2.食物アレルギーの考え方…制限食をやめましょう…(4)

さあ、次はIgEの話です。アレルギーの検査というと血液をとってIgEを測定するというのが代表的なものです。「アレルギーの検査をしてください」と言う親御さんはたくさんいらっしゃいます。アレルギーを起こす抗体はたしかにIgEです。では、IgEを測ればアレルギーがあるかどうかわかるのでしょうか。実は、そうは簡単にいかないのです。中には「アレルギーの検査をしてください」ではなくて、「アレルギーの検査をしてきてくださいと言われた」という方もいらっしゃいます。これは、保育園などで「してきて」と言われているようです。これ、実際は医師は困ってしまうんですね。特に、「今食べているんですけど」と言われた場合には、なぜ必要なんだろうかと首をひねってしまいます。「食べているなら検査しなくていいじゃないですか」ということですね。

さあ、皆さん、クイズです。このスライドの数値を見てください。これを見てどう思いますか。「エビをやめましょう」ですか。これだとピーナッツも怖いですね。カニもやめましょう。クルミもやめましょう。本当にそうなんでしょうか。実はこの方、エビでは全く症状がありません。保護者が心配して「検査をしてくれ」と言ったから主治医は検査をしたんですけれども、その後私が説明する時に聞き直したら、なんと検査の前日にエビチリ1人前を食べていたんですね。つまり、食べているのに心配だということだったんです。

検査しなければよかったですね。ちなみに、このお子さんは、その後も普通にエビを食べております。

では、いったいこの検査ってなんだろうかということになります。IgEが上昇しているのは、感作されている、すなわち体が一応反応しているんだということをあらわしているにすぎません。人間の体には、IgEがあっても、アレルギー反応を抑える働きがあります。皆さんがアレルギーを簡単に起こさないのは、それがあるからなんですね。つまり、IgEが上昇していても、症状があるとはかぎらないということです。IgEは、アレルギーの原因を見つける時、最初の容疑者を割り出すヒントではありますけれども、容疑者は容疑者であって、犯人とは限らないわけですね。

測定法によっても異なります。最近、少しだけの血液で多数の項目を測れるなんて検査が出てきておりますけれども、定量性に乏しいことがわかっています。この検査だけでは、アレルギーの専門医は除去を決めません。先ほど言いましたように、最初の手がかりであるということです。

食物アレルギーの頻度

最近は検査も進歩してきました。その一つがアレルゲンコンポーネントという考え方です。食べ物というのは、たんぱく質や脂肪などいろいろな物質の混合物です。1種類の物質だけでできているわけではありません。その中で、ほんとうにアレルギーを起こしているのはどの物質かという研究が進んでいまして、ピンポイントでIgE抗体を調べられるように、すなわちより正確に調べられるようになりました。この物質のことをアレルゲンコンポーネントと言います。卵アレルギーの場合のオボムコイドが代表例です。その他、小麦のω5グリアジン、ピーナッツのAra h2、大豆のGly m4、クルミのJug r1、カシューナッツのAna o3などがあります。