設立80周年記念 第35回母子健康協会シンポジウム(大阪会場)
「保育に役立つ健康知識」子ども達の健やかな発育・成長のために
食物アレルギーの基礎知識と対応(4)
同志社女子大学生活科学部食物栄養科学科教授 伊藤 節子先生
誤食はどういう形で起こるかということを、2009年の保育所における調査データからお示しします。3分の2の園が誤食を経験していましたが、一番多いのは配膳時でした(スライド⑤)。いくら気をつけても配膳するときに間違ってしまう。そして、どういうものが多いか。卵、牛乳、小麦、これで4分の3を占めておりまして、これはちょうど原因食品の割合と同じです。ですから、特定の食品で誤食が起こるのではなくて、やはり頻度が高いもの、ある一定の頻度で起こるということを示しているのではないかと思います。ヒューマンエラーをなくす仕組みづくりが大事である。それには献立の工夫をするのがもっとも合理的かつ有効です。先ほどのように、つなぎとか衣などに卵を使わないで調理するとか、皆が同じものを摂取できる献立をふやすことがコツです。子どもはやはり摂取時にお隣のものを取ってしまう、必ず起こることですから、そういった備えをするということが大事です。給食におきまして、乳幼児期は、治る子もいますし、新たな発症もあります。そして、大切なのは「安全の確保」ということです。
離乳食は、原則どおりに進めていただいていいですし、授乳・離乳の支援ガイドどおりです。家庭で摂取してから園で摂取するのが基本です。除去する場合には代替食が原則になります。何種類もの除去食をつくらなくて、1日1種類にしましょう。そして、安全性の確保を第一としましょう。食品の抗原性を理解することにより、メニューは広がっていきます。
それでは、誤食したときにどうするか。まず、口の中がかゆいとか、誤食がわかれば出して口をすすぐ。そして、軽い症状のときは、ヒスタミンH1受容体拮抗薬、いわゆる抗アレルギー薬、これはすぐに内服すればかなり有効です、をすぐに内服する。副作用はありませんから、迷わずに飲ませていただきますが、症状が進行したらエピペン®も必要になってきます。エピペン®はどういう場合に打つか。日本小児アレルギー学会のホームページにエピペン®を使用するタイミングがわかりやすく書かれています(スライド⑥)。繰り返して吐き続けるとか、我慢のできない腹痛のとき、のどや胸が締めつけられて声がかすれてくる、犬がほえるような咳、これは喉頭浮腫の非常に危険な状態です、これに有効なのはエピペン®しかないのです。全身ぐったりしてしまったときには、ためらわずに打ちましょう。このような症状が一つでもあれば打ちましょう。
そして、各保育園では、いろいろな体制づくりをしていただきたい。今日お話する時間はありませんが、東京都の食物アレルギー緊急対応マニュアルをホームページで見ることができます。これを参考に、しっかりと体制をつくっていただいて備えていただければと思います。そして、軽いときの内服薬は迷わずに飲ませていただきたい。もし、抗原量について、ご興味がありましたらレジメの参考文献をご参照下さい。
ご清聴ありがとうございました。
吉岡伊藤先生、ありがとうございました。ご質問は、後でまとめて受けさせていただきます。
アレルギーというのは、社会的にも「核アレルギー」とかいうように、自らにとってこれは困るということで、強く反応し過ぎるということがアレルギーであります。一方、強い刺激を受けてしまったらアレルギーの反応も出ないという場合もあるわけです。皆様方におかれては、「食物アレルギーはむずかしいから私はとってもかなわん」と、アレルギー反応を示してしまわずに、きちっと勉強をしていただきたいと存じます。そして、いざというときの対応を考えていただきます。もちろん、園でもいろいろ勉強される機会もあろうと思いますので、知識を得ることと相談を通じて、ぜひ先生方の中にアレルギーをつくらないようにしていただければと思います。
次は、感染症です。特に季節との関係について、お話を賜ります。「季節と感染症 -幼稚園・保育園で流行する病気とその対策-」を、亀田先生にお願いします。
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