2.食物アレルギーの考え方…制限食をやめましょう…(14)

これは、もう皆さん、ご存じだと思いますけれども、こういう微量しか入っていないものに関しては、ほんとうに症状がそれで出るという場合だけ記載が必要です。実際、ほとんどないんですね。卵のアレルギーのある人で、卵殻カルシウムで症状が出る人は、僕は今のところ、1人も見たことがありません。牛乳の乳糖はたまにあります。小麦のしょうゆも、まずないですね。麦茶は、そもそも大麦ですね。まれな場合を除いて出ません。そういうことで、こういう除去しなくていいものに関しては、必要な場合だけ書くということになっています。

注意喚起表示というものがあります。工場でつくっていますよ、同じラインや、別のラインだけれども同じ建物でつくっていますよという表示です。多くの場合、気にする必要はありません。同じ工場内でつくったけれどもアレルギーが起きるというのは、まれなことです。ただ、ものすごく敏感な人がいますから、ほんのわずかな牛乳とかで出るような人では、もしかしたら問題になるかもしれない。そういう場合は、医師は、この人は重症ですということをちゃんと書かなければいけないですね。そういう最重症の人でなければ、通常コンタミは大丈夫です。もちろん、総菜で同じ鍋で調理したとかはだめですね。微量なコンタミではありません。いずれにせよ、過剰な除去には注意が必要です。

また、牛乳、卵アレルギーがあるからといって、牛肉や鶏肉を除去する必要はありません。ナッツはそれぞれ違います。ピスタチオとカシューナッツは似ているそうですが、そういう例外を除きましてそれぞれ別です。小麦・大豆アレルギーでしょうゆやお酢などを除去する必要はほぼありません。ほんとうにいろいろありますね。

さあ、誤食事故を予防するにはどうしたらいいか。完全除去が基本です。できるだけシンプルにしましょう。でも、生はまだ保育園で食べさせていることはないだろうから、加熱卵ぐらいは対応していただくとありがたいけれども、重症者に無理な対応をしないことが大事です。微量でも症状が出る人や食器や油が共用できないような人、先ほどの工場内コンタミでも症状が出るような人は、無理ですよ、給食を提供しないでお弁当で、というのもやむを得ないのではないでしょうか。

ダブルチェック、ラベリングも重要です。ラベリングというのは、食器の色を変えるとか、はっきりわかるようにすることです。板橋区の学校は、お皿の色を全部変えてくれました。個別対応に関してですが、たとえば「うちの子は1グラムまで食べられるから食べさせてください。」・・これも無理ですね。絶対ミスが出ます。書類もできるだけシンプルにいきましょう。

でも、事故は起こってほしくないですね。皆さん、年間にアナフィラキシーで、大人も含めて日本全国で何人亡くなっているかご存じですか。これ、意外に皆さん知らないです。岡先生はコロナウイルス騒ぎよりも、インフルエンザのほうがよっぽど怖いとおっしゃいましたけれども、それと同じです。交通事故では何千人も亡くなっていますよね。でも、大人も含めて、アナフィラキシーで亡くなっているのは年間3名から5名なんですね。非常に少ないんです。起こってほしくはないですが、過剰に怖がるのも行き過ぎかもしれません。とはいえ、迅速な行動はしていただきたい。ある一定の確率で事故は起きます。「Nobody’s perfect」と、よく英語で言う表現ですが、誰も完璧ではありません。

ダブルチェックしましょう。「多分」、「だろう」という見込みでは行動しない。「この子は、たしか小麦大丈夫だったよな」ではなくて、管理指導表をもう一回見る。ラベリングする。アナフィラキシーの37%は、学校で初めて発生する。ちょっとこれも怖いデータですね。