1.新しい授乳・離乳食の考え方…「授乳・離乳の支援ガイド」2019年改訂版から…(14)

次は、イオン飲料を多飲したときのビタミンB1欠乏と、それから、ボツリヌス菌の話ですね。

このイオン飲料の多飲によるビタミンB1欠乏なんですけれども、これは小児科学会で調査されたんですが、結構な例があるんですね。ビタミンB1というのは、不足すると神経障害を起こして、最悪、脳症になって、後遺症を残しかねないんですけれども、そういう子供たちが結構日本にいるんですね。大体どういう時期かというと、ここにあるように1歳半ぐらいがそういう子供たちのピークなんですね。そういう子供たちがどのぐらいイオン飲料を飲んでいるかというと、大体1,000㎖から1,500という子供が45%、それから、1,500から2,000という子供も18%ということで、ほんとうに多飲なんですね。

イオン飲料水の多飲によるビタミンB1欠乏症 実態調査

それで、こういう多飲をするとどういうことが起こるかというと、ビタミンB1はもちろんイオン飲料水に入っていないからとれないし、離乳食が減るんですね。普通の食事がとれないということで、食事からの栄養摂取が減るのと、それから、イオン飲料水というのは、糖が入っていますので、糖の分解のためにビタミンB1が使用されますので、ビタミンB1欠乏症を起こす。それで、脳症になる危険性があるんですけれども、ここで問題は、イオン飲料水を飲むのは、実は健康にいいんだという考え方がお母さんにあるんですね。それは、多少テレビのコマーシャルも影響しているかもしれませんけれども、ともかく脱水予防には医者も勧めることがあるんですね。要するに脱水予防にはイオン飲料。それを飲んでいると健康にいいんだという考え方に、どうもお母さん方はなっているんですね。

お母さん方の意識を見てみても、「健康に良い」、「栄養が豊富」という考え方の方が結構いらっしゃるんですね。ですから、我々としてはイオン飲料水というのは、あくまで水分の補給と電解質の補給をするものであって、飲めない、水分摂取ができない、風邪を引いたとか、嘔吐や下痢をしたときの補充のためのものであって、ふだん飲めば、これで健康になるということは決してないんだということをお母さんに伝えないと、テレビのコマーシャルが悪いわけではないんですけれども、ともかくそういうイメージとして、子供はイオン飲料水を飲んでいればいいんだという考え方がどうもお母さんにあるというのが現状のようですので、こういう情報提供をしました。

イオン飲料水の多飲によるビタミンB1欠乏症 保護者調査