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財団法人母子健康協会 第30回シンポジウム 「保育における食物アレルギーの考え方と対応」
4.総合討論(20)

質疑応答

―アレルギーの遺伝は、きょうだいであるとか、親子であるとか、どのくらいあるのでしょうか。

伊藤統計学的には確実にあります。例えば、ご両親に何らかのアレルギー疾患がある子どもさんは、アトピーにしろ喘息にしろ、統計的には明らかに発症率が高いです。きょうだい誰を見渡しても、一人もアレルギーらしい人がいませんという子どもさんですと、その次に生まれた赤ちゃんがアレルギーになる可能性は10%ちょっとぐらいですので、統計的には明らかに関係があります。一卵性双生児と二卵性双生児と普通のきょうだいは、一致率は明らかに違いがありますから、遺伝要因は確実にあります。

ただ、もう一方で考えていただきたいのは、例えば大学生の20歳前後の年代の方全員に血液検査をしたとしたら、ダニとかスギの花粉のIgE抗体が陽性になる確率は8割を超えます。調べれば、90%ぐらいはIgE抗体を持っているという結果が出ます。つまり、アレルギーになりやすい原因というのは日本人誰でもあって当たり前ということです。

なぜそんな話をするかというと、大概、お母さん方がすごく後悔をしているんですね。私がアトピーだったから子どもにいったんじゃないかと、過剰に後悔されることがあるので、「でも、それは誰にでもあり得ることだ」というふうに必ずお話しするようにしています。

家族誰を見渡してもアレルギーらしい病気を持った家族は全くいません、という子どものほうが少ないです。そういう子どもは4割ぐらいしかいないと思います。遺伝は確実にありますけれども、絶対的なものではないということです。

前川目からウロコだと思いますけれども、時間が来ましたので、総合討論を終わらせていただきます。どうでしたか、皆様。1時間半、長かったですか、短かったですか。きょう出ました問題は、恐らくヒントはあっても、きょうの討論だけでは解決しないことがほとんどだと思います。きょうの内容は、今年の6月にインターネットに出て、秋に『ふたば』に載るそうです。ぜひそれを読んで勉強してください。

いま、世の中は食物アレルギーで大きく動いています。というのは、海老澤先生が関係した、保育園・幼稚園でのガイドラインみたいなものができますと、それがもとになっていろいろな人の考えが換わってくると思います。ですから、3年後、4年後、5年後には、世の中じゅうの認識が一つの良い方向に行って、それが子どもたちの幸せにつながるのではないかと思います。そういう意味で、きょうのシンポジウムは現代における考え方の一つの方針となったのではないかと思います。

最後に、きょうはお忙しいところを講演を快くお引き受け頂き、ディスカッションに熱心に参加して本音のことをお話し戴いた2人の講師の先生に、心からお礼申し上げます。どうぞ、盛大な拍手をしてください。(拍手)ありがとうございました。
〔閉会〕

講師紹介

前川 喜平(まえかわ きへい)
東京慈恵会医科大学名誉教授
東京慈恵会医科大学卒業後、同大小児科教授を経て現職。
1996年より(財)母子健康協会主催 シンポジウム 統括を務める、同協会理事。
日本小児保健学会理事、日本小児科学会理事、日本小児神経学会理事等。
主な著書に 「小児神経と発達の診かた」(新興医学出版社)、「乳児検診の神経学的チェック法」(南山堂)、「小児の神経と発達の診かた」(新興医学出版社)など。
海老澤 元宏(えびさわ もとひろ)
国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部長
1985年東京慈恵会医科大学卒業後、国立小児病院アレルギー科レジデント、ジョンス・ホプキンス大学ポストドクトラルフェローシップ、国立相模原病院小児科医長を経て2001年より現職。
World Allergy Organization(理事)、アメリカアレルギー学会アジア太平洋地区責任者・学術大会委員、日本小児アレルギー学会(理事)、食物アレルギー研究会(会長)、日本アレルギー学会(代議員・啓発活動部会長)、日本小児科学会(代議員)。
アレルギー物質を含む食品表示、学校でのアレルギー対策等の国の施策に関与。
主な著書に「子どものアレルギーがすべて分かる本(講談社)」、「子供が喜ぶ 食物アレルギーレシピ100(成美堂出版)」、「小児科臨床ピクシス5 年代別アレルギー疾患への対応(中山書店)」、「小児アレルギーシリーズ 食物アレルギー(診断と治療社)」 など。
伊藤 浩明(いとう こうめい)
あいち小児保健医療総合センター中央検査部長兼アレルギー科医長
1986年名古屋大学医学部卒業。名古屋大学大学院、テキサス大学ガルベストン校に留学などを経て、2001年よりあいち小児保健医療総合センターアレルギー科医長。2008年より中央検査部長兼務。
日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会指導医。NPO法人アレルギーネットワーク副理事長、認定NPO法人アレルギー支援ネットワーク副理事長。
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