵ね」「美容院へ行ってきたの?」、そういうふうなことを言っていると思います。

でも皆さん、ちょっと気を遣って褒めていますよね。みんながいるところで褒めるとちょっと面倒くさい。一人になったときにちょっと褒める、そっと褒める、みたいなことをしないと、後で誤解されたり、いろんなことがあったりするわけです。皆さんも、どんなふうに褒めようかなと、そのタイミングを図っておいでかなと思います。その人ばかり褒めるというわけにいかないと思いますので、上手にタイミングを図って、「よくやっているわね」「きょう頑張ったわね」などと、言ってみることがあろうかと思います。

ここまでお話しした部分は、言葉を意識するということで、この辺はそんなに面倒でないですね。このあたりは、言葉の使い方に気をつけるといいますか、意識するということです。特に明確化や、明確化の質問というのは、ちょっと意識したほうが使いやすいですね。「もう少し話してくれませんか」など、明確化の質問をときどきうまく差し込んでいくことが、先ほど前川先生が話されていた聴き上手ということにつながると思います。このような相手の仕方をされると、よく話させてもらったとか、よく話すことができたとか、言いたいことをちゃんと言えたというふうになるので、聴き上手になることが、関係をうまくつくっていくことにもつながるのではないかと思います。

話が通じない人も、おつき合いされていると出会うことがあると思いますけれども、話が通じるというのは、関係が基盤にあって話が通じるわけです。話が通じないのは、その基盤、関係ができていないから、話が通じないということがあるわけです。

もう一つは、言っていることがずれている。主張がずれていることがあります。これは話が通じてないのも当然です。でも、ずれていても、話をしている限りは、お互いに生産性の高い結果に結びつくことをしたいと思っている可能性があるわけです。こういうところで生産性という言葉を使うのも何か変ですけれども、二人が話し合うことは何かを生産することなのです。何かをクリエイトして創造することです。

話が通じないようでも 共通の目標、共通点が何か一つでも見つかると、少し話がしやすくなるということはあると思います。「あの人はあの人だから」「私は私だから」という見方、考え方もありますが、でも、お互いに話していて、何か共通のところがあるのではないか、どこか一点でもいいから共通目標にできるところはないかしらと考えることがあるとよいと思います。

特に、子どものことを巡って保護者の方と保育者の方が話される場合には、子どもをよくする、子どもがよく伸びるように、というのが共通目標なわけです。その共通目標に向かってどの道筋を通っていくのか、これにズレがあることが多いわけです。この共通目標に向かう道筋を親御さんと保育者で確認できると、一緒に協力できるところが見えてくることがあるわけです。

この辺の話の進め方といいますか、子どもにとってよい対応の探り方といいましょうか、探求する道筋、水先案内といいましょうか、そんなことを保育者ができると、保護者も助かるかもしれないと思うわけです。つまり、一緒に探索、探求するのですが、親御さんが、「この子、どうしてこうなんでしょうね」「うちの子はこれこれこうで、どうしてなんでしょう」といい、保育者が「どうしてなんでしょうね」と言っていたのでは、わからない。道筋の見つけ方、あるいは探り方がわかってくると、保育者が保護者の方と一緒に探求して進んでいくことができるようになるわけで、これができるとよいと思います。

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