海老澤いままで、かなり専門的なご質問に対してお答えしてきたので、皆さんちょっとお疲れかなと思うので、馬鹿馬鹿しいご質問にお答えしようかなと思います(笑)。
馬鹿馬鹿しいと言うと申し訳ないですが、「牛乳は牛が飲むもの、人間は母乳。よって、一生牛乳は飲ませなくていいというお医者様の診断があり、除去していますが」(笑)。
確かにそういう先生がいるんです。私は今度2月に、日本酪農乳業協会(Jミルク)というところに頼まれて、マスコミ向けに食物アレルギー、特に牛乳アレルギーの話をします。そのJミルクから、そういう先生がいて困っているんだというお話を聞いています。
これは、じゃあ牛肉食べないの? 豚肉食べないの? ということと同じような話になってくると思うんですね。プリオンとかが怖いから牛肉を食べないとか、一時期、そういうこともありましたけれども、基本的には、私たちのバランスのいい食生活のために、牛乳というのはカルシウムを摂るソースとしては非常にいいソースです。さっき伊藤先生からもお話がありましたけれども、お子さんを育てていく上で人工栄養としても牛乳由来の蛋白でつくっていくわけですし、こういう偏った……、前川先生を初めとして、私たち標準的な小児科医からすると、ちょっとどうかなあという先生ですね(笑)。だから、こういう意見にはあまり耳を傾けなくていい。そういった意味で馬鹿馬鹿しいと申し上げたわけです。
またちょっと、頭がやわらかくなるようなお話を。「免疫力を鍛えるにはどのように気をつけるべきか知りたいです」というご質問をいただきましたけれども、免疫力というのは漠然とした話ですよね。普通に暮らしていれば、何にも意識しなくても私たちの体というのは免疫が働いています。もし私たちが死に絶えてしまうと、たちどころに腐ります。私たちは生きているから、自分たちの体をこうやって維持できているわけで、それが免疫なのです。だから、免疫力を鍛えると言われてもちょっと答えに窮してしまうんですね。通常、普通に暮らしている人は、免疫は何もしなくてもきちんと働いています。
ただ、アレルギーを予防したいんだけど、何かいい方法はないかなというのは、誰も考えますよね。ヨーグルトをたくさん食べたらひょっとして予防できないかななんて、そういう考え方をする人もいますけれども、発症してしまったものに関しては無理だろうと言われています。発症する前にそういうことをすると、若干効果があるのではないかという話はあります。
でも、腸内細菌叢にいい菌を植えつけるというのはすごく難しくて、それを維持していくのはすごく大変なんですね。だから、「免疫力」というのを広くとらえた上で考えるに、私としては、バランスのいい食生活をして、あまりストレスを感じないで気楽に生きていくというのが、一番免疫力が強まるのではないかと思いますけれども、そんなところでしょうか。
次は、「食物アレルギーが増えています、なぜですか」という話です。これは私たち専門家もわからないです。正確には答えられなくて、大気汚染とか、CO2が増えてきたり、全地球的に環境が変わってきていると、「何が?」と言われても困るんです。食物アレルギーの多い国というのは日本を初め先進国です。先進国は衛生的にすごくきれいです。さっき前川先生からお話がありましたね。例えばインドの奥地とか、牛糞まみれで暮らしているような所に行くと、確かに食物アレルギーというのはほとんどないです。逆に、感染症のほうが深刻な問題です。そういうことで衛生仮説という話が出てくるわけです。でも、私たちがいまさら牛糞にまみれて生活できます?(笑)。できないですよね。現代人のライフスタイルの中でいかにうまくつき合っていくか、ということだと思うんです。だから、普通にやっていってもらいたいなというふうに思います。
それから妊娠中は、さっき前川先生から「除去は推奨しない」という話でしたけれども、「授乳中は」どうかという話です。何にも症状がなかったら、授乳中、全く普通にしていていいですよ。予防的な除去というのはあり得ないと言ったのは、そこも含んでいます。症状がなかったら何もしなくていいです。ストレスをかけるとよくないじゃないですか。妊娠中とか授乳中というのはお母さんは忙しくて、体もいろんなホルモンの影響を受けて大変なのに、そこにさらに余計なストレスをかけますか? 食べたいものを食べていいじゃないですか。そういう考え方でいいと思います。
あと、「ゼロ歳、1歳はしゃべることができなくて、なぜか好き嫌いがあって、それが直感的に食物アレルギーになっているのではないか」というご質問をいただいていますが、基本的にそういうことはないですよね。例えばアレルギーがあって、食べないでいると、だんだん卵とか牛乳のにおいが鼻について嫌だとか、そういうことは二次的に発生してきます。それから、嫌いだということと、たまたまその食物アレルギーが一致することはあるけれども、それが普遍的なことだというふうに考えて、それがすべて食物アレルギーだと考えていったら大変ですよね。だから、その辺は冷静に対応してほしいと思います。
まだまだたくさんご質問をいただいていますけれども、これからは伊藤先生と交互に答えていきましょうかね。先生、何かありますか。