設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(東京会場)
「保育における言葉とコミュニケーション」子ども達と保護者と共に育ちあいつながりあう保育
保育園の親子コミュニケーション(5)
社会福祉法人杉の子会エイビイシイ保育園園長 片野 清美先生
夜間保育園は、研究をどんどんしました。子どもが長時間いても、心身ともに全く影響はありません。これは、私たちが連盟で学者を擁して研究発表しました。
全然問題ないんですよ。うちの保育園でも、ちゃんと夕食を食べたら、先生と仲よくお風呂に入って、8時半には、10時以降までお泊り保育する子どもたちは、みんな寝ています。全員が朝まで寝るわけではないです。1時間ごとの刻みでお迎えが来ます。保育者が「またあしたね」と、保育園から家庭につなぐ保育をやっています。だから、十分睡眠はとれています。
きのう、幼稚園の先生たちと対話もしたのですよ。4月から法律が変わりますね、認定こども園とか、1号、2号、3号とか。幼稚園の先生たちは、昔から、「保育園に教育はあるのか」と、そういうことでよく言われます。でも、うちの保育園では、教育部分もきちっとコアタイムとか設けて、いろいろ努力して、小学校に上がってもスムーズにいくように、頑張っています、そういうところです。だから私たちは、プライドを持って、保育園のことを好きでいたいし、頑張っていきたいなと思っています。
それから、子どもとのかかわりですけど、私はいつも現場に10時半ぐらいから夕方の6時ぐらいまではいます。その中で、今一番かわいいなと思うのが年長さんの卒園する子どもたちです。とても言葉が豊かになって、ああ、あと2カ月で卒園するんだなと思ったりして、今、いっぱい遊んでいます。とっても子どもたちがかわいいです。
その中で、ひねくれ者という子どもがいますよね、やっぱり。どうしてもお母さんがサービス業だったら、余り相手をしてくれない。そういうことで保育園に来たら、先生にかかわってもらいたい、甘えたい、抱っこされたいとか、いっぱいそういう気持ちがあるのですね。気のきく職員はそういうのをわかっているから、ソーッと行って抱っこしてやったり、コミュニケーションをとったり、きょうはかわいいねえとか言って育てています。
私も、1人、4歳児で気になる女の子がいて、いつも先生から怒られている。「何でそこにいるの?」と言うと、立たされている。○○ちゃんというんですけど、いつも、一番最初に抱っこして、10分間抱きしめてあげて、「きょうは、髪の毛結んでいるの、かわいいねえ」とか、「元気がいいね。泣かないでねえ」とかいって、10分ぐらい遊んであげます。そして、「きょうは頑張れるかなあ」と言うと、Vサインをしてくれます。
子どもは、言葉のやり取りで、朝のスタートがスムーズにいくし、先生からの声がけとか、抱っこされたりとか、いろんなことをその子その子なりに待っているわけです。だから、うちの職員には、しっかり抱きしめてあげてほしいなと、決して怒ることはしないでね、と。そういうことを常に言っています。
それと、私の一番嫌なことは、大きい声を出す職員。
手をあげたりはしませんが、手をあげるようなふりをする職員、一番嫌いです。特に大きな声を出す先生は大嫌い。子どもの目線でゆっくり話をするとか、そんな接し方がいいんじゃないかなと思います。そして、一人の先生が一人の子どもを叱っていたら、もうこれ以上無理かなと思ったときには、ほかの職員をチョイスしなさい。交代して怒ってあげたらいいんだよとか、そういうことをうちは決めています。
子どもというのはかわいいもので、嘘を絶対言わない。なかには、嘘を言う子もいますけど、でも、子どもは、家庭で十分かわいがられるのか、保育園に来て一生懸命かわいがってあげるのかどちらかですよね、二つ選べない。だから、私たちは保護者に、ああしてほしい、こうしてほしい、あの親はどうだね、この親はどうだねと、隠れて文句は言わない。子どもは聞いている。絶対職員同士で言わないこと。子どもは聞いていますよ。うちのお母さんは文句言われていると。そうしたら落ち込むから、そういうことは言わない。子どもとは、いろんなことにつけて、一つひとつスキンシップを図って、抱きしめてあげること、それをモットーにしています。
あと、職員とのコミュニケーションです。私は園長をして長く、保育者生活45年ぐらいになるけれども、余り怒ったことはありません。3年に1回ぐらい怒るときは、「もう辞めたら?」と言います。でも、あんまり怒らない。そして私は、毎日、先生たちとのコミュニケーション、会話をしたら、必ず帰って反省します。「私はあの先生と話したけど、何か悪いこと言ってないかな」とか、「傷つけること言ってないかな」と。そして、相当悩んだときには手紙を書く。こうだよ、こうだよといって。そして、頑張ろう、もうちょっと頑張ってみようと。「失敗は成功のもと」という言葉があるから、必ず頑張れる。そういうことでずっとやってきて、うちの保育園の離職率、昨年は1人ですよ。とても評価されています。
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