1.新しい授乳・離乳食の考え方…「授乳・離乳の支援ガイド」2019年改訂版から…(8)
まず最初は、母乳栄養の話ですけれども、もちろん母乳栄養にはいろいろな利点がある。子供にもお母さんにもあるということで、これは、もちろんこのガイドの根本的な方針なんです。
ただ、母乳栄養に関して言えば、ここにありますように、母乳栄養がいいのはいいんだけれども、母乳栄養でなければ子供の健康に大きな影響を及ぼすかというと、そうではない。要するに少し人工乳を飲ませたら、それは子供の健康を大きく害するという考え方に近いようなことも言われますので、そうではない。母乳栄養がいいのは、もちろんそうなんだけれども、母乳栄養をできない場合でも、それなりにサポートすることができるし、母乳栄養の利点というのは、ほんとうにいろいろ出ていますけれども、では、絶対的かというと、そうではありませんということを、今回このガイドに書き入れることにしました。
それが、どうしてそういう表現を使ったかというと、いろいろ我々が調べたところ、母乳栄養に関する論文が出ていまして、その辺を整理すると、先ほども言いましたように母乳栄養はいろいろな利点がありますけれども、1つは母乳栄養の子供と混合栄養の子供を6歳まで見たようなデータもあって、そういうものを見ると、確かに利点もあるんですけれども、その差というのはほんとうに少ないというか、もちろん母乳がいいんだけれども、その差というのは圧倒的な差ではないというのが多くの論文でありましたので、母乳栄養の利点は限定的だ。
それから、肥満や2型糖尿病も母乳栄養の子供のほうが確かに少ないというデータは多いんですけれども、これも決定的かというと、その差が人生を大きく左右するほどの差ではない。それから、母乳栄養のほうがアレルギー疾患も少ないと言われていたんですけれども、その差も少なくて、これを決定的な差と言うには、ちょっと強調し過ぎかなという論文がいろいろありましたので、先ほどのような表現になったというのが1つの今回の改定になります。