2.食物アレルギーの考え方…制限食をやめましょう…(15)

これも大事ですが、もし失敗したとしても、失敗を生かすことです。僕は、誤食事故のことを、別の言葉で呼んでいます。「予想外負荷試験」、もしくは「予定外負荷試験」。予定していなかったけれども、一種の負荷試験になってしまったと。不謹慎かもしれませんが、これは冗談ではなくてほんとうにそう思っています。なぜか。そこからとても貴重な情報が得られるからです。もしかしたら、よくなっているかもしれません。いや、まだまだよくなっていないかもしれません。そういうことがわかります。失敗を生かすということが大事でして、事故があっても、その事故を過剰に責めるのではなくて、そこから何かプラスのものを引き出してくるのが、僕はいいかなと思っています。もちろん、保護者との良好なコミュニケーションが前提です。

こうやって保護者、学校、医師、みんなで協力して治しましょう。

学童保育の質問がありましたので、ちょっとつけ足しますけれども、学童保育も、文部科学省の「学校給食における食物アレルギーの対応指針2017年」に書かれております。板橋区はもうそれをやっていますけれども、情報は学校と共有していいですよ、関係機関と協議してください、研修会にも参加してくださいということです。だんだん改善されてきているかなと思います。

これは、校長先生の名前を出したいくらい非常に熱心な学校の話です。成増のある小学校と言っておきます。板橋区は非常に緊密に連携ができている区だと思います。一人の小麦アレルギーの児童が、ある時期から急に学校でじんま疹が出るようになったが、原因がわからなかったんです。おかしい、いつも食後だ。しかも、大体同じ時間。校長と医師が面談しました。この先生の熱心なところは、お忙しいのに私とちゃんと話をしに来てくれたことです。手には献立表を持ってきて、「先生、どうですか」と。全部見てみたら、小麦が原因となっていないんですね。あるときじんま疹が起こって、いきなり電話がかかってきました。「小林先生、こういう症状ですけど、どうしたらいいですか。エピペンはどうですか」。非常に的確に症状を説明してくださいましたので、「まだ必要ないですね。エピペン、横に置いて待ってください。もう一段症状が強くなったら打ってください」ということで、うまくいきました。

それで、献立表をもう一回確認したんですね。そうしたら、びっくりです。押し麦、米粒麦というものが出ているときに起こっていました。押し麦が大麦、米粒麦が大麦と知らなかったんですけれども、みなさんはご存じでしたか?麦ご飯として出ていた日に、じんま疹が出ていることがわかりました。以降、大麦を除去して、全く症状が出なくなったんですね。これは、学校と医療機関が連携してうまくいった例です。こういうふうに一緒に治す、一緒に対処するということができれば、理想的かなと思っています。決してお互い対立するものではありません。

クレーマーの方がいらっしゃるということを聞くことがあります。心配のあまりでやむを得ないとは思いますが、非常に強い対応をしてこられる保護者の方もいらして、僕らも困ることがあります。しかしながら、一般的にはこういう協力体制をとったほうがいいのではないかなと思っています。