設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(東京会場)
「保育における言葉とコミュニケーション」子ども達と保護者と共に育ちあいつながりあう保育
保育園の親子コミュニケーション(3)
社会福祉法人杉の子会エイビイシイ保育園園長 片野 清美先生
私の保育園は、24時間運営、夜間と聞くと皆さん最初は、偏見と差別から入ります。長時間子どもを預けていて、子どもの心身の影響はどうなの? あるの?と。仲のいい公立の園長先生たちはどんどん見学に来て、「園長先生、夜間の保育ってどんなの?」とか聞くんですよ。だから、「変なこと聞くよね、普通どおりの保育ですよ」とか、そんなことをいつも教えます。私の園では単独の夜間保育園ということで位置づけられています。昼間保育園ではありません。昼と夜が併設しているわけでもありません。生後43日から小学校へ上がるまでのお子さんを本園で70名。4年前に分園をつくりました。そこで20名、計90名を見ています。
夜間保育園のいいことは、朝は自宅でご飯食べてきますが、昼ご飯とおやつと夕食、2食食べます。22時以降泊まるお子さんはお風呂も毎日入れます。そういうスタイルでやっている保育園です。一度見学に来ていただいたらいいと思いますが、子どもたちはゆっくりペースで毎日を過ごして、いい顔をして、先生たちに援助されて、いっぱい幸せになっていると思います。そういう保育園です。
これはちょっと関係ないですけれども、私の保育園では「食育」にこだわっています。理事長の意見で、もう10年前ぐらいになるかな。園内で使っているのはみんなオーガニックの食品です。米、お肉、野菜から全部です。子どもたちは園農を通じて、産地直送のお百姓さんのところに行って、田植えしたり、稲刈りしたり、たくさんのことを学んでいます。栄養士も6人抱えて調理していますが、とても腕が上がってきました。そういうことを大事にしている保育園です。
本題ですが、親とのかかわり方。私は、保育者になって今年で45年になります。夏で65歳になります。若いときはいろんなことで悩み、いろんなことで失敗もして、いろんなことを経験しました。でも、今この年になって、ほとんどのことは受容できます。許します。保護者のこと、職員のこと、地域の人たち、みんな許せます。
昔から、無認可をやっているときから、いろいろな保護者がいます。やくざもいましたし、母子家庭、父子家庭もたくさんいました。何か言って文句をつけてきます。よく喧嘩もしました。でも、全部受けとめてやって、違うことは違う、いいことはいいことだ、といって話して聴かせます。一回では終わりません。何回も何回も聴いてあげて、「先生、この時間つくれる?」と言ったら、絶対つくってあげます。朝早くても、夜遅くても、話をずっと聴いてあげます。
だから、親との関係というのは本当に大事ですよね。皆さん、びっくりすると思うけど、夜、歌舞伎町で働いているお母さんが、昼は保育大学へ行っているのです。夜はクラブで働くのです。子どもは、保育園に朝7時に迎えに来て、ご飯食べさせて、朝の10時には保育園に入るんですよ。そういう人たちがいっぱいです。でも、一生懸命後押ししてあげて、頑張ってねとか、何かあったときには、看護師になったり、保育士になったりします。その間、自分のことのように気をつけてあげて、ずっと生活を見守っています。
そういうお母さんたちが多いです。生後43日から入って、学童が6年生までだから、12年間。ほとんどのお母さんと子どもと12年間、連れ添うというのではないけど、一生懸命育ち合っています。だから、私も自分の子どもみたいにかわいい、保護者もかわいい。でも、悪いことをしたら怒りますよ。呼んで、「何考えているんだ」と言って、悪いときはすごく怒る。しかし、その後、ずっとずっと遠目から支えてあげて、「しっかり頑張ってね」とか、そういうことで終わります。
やっぱり人間だから、前川先生がお話ししたみたいに、人から褒められたらとっても気分がいい。けなされたら落ち込む。いろんなことがありますよね。私だって、理事長たちから怒られたらすごく悩みます。勝手なことばっかりしやがってとか思われるから、とても悩むときがあるけれども、次の日から私はケロッとしているし、現場で頑張らないといけないかなあと思ったり、いろいろ考えています。
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