1.新しい授乳・離乳食の考え方…「授乳・離乳の支援ガイド」2019年改訂版から…(4)

妊婦さんの中で、特に大きな課題になったのは、これが妊婦さんのための食生活指針で、妊婦さんが食事をバランスよく食べるというのは当然重要なことなんですけれども、この中で一番の課題は、妊娠中に妊婦さんが何キロふえればいいかというのが、日本ではいろいろ指標があるんですね。一番上は、妊娠中毒症を防ぐようなもの、2つ目は、いわゆる「健やか親子」という国でやっている事業での推奨値で、ずっと下がって、一番下、これはアメリカでの推奨値なんですね。

既に妊娠を経験された方もいらっしゃると思うんですけれども、日本はいわゆる通常の体格。BMIで言えば18.5から25の通常の体格の方は、7から12キロ、妊娠中にふえるのが一番いいですよという推奨になっているんですね。アメリカは体格が違いますから、そのまま比較はできませんけれども、アメリカだと最低でも体重がふえるのが十何キロなんですね。

日本で7から12キロで何が起こったかというと、恐らく多くの妊婦さんは7キロふえればいいんだと。7キロふえれば、もうそれ以上ふえなくていいということが、強く妊婦さんのほうにあったようだし、はっきり言えば、産科の先生もそんなに体重をふやさなくていいですよという時代が結構続いたんですね。そのために、かなり妊婦さんの至適な体重増加量と言いながら、至適ではなかったのではないかという懸念があるんですね。

日本では、実は新生児、生まれる子供がより小さくなってきているんですね。これは、早く生まれる率で、こちらは2,500グラム未満、低出生体重児の出生率なんですけれども、実は日本の子供、少し早く生まれるようにはなったけれども、さらにどんどん小さくなってきているんですね。もちろん妊娠中の栄養だけで説明はできませんけれども、ともかく7キロふえればいいんだということに関しては、妊娠中の体重増加が少ない方ほど、やはり出生体重は小さいので、どう考えてもそれが大きく影響しているということで、7キロよりもう少し高いのが至適体重増加ではないかと考えられました。

早産児と低出生体重児出生率

実際、疫学研究をされているグループが報告しているんですけれども、それを見ても、やはり最低でも10キロぐらいは体重がふえたほうがいいだろうということで、7ではなくて、せめて10。上も12ではなくて、もっと上でもいいのではないかと、一応我々の研究班の中では考え方を持ったんです。

低出生体重児の発症機序及び長期予後の解明に関する研究、森臨太郎

ただ、今回の改定のための研究班では、それを何キロにするかという明確な数値をもってあらわすことができませんでしたので、一応改定の中には盛り込まれませんでした。ただ、当然これは重要な課題ですので、今年度の研究班が現在検討していますし、それから、産婦人科のほうは「産婦人科ガイドライン」というものをつくっていますので、そちらでも近日中に結論を出される予定ですので、皆さん、直接妊婦さんにかかわられることは少ないかもしれませんけれども、実は日本の妊婦さんの妊娠中の体重増加は、決して十分ではない。その結果、ひょっとすると、日本では低出生体重児がふえているかもしれない。

体格および至適体重増加量への提言