2.食物アレルギーの考え方…制限食をやめましょう…(10)
これは、アレルギーの世界で一番有名な赤ちゃんです。いろいろなところで引用されております。口から入ったら、免疫寛容、すなわちアレルギーが治ってしまうかもしれない。
先ほど言った食事指導ですが、負荷試験で症状が出る量より少ない量を食べさせるのが食事指導です。危険はゼロではありませんが、最小限にすることができる。体調が悪いと急に症状が出たりしますので、気を付けなければいけませんが。経口免疫療法というのはどういうものかというと、治療を目的として食物負荷試験で症状が出た量を超えて食べさせるということです。症状が出るかもしれない量を食べさせるわけですから、十分な準備が必要です。アクシデントが起こる可能性がありますから、安易にやることはやめてほしいなと思っております。症状が出ない量、このくらいだったら大丈夫という量を負荷試験で決めて、その量を週に2回以上食べる。2週間で1.2から1.5倍というふうに増やしていく。他のアレルギー疾患も影響しますので、ぜんそくやアトピー性皮膚炎はしっかり治しておく。それから、体調が不良の時は要注意です。大事なのは、患者および家族への十分な説明と理解です。まず、理解していただかないと事故が起きますので、しっかりお話しします。我々のところでは、説明文書を使って説明し、同意書をいただいております。説明したとしても、自己流にやってしまう人もいます。勝手に増やしてしまうとか、途中でやめてしまったり、急に始めたりという人もいらっしゃいます。アトピー性皮膚炎が全然よくなっていないのにやってしまう方もいます。こういうのは危険であるということ医師も十分に認識する必要があります。症状の出現に備えて準備はしっかりします。
我々の帝京大学では24時間体制の救急外来がありますが、救急の先生方と緊密に連絡をとって、安全を図っています。牛乳は注意が必要で、ここ10年の間に起こった、死亡まではいかないまでも重症となったアレルギー患者さん18例の方の半分の原因が牛乳でした。
治る方は多いですが、中には食べ続けなければいけない人もいます。食べ続けているといいんだけれどもやめると出てしまう、こういう方がいらっしゃるんですね。あと、残念ながら治らない方もいらっしゃる。でも、全く治らず、除去しか方法がなかった時代に比べれば、非常に状況はよくなったと思います。
今後は、より安全な方法として、閾値を超えない、症状が出る量を超えないで食べさせるという治療法がだんだん主流になってくれるのではないかと思います。これは、国立成育医療センターのデータです。
この矢印の階段状になっているのは、今までの方法で、少しずつ、増やしていくという方法です。それと、閾値の10分の1,00分の1、1,000分の1の量で毎日食べ続けるというのを比べています。意外なことに、少量で維持する方法でも効果は同様にあり、有害事象が少なかったということが示されました。これから主流になってくるかもしれません。ほんの少しを毎日のように食べて、半年に1回ぐらい負荷試験をやって、よくなったかどうかをチェックする。例えば毎日1グラムをずっと食べて、負荷試験では10グラムぐらいまでを食べさせてみて、おっ、治っているじゃないかなんていうことをやっていく。このような研究がたくさん出てくれるとうれしいかなと思っています。僕は、保育園にとってもうれしいことだと思っています。少しずつ増やす方法でやっているお子さんに朝食べさせてしまって、保育園で症状が出るなんて、皆さん困ったことありませんか。安全な量だけ食べていくというふうにすれば、そういう事故が減りますよね。そういう面からも、こういう方法のほうがいいのではないかなと思っています。