3.免疫のしくみ
免疫とは、体の中で自己と非自己を区別して非自己を排除するためのしくみです。具体的には、体に侵入したウイルスなどをみつけ、攻撃してウイルスを排除することで病気になるのを防ぐことなどが挙げられます。免疫のしくみは複雑ですが、ここでは基本的な概念をつかむことを目標に解説します。最初のステップは、体の中に入ってきたウイルスや細菌などを非自己(異物)として認識することです。引き続いて、異物を取り除きます(図2)。微生物から体を守るシステムには他に、皮膚のバリア機能や粘膜の繊毛や粘液、腸内細菌叢などがあります。
体の中の免疫系の仕組みは二通りに分類することができます。一つはもともと体に備わっている「自然免疫」で、もう一つは過去に微生物に晒された経験によって体の中に作られる「獲得免疫」があります(図3)。
自然免疫の例として、好中球、補体、マクロファージなどがあります。これらは初めて遭遇した外敵がもつ特有の成分を認識し、直接攻撃する能力を備えています。しかしながらヒトの感染症を引き起こすような微生物は、自然免疫を凌駕する能力を持っています。私たちはこれを排除するために獲得免疫という強力なシステムを持ち合わせています。自然免疫で戦っていたマクロファージや樹状細胞と言われる細胞は、微生物を取り込み、我々がこれを異物と認識できる標的である抗原をリンパ球に提示する事ができます。この提示をうけたリンパ球はこの抗原を攻撃する抗体を産生するリンパ球や、感染している細胞を排除するリンパ球などを作ります。このプロセスは新しい微生物に遭遇した場合は1~2週間ほどかかりますが、一度遭遇したことのある微生物に対する免疫の記憶を持った細胞が体の中に残り、次に出会った時にはいち早く反応する事ができます。ワクチンはこの獲得免疫の仕組みを応用した製剤で様々な微生物に対するものがあります。新型コロナウイルス感染症の厄介なところは、微生物に対する我々自身の免疫反応が時に過剰になり、強い炎症により症状が重くなることです。これはワクチンを作成する上でも懸念事項となっており、諸外国で開発されたワクチンの安全性については注意深く観察する必要があります。
参考文献
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