設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(大阪会場)
「保育に役立つ健康知識」子ども達の健やかな発育・成長のために

総合討論(7)

事故の対応について、「行政機関とありますけれども、どこにすればいいのですか」という質問です。これは市町村によって若干違うかもしれませんが、基本的に、幼稚園の場合は教育委員会、保育園の場合は福祉関係部署になると思いますけれども、それぞれの指導・連絡係の担当者がおられますね。その部署とは普段からツーカーになるに越したことはないわけで、そこに連絡をしておくのがいいと思います。

報告書に何を書くかということについては、非常に微妙なのは個人情報が含まれるからです。どの時点で名前を出すのかという点については、一概に言い切れません。普通、最初に出すときに誰々ということを必ずしも言う必要はないです。〇歳の〇児という形でもいいわけで、きちっと調査をしなくてはならないことや重大な後遺症を残すようなこと、死亡につながるような場合には、最終的には当然、氏名も明かしますし、住所も明かします。けれども、最初は、それはこだわらなくていいだろうと思います。当然、その場合は理事長あるいは園長の判断でもう少し頻繁に電話・FAXとかで連絡・連携をし合っていくべきだろうと考えております。

もう一つだけ申し上げます。自動車事故です。車というのも園とは関係がないように言いましたけれども、実はそうではないです。私には4人の子どもがおりまして、共稼ぎでしたので、すべて子どもは保育園にお世話になりました。ある日、家内が車で迎えに行ったときに、それを見つけた一番下の男の子が、園内から「お母さん!」と飛び出たときに反対側から来た車にひかれそうになりました。キューッと停めてくれて、ギュッと足首の皮膚にタイヤが食い込んだところで停まりました。幸いなことに、車が足をまたぐことはなかったので骨折は免れたのです。皮膚は完全に挫滅しましたので、お尻から皮膚の移植をせざるを得なかったという経験があります。自分のことでお恥ずかしい話ですが。

要は、園の先生は園の門を出たから関係がないというわけにはいかない。もちろん、それは親の責任でもありますが、子どもは、親を見つけた途端、脇目もふらずに「ママ!」と行くわけですから。そこのところは十分に注意をしていただきたいと思って、あえて申し上げました。

事故・けが、それに対する対応で、ご質問なりコメントがいただけたらと思います。いかがでしょうか。

質問者今の車の事故のことですが、うちの保育園はバスがなくて、個人的に送迎をお願いしています。6歳以下の子どもですので、チャイルドシートの使用はずっとお願いはしているんですけれども、子ども2人、3人おられる方にとっては、ちゃんと使用していない場合があります。今日のお話とは別かもわからないですけれども、その点、園長とか保育士が前に立って見たり、注意喚起はしていますが、徹底することがなかなかできません。、これから、それをどのようにお母さんたちに注意していかなければいけないかなと悩んでいます。田舎ですので、そんなに車の量は多くないんですけれども、事故というのは誰でいつでも起こり得ることと思うので。その辺は、ほかの保育園の先生方は、どんなふうにされているのでしょうか。

吉岡切実な問題です。一人の子どものときには大体チャイルドシートをしておられるけれども、たくさんの子どもや家族を乗せなければいけないときに、チャイルドシートを二つも三つもというわけにはいかないという現実がありますね。ほかの園でどうされていますか。言っても聞いてくれないという親御さんも多いですね。かといって警察に通報するというわけにもいきませんね。いかがでしょうか。

警察は、平素から広報活動をやっています。例えば私どもの大学では学生に、「交通ルールを守る」という教育講演を年に1回、怖いビデオを見せながらやってもらっています。警察署は、すすんで来てくれます。

だから、園から保護者に言いにくかったら、お集まりのあるときに、警察から指導してもらうというのは一つの方法かもしれませんね。あるいは、子どもたちの交通マナーを守る「一日署長」みたいなことを企画されて、そういうときにチャイルドシートはちゃんとやりましょうと、注意喚起します。そして、別の機会に、こういうことをやりましたと写真をつけた報告書を1枚渡すというような工夫ぐらいでしょうか。何かいい成功例がありましたか。確かに二つチャイルドシートをつけている人は珍しいですね。そういうことを皆でお考えいただくということで、勘弁してください。

ほかにいかがでしょうか。

亀田私も、そんなによい知恵があるわけではないですので、そういうところからのお話ではないのですけれども、自動車とともに自転車も絶対に要注意ですね。私が外来でフォローしているお子さんで、誤って自転車が倒れたときに頭を打って頭蓋内出血を起こしたというお子さんがおられました。本当にコツンと打っただけだとおうちの方は認識をされていて、恐らくそれはそのとおりでしょうけれども、それが大事に至ってしまうことが確かにあるということは、親御さん方はなかなか想像できないというところがあると思います。皆さんがいろいろお話をされるよりは、今ちょうど交通業界で、プロのドライバーに対しては、ドライブレコーダーで事故の様子を見せておりますでしょう。ああいうもののほうが、間違いなくイメージとしては強く残るということがあろうかと思いますので、自動車に限らず自転車も含めて、先ほど吉岡先生がおっしゃったように、警察の力をかりて交通安全の教室を開かれるというのは、確かにいい方法であろうかと思います。

吉岡

自転車は大事ですね。きのうも、勇敢なママがいまして、前に乗せているだけかと思ったら、後ろにそれも二人乗せていましたね。あれはたしか許されないですね。

ほかにいかがでしょうか。事故やけがで、これは重大だと思ったときは、まず、救急車と医師です。ですから、園の先生方で判断されるよりは、やはり直接診察、あるい親御さんを通じてでも診察してもらい、必要に応じて検査もしてもらう。医師がもういいと言えば責任は向こうですし、そうでなくて、先生方が大丈夫だろうと思ってしまった後に、万が一のことが起こった場合には、ちょっと大変なことになります。特に頭を打った場合、皆さん方は、傷あるいは腫れる、出血するということを気にされると思います。それは当然ですし、それは大事ですけれども、頭の場合は、今、亀田先生もおっしゃったように、外から見えない症状もあるわけですから、慎重に経過を見る、親御さんにも伝える。そして、頭をゴツンと打っている、高いところから落ちて、今は元気にしているけれども頭を打ったという記録を残し、先生方の間で情報を共有して、その日だけでなく少なくとも数日間、十分にケアしていくのがいいです。1週間後に症状が出てくるということもないわけではないのです。それぐらい、頭の中では徐々に進む血腫の形成もあります。頭はぜひ気をつけていただきたい。子どもはなかなか「痛い」と言いませんから。

ほかにいかがでしょうか。

それでは、ご質問の追加もございましたので、もう一度、お二人の先生方にご回答願いたいと思います。

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