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設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(大阪会場)
「保育に役立つ健康知識」子ども達の健やかな発育・成長のために

季節と感染症 -幼稚園・保育園で流行する病気とその対策-(3)

大阪府立呼吸器・アレルギーセンター小児科部長 亀田 誠先生

次は、RSウイルス感染症についてお話をしたいと思います。RSウイルス感染症は、1歳までに半数のお子さんがかかると言われていますし、2歳までにほぼ100%のお子さんがかかるとも言われております。実は大人でもかかりますけれども、重症化するというのは、インフルエンザと違って、小さいお子さんに限られています。潜伏期間はやや長いので、インフルエンザのように、始まったと思った途端に学級閉鎖みたいなことはないわけですけれども、しかし、ダラダラと流行が長引くということが保育所などでは起こり得る可能性があるということです。ワクチンはございません。

症状は、軽症から重症までさまざまですけれども、初感染時の7 割は軽症であるというデータがあります。実は3割は軽症ではないわけです。こちらのほうが問題なのです。そして、重症であればどんな症状が出るかというと、強い咳、ゼーゼー、ヒューヒューいう、息苦しい状態になって、肩で息をするような状態になってくるということが知られています。レントゲンを撮ると、肺炎を合併していたりするということもよく見られるわけですけれども、こういう重症な患者さんは、乳幼児期早期に初めてRS ウイルス感染症にかかったという方に多いということがわかっておりますし、さらに、生まれたときの体重が少なかったお子さん、あるいは心臓や肺に基礎疾患があるお子さんというのは、ハイリスクであるということがわかっております。こういうお子さんに対しては、抗体を定期的に注射することによって感染を予防するということもなされております。RSウイルスは、小さいお子さん、特に乳児の場合には、無呼吸発作が突然死につながる可能性があるということで、インフルエンザ以上に要注意です。

今週の月曜か火曜に、我々のところに受診されたお子さんも、紹介で来たのですけれども、来たときには息をしていない、というのは言い過ぎですが、アップアップの状態で来ました。いっぱいいっぱい鼻水を吸って、ようやっと普通の呼吸になったというようなことがあったのですけれども、ちょっと来るのが遅れていたら、もしかしたら危なかったかなと思ったケースです。

軽症例というのは一般的な対応でいいわけですけれども、このような重症例というのは絶対に病院での治療が必要になってきます。そこへ至らせるまでの間に何とか皆さんで何かできないかと言いますと、鼻水を懸命に吸うということぐらいしかないと思います。まずいと思ったら、やはり病院を受診させるということを覚えておいていただきたいと思います。

実は、お母さん方は、確かにしんどいと思って病院に来られる方は決して少なくはないです。むしろ多いと思っていいと思いますが、中には、「こんなんで行っていいのかな」というふうに思われる方もおられます。これがRSウイルス感染症だったらまずくなるときもあるから、ぜひ無理せずに病院に行ってね、ということをお伝えいただければというふうに思います。

RSウイルス感染症ですけれども、ワクチンがないのであったら、どのようにして予防したらいいのかということですが、ヒントとなるのが、どういう感染経路があるかということです。二つございまして、一つは飛沫感染。先ほどのインフルエンザと同じで、咳やくしゃみで飛び散るしぶきを介するというものです。

もう一つは接触感染で、しぶきがついた物を触って、それを鼻や口に持っていって感染が成立するというものです。これらを考えますと、対処としては、我々大人が、咳をしているときはできるだけ子供たちに接しない。あるいは、やむを得ず接するときはマスクを着用するという、二つのところが非常に重要になってこようかと思います。

保育園でちょっと咳をしていて、これだけで勤務を休みますと言われたら、確かに皆さんは業務が回っていかないかもしれないですから、そういう場合はぜひマスクをしていただく。できれば、乳児の担当を外していただくということはお考えいただくとよろしいかと思います。さらに接触感染対策として、子供たちが日常触れるおもちゃなどを、こまめにアルコールなどで消毒するということが重要になってこようかと思います。ここはぜひ覚えておいてください。

病院でも、最近は看護助手と言われる方が頻繁に手すりなどは拭くようにしております。ドアノブなどもそうですし、子供たちが扱うおもちゃもできる限り拭くようにしておりますけれども、そういったことが、地道ではあるけれども予防の第一歩であるということをご理解ください。

それからハイリスクのお子さんには、抗体製剤といわれるものを用いることもあります。これはウイルスとくっついて感染を阻止するというものですけれども、こういったものを使う必要のあるお子さんがおられるということも、知っておいていただくとよろしいかと思います。

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