2.食物アレルギーの考え方…制限食をやめましょう…(7)
今日の楠田先生の話とも全く同じ話になっておりますが、離乳食はおくらせるべきか、初めて食べるときどうするかです。3カ月から7カ月の子供の腸管というのは、食べ物を受け入れやすい状態にあります。皆さん考えてみてください。食べて、腸が消化する。これは、サバイバルに絶対必要ですよね。食べられなければ、人間は死んでしまいます。だから、食物は受け入れなければいけないんですね。でも、病原体は排除しなければいけない。目や鼻、のどから入ってくる病原体と口から入る食べ物とを区別することを学ぶ時期が3~7カ月なんですね。こういう点から、離乳食をおくらせることは、よくないのではないかという考えが出てくるわけです。それに、嚥下や咀嚼、反射などから考えると、離乳食開始は5カ月ぐらいがいいよねという話になってきます。
血液検査でよくある誤解なんですけれども、血液検査をしたら前もってアレルギーがわかるわけではありません。発症していないアレルギーはわかりません。卵や牛乳のアレルギーがあるかどうか(今後出るかどうか)検査してくださいなんていうのは、実は無理な話なんですね。大人になってから花粉症が発症した方はたくさんいらっしゃると思いますが、3歳のときに検査して将来花粉症が出るかどうかはわかるでしょうか。発症してからでないとわかりません。発症の数年前から抗体は上がっている可能性がありますが、その時は症状がないので、調べても意味がないわけです。
驚くべきことなんですけれども、一卵性双生児は遺伝子が全く同じなのに、ピーナッツアレルギーが一致する率が6割と言われています。これはどういうことだという話になりますね。環境や食習慣が影響を与えるわけです。ほかにも腸管の感染などいろいろな要素があるかもしれません。二卵性となるとたった7%です。結局、どういうことか。兄弟にアレルギーがあるからと過剰に心配する必要はないということなんですね。
「でも、怖いんです。アナフィラキシーでお兄ちゃんが死にかけたんです。」、それは心配ですね。では、どうしたらいいか。当たり前の話で申しわけございませんが、初めて食べるときは少量からにしてください。また、病院のあいている時間に食べる方が安心です。どうしても不安な場合は、最初の摂取を病院で行うなんてこともやっています。最初の1回目だけ病院で食べてもらって、1時間いて何もなかったら、では帰りましょうと。実際は、少量であれば、例外を除いてほとんどの方で大丈夫だろうと思います。
また、英語の論文ですみません。これは、非常にエポックメイキングな論文だったんでした。ピーナッツを早く食べている人は、ピーナッツアレルギーが出にくいということを示しています。他にも、イスラエルとイギリス、同じユダヤ系の方で、ピーナッツの摂取量とピーナッツのアレルギーの発症率を見たら、食べていないイギリスのほうが10倍以上多かったという、驚くべきデータがあります。食べたほうがいいのではないかと思わせるデータです。
これはいろいろまとめた2019年5月に出た論文です。どうも卵やピーナッツは早く食べ始めたほうがよさそうだと述べています。ここは証拠がそろってきたということですね。ただ、卵、ピーナッツ以外の牛乳、小麦、魚に関しては、それらしいけど、まだ証拠は十分にそろっていないよということです。少なくとも卵は早く食べてよさそうですね。