妊婦自身は喫煙しなくても、家庭や職場で受動喫煙の被害を受けるケースは少なくありません。妊婦の受動喫煙が胎児に及ぼす悪影響は、妊婦自身の喫煙による悪影響と基本的には同質で、その程度が軽くなったものと考えることができます。
妊婦が受動喫煙させられた際に、タバコの煙の有害物質がどの程度妊婦の体内に入り、胎盤を通ってどの程度胎児の体内に流入するかによって、胎児が受ける障害の程度が決まります。様々な研究の結果、受動喫煙させられた妊婦の体内に流入する有害物質の量は、妊婦自身が喫煙した場合に比べて、一酸化炭素では3分の1程度、ニコチンでは3分の1〜5分の1程度と推定されています。これらのデータから、妊婦の受動喫煙によっても胎児に健康被害が及ぶ危険性が高いことが推測されます。
実際に、妊婦の受動喫煙によって子宮内発育不全や低出生体重児の割合は20〜90%増加し、出生体重は20〜200g減少すると報告されています。この程度の体重減少は、リスクの低い新生児に対してはほとんど悪影響がないと考えられますが、リスクを抱えた新生児ではリスクがますます高まり、本来予防できたはずの新生児死亡や精神発達遅滞、脳性マヒなどを多数発生させる原因となっているのです。