3.総合討論(3)

小林

「7カ月のお子さんが、豆腐を食べた後に二、三時間後に吐いてしまう。皮膚に症状は出ない」。ちょっとアレルギーが怪しいですね。受診を勧めます。吐くだけの症状の人います。中には味が嫌だという人もいるかもしれませんけれども、可能性がありますので、受診を勧めてください。特に体調がよいときに食べてもだめ。豆乳もだめと、いろいろだめですから、あやしいです。

「IgEは高いけれども、アレルギー症状が出ていない食物で、ある日、何らかの環境で突然重症なアレルギー症状が出るということはないのか」

例外というのは何でもありますが、非常に少ないです。先ほど言ったように、腸管が食べ物を受け入れる体制ができていますので、そうやって受け入れた体制が大きくなって破綻することは少ないと思います。たしかに、大人になって突然発症することがあります。これは、(前もって)気がつかないですね、症状がでるまで調べないですから。そういう方たちのIgEが高かったかどうかは、ちょっと僕もわかりません。

(このご質問は)「食物アレルギーになってしまうようなものがソファーや寝具以外に付着しているか」という意味ですか。よろしいですか。空中にも飛んでいます。目玉焼きをやれば、そこら中に飛びます。ですから、そんなことを気にし過ぎてはいけないということなんです。侵入してくる皮膚をよくすれば、別に飛んでいても大丈夫なわけですね。

「急速法でないから安全と言われていたが、朝ご飯摂取後に登園し、症状が出現したことがあった」。よくないですね。朝にはやらせない方がいいですよ。外出前にやってはいけないです。いろいろ事情があるんでしょうけれども、2時間は様子を見てほしいというのが正直なところ。最低でも1時間。夜帰ってくるのが遅いとか、事情があるんだと思いますが、そういう事情のある方に危険を伴うかもしれない経口免疫療法をやることは慎重であるべきです。安全性をちゃんと確保しながらやらなければいけないです。

それから、別に保育園で経口免疫療法をやる必要は全くありません。ちゃんとうちでやってください。保育園は病院ではないですから。「保育園でやってください」という申し出にオーケーを出してはいけません。ほんとうに困ってしまいますね。ちゃんと食物アレルギーのガイドラインをつくっていますし、それにのっとってやっていただければありがたい。食物負荷試験のガイドラインもあります。でも、世の中にルールを外れた方がいらっしゃるのは残念ですね。

今は基本的に病院の倫理委員会や医療安全委員会などに申請して、議論を経て、承諾を得る、そういう場合にしか経口免疫療法はやらない方がいいということになっております。もちろん、倫理委員会を通さなくても慎重にやっていらっしゃる方は多いですが、中にはルールから外れたことをやる方が一定数いらっしゃる。これもまた僕は申しわけないとしか言いようがないですね。

「アメリカから取り寄せた薬を飲んでから食事をしています。これは健康・発達から見てよいのでしょうか」。これは答えようがないですね。これをアドバイスした医師や医療関係の方に直接問い合わせていただいたほうがいいかと思います。

「大麦アレルギーが私の勤める保育園でも同じような状況で・・」、「指導表では大麦に関する表記が麦茶しかない」。これはちょっと誤解があると思います。あれは、小麦アレルギーがあるからといって、麦茶まで制限してしまう保育園がたくさん出ていたからなんですね。共通に反応する人はまれですし、抗原量も少ないので、小麦アレルギーの中で、大麦にも反応が出る方、しかも麦茶のようなごく少量でも症状の出る方だけ書いてください、そのためにある記載です。大麦でアレルギーがある場合は、管理指導表の左側の下に「その他1」とか、「その他2」とかあるんですけれども、そこに「大麦」と書いていただければ結構です。原因として頻度が少ないものがたくさんありますが、全部は表に書けないので、少ないものに関してはその他の欄に書きます。

「生後2カ月の産明けの保育施設と生後6カ月から預かる保育」ということですね。「離乳開始が入園後からとなる」。そうすると、家庭では離乳食をやっていなくて、保育園で離乳食を与えているということでしょうか。この場合、微妙ですね。本来は、うちで進めていっていただいて、安全なものを保育園で食べるのが筋です。保育園で初めて食べるというのは、僕はよくないと思っています。ですが、これはこういう施設だということで、それなりの責任を持ってやっていらっしゃるということだと思います。なかなか進まないからどうしようというのは、これはほんとうに親と交渉するしかないですよね。コミュニケーションですね。(状況は)わかります。なかなか医師が指示してもやっていただけないとかありまして、これは一定の割合でありますので、そのリスクは折り込んで、リスクマネジメントとして考えなければいけないのかなと思います。ちょっと変な返事で申しわけないんですけれども、なかなかこれは対応のしようがないですね。

「体の洗い方が足りていない人がいる。肌荒れも多く、アレルギーになっている子が多い感じ」、「肌を傷つけないよう、泡を体に塗るだけ、こすらずに子供の汚れが落とせるのか」、「顔は手で洗っても、汗をかきやすい場所はこすり洗いが必要ではないか。泥で汚れた子は、手の泡洗いだけで落ちるのか」

さあさあ、他にもいっぱい書いてあります。すみません、全部読むの大変。これは、ケース・バイ・ケースではないですかね。汚れがひどかったら、やはりこすらなければだめな場合があるでしょう。でも、原則皮膚のバリアを損傷しないようにする洗い方が一番いいです。これはアトピーや乾燥肌の人の場合は特にです。アトピーのひどい子は、石けんで洗うのは1日1回とか、2日に1回にしろと僕は指導していますが、普通の皮膚の子の場合は、通常のように洗ってもいいわけですね。汚れがひどかったら、洗ったほうがいいですし、思いっきり流してもいいです。

これは、大人でも一緒ですよ。私は敏感な肌だから、何とか社の何とかという石けんでないとだめなんだという方がいらっしゃいますよね。多分そういう方たちは、自分でこすったりはしないで、手で洗っていらっしゃいますね。その人、その人に合わせたやり方がいいと思うんですね。

結論から言いますと、汚れがひどい場合はしっかり洗っていただいて全然構いませんし、親にも、余り過剰にアトピーや肌荒れなどを心配し過ぎないように指導してもいいのではないかと思います。ただ、こすって洗った結果、皮膚が悪くなりましたとか、湿疹が出てしまいましたとか、そういった方は病院に行って指導を受けることをお勧めしますね。これもケース・バイ・ケースですね。柔軟に考えてください。ごしごし洗ったほうがいいという先入観に固執しない方がいいと思います。

エビ、カニは難しいですね。何が難しいかと言いますと、トロポミオシンというものがアレルギーの原因だとは言われているんですが、エビやカニの甲殻類のアレルゲン物質は、まだ完全にわかったとは言えないんですね。水に溶ける物質、水に溶けないような物質など、いろいろな物質が関係している可能性がある。だから、一概に言えないんです。えびせんは食べましたかとか、先ほどのシラスは大丈夫でしたかとか、経過を見て、患者さんに詳しく聞いて、ではここまではオーケーですというふうにせざるを得ないです。エビのエキスとかもありますが、食べたことなかったら、除去せざるを得ない場合もありますね。

では、保育園ではどうするべきか。多分エビがなくても栄養は大丈夫だと思いますので、保育園で無理に食べる必要はありませんから、保育園ではエビのエキスを除去してもいいでしょう。シラスの中に入っている小さいのは大丈夫なことが多いですけれども。無理のない対応ということをいいましたが、保育園でこれを不安に感じるということであれば除去する。そのかわり、うちでエビを食べさせてくださいねのほうがいいと思います。アレルギーが出る人はもちろん食べてはいけませんけれども、保育園では安全を第一に考える。

ただ、逆の出来事がありました。小麦アレルギーの方ですが、何かでアレルギーがある人は卵も牛乳も食べちゃだめなんて、すごく厳しくやっている保育園があったんですよ。小麦アレルギーがあるが、しょうゆはオーケーと(管理指導表には)書いたんですよ。書いているにもかかわらず、その子はずっと1歳まで保育園で塩味のおかゆしか食べさせてもらえなかった。こういうこともあるので、くれぐれも過剰な対応にならないように気をつけていただくといいですね。

それから、管理指導表。これは、医師側も、もちろん受け取る保育園側も、親も、きちんとみんなが協力してやらなければいけないことです。医師も正確に書かなければいけないです。例えば、ピーナッツアレルギーで、ピーナッツは五、六粒食べていますという人もいるわけですよね。そういう方の場合でも、今、五、六粒食べて、目標10粒ですから、そこまで行ったら解除しますみたいなことを伝えて、より具体的な指示をする。今のところは除去しておいて、半年、1年後にはオーケーかもということを管理指導表の備考欄に書くことにしています。例えば、ピーナッツ五、六粒食べていれば、ほぼ大丈夫なんですけれども、まだ不安がある、もう少し時間を見たいというような場合は、次の管理指導表を書くときには解除予定ですとか、そういうような具体的な指示を書くように心がけています。先ほど、もっと具体的な指示が欲しいという要望もありましたけれども、もちろん医師は具体的な指示を書くべきだと思います。