2.食物アレルギーの考え方…制限食をやめましょう…(11)
さあ、もう一つ大きな問題がスキンケアです。これは、先ほど少しお名前が出てきました成田雅美先生などが関係していることです。スキンケアというものがアレルギーの予防に非常に大事であるということです。スキンケアをして、皮膚のバリアを強化すると、経皮感作と言われるものを予防できる。経皮感作は次のスライドで説明します。
さあ、先ほどの有名な赤ちゃんがもう一回出てきました。口から食べると、どうもアレルギーは治るということですが、逆に皮膚、特に炎症のある皮膚、アトピー性皮膚炎の皮膚から入った食物は、アレルギーを誘発するとされています。
これを間接的に証明する事件がありました。「茶のしずく」ですね。「茶のしずく」、ご存じですか。「茶のしずく」の石けんの中に、小麦の加水分解物、小麦由来のものが入っていたんです。それが皮膚から浸透して、食物アレルギーを大人で誘発してしまったわけです。皆さん、大人になってから、「あなたはパンが食べられません」と言われたらどうしますか。僕は関西出身ですので、「お好み焼き、あなたは食べてはいけません」と言われたら、ちょっと人生真っ暗になってしまいますね。幸い、多くの方は治ったんですけれども、ひどい症状がでてしまいました。
アトピー性皮膚炎というのは、実は皮膚のバリア機能が壊れている病気なんだということになってきました。アトピーの原因が食物アレルギーというのは、もう過去の話になってしまいました。皮膚のバリアが壊れているおかげで、この赤いラインのようにアレルギー物質が皮膚を通じて入ってくる。そこでアレルギーが起きるんだということです。
それに関する有名な論文です。フィラグリンというのは、皮膚のバリアをつくるたんぱく質の1つです。フィラグリンに異常があると、皮膚のバリアがうまく機能しなくて、アトピー性皮膚炎が起こってしまう。このピーナッツのところを見ていただくと、ピーナッツアレルギーが5.3倍起こってしまう。フィラグリンの異常によって、アトピー性皮膚炎やぜんそくや食物アレルギーが増えてしまうということです。
統計をみてみると、小さい子にアトピー性皮膚炎が多いことがわかります。赤いラインが食物アレルギーですけれども、これを見ると、どうもアトピー性皮膚炎の後に食物アレルギーが出ているように見えますね。アトピー性皮膚炎があると、食物アレルギーが起こりやすくなり、その逆ではない。食物アレルギーがあるからアトピー性皮膚炎になるわけではない。これは、我々の臨床の実感としてもそうです。昔、アトピー性皮膚炎だと食物を除去するという時代があったわけですけれども、除去してもよくならない。それよりも、きっちりと外用ステロイドを使用する方がよく効くんですね。アトピーがあるから食物アレルギーが起きるんだというのが、どうも本筋らしいということになってきました。