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財団法人母子健康協会 第30回シンポジウム 「保育における食物アレルギーの考え方と対応」
4.総合討論(3)

伊藤では、しばらくマイクを引き継ぎます。

いまのお話の少し補足です。どこまで具体的なラインで対応するか、どこまで医者の指示を仰ぐか、そういう問題ですけれども、実は現在、愛知県の教育委員会が「学校給食の対応の手引き」というのをつくっていまして、ちょうどでき上がったところなんです。私はその制作委員に入れてもらっていて、言いたい放題言って、大体イメージしたようなものができたつもりでいます。重たいので、これを愛知県の各市町村に周知させて実施されるのは、恐らく1年先だと思います。

その中で何を決めたかといいますと、医者の診断書は、学校関係は学校生活管理指導表というもので、私たちから言ったら簡単な書式なんです。卵アレルギー「あり・なし」と書くだけです。小麦アレルギーも「あり・なし」です。診断の根拠は、1、実際に症状があったか、2、負荷試験をやったか、3、血液検査は陽性だったか。1番、2番、3番のどれか、診断の根拠だけ挙げてくださいと。医者に求めている内容はそれだけです。それすら書けないと言われる先生がいっぱい出てきます、たくさんの食品について「その診断の根拠を書きなさい」というふうになっていますから。一般の先生方からはそんなことまで書けないと猛反発ですが、私たちから言うと、「何でそれぐらいのこと?」というぐらいなんです。

それはともかくとして、医者の診断書としてはそれだけです。そのかわり保護者の方には、実際にどんなものを食べて、どんな症状を起こした経験があるかということと、実際に家庭で何を食べさせているか、何を意識して除去しているか、具体的な情報を申告してもらうという二本立てです。あくまでも申告です。そして、何を対応してくださいという希望を保護者は述べますけれども、教育委員会を含めて、あくまでも学校側が主体的に対応レベルを決めます。そういうような構造につくりました。

それは、たくさんの方に同時に対応しなければいけないので、個別対応が保育園ほどきめこまやかにできない。ましてや給食センターになりますと、一度に一万食をつくったりするわけですね。一万食の中で百食ぐらい、アレルギー対応をしろというような業務になってきますから、そういう業務でも耐えられるような−−それでも本当に対応の必要な人たちには、できる範囲で対応してあげたいということを実現するための仕組みです。

もう一つ、ご参考になるかどうかわかりませんけれども、私たちの病院の中での給食の対応は現在どうしているか。病院の給食というのはさらに大変です。ある日突然、患者が入院します。例えば、「卵と牛乳と小麦のアレルギーの子がいまから入院してくるから、昼ご飯から出してください」と、突然、僕が朝の10時に給食室に電話するわけです。そして献立をつくって、2、3日、一生懸命対応したら、「もう退院したから要らなくなりました」と、また電話1本で終わってしまう。そのほか、いろいろなものに常に構えていなければいけないという条件です。しかも、1日3食です。その中でちゃんと栄養を満たさなければいけないという条件を突きつけられますから、おのずと個別対応には限界があります。

どういう指示系統にしているかというと、卵、牛乳、小麦、大豆の4品目に関しては、それでも2段階のレベルを持っていて、完全除去というレベルと除去です。要するに大きなものだけ出さなければいい。玉子焼きとか、いかにも卵料理は出さない。だけど、ビスケットは出していい。大ざっぱな2段階の基準にしていきます。除去の対応で危ない人は完全除去というふうに、あまり中間を置かないことにしています。

これは、保育園でもそういう2段階、「持つか、持たないか」ということを検討されたらいいと思います。3段階、4段階にしないほうがいいと思います。途中でもちょっと言ったかもしれませんが、外から何か加工品を納入するとき−−カマボコを納入するときには卵白を含まないこととか、仮に業者から冷凍のハンバーグを買い込むときには、つなぎに卵を使っていないこととか、フライの衣のつなぎに卵を使っていないこととか、これは結構、業者はできます。

そういう条件で加工品を納入されたら、あとは料理の過程で、卵を割って入れるか、入れないかというだけで、除去か除去ではないかという対応ができるわけです。名古屋市の学校給食は実はそれをやっています。卵、牛乳の除去対応ということを意外と簡単にやっています。コストは増えないです。そうすれば、細かい、どのレベルで食べさせていいでしょうかという悩みはほとんどなくなります。そして、必要な人に確実な除去食が提供できるということになりますので、そういう体制を整えることは大事なことかなというふうに思っています。

さて、やはり食品ごとの知識が必要で、この食品についてはどう考えたらいいかというご質問を幾つかいただいていますので、その各論についてお話ししたいと思います。

実は、いまからお答えする内容は、食物アレルギー研究会のホームページから「食物アレルギーの栄養指導の手引き」を見ていただくと、その中にかなりポイントを突いた内容が書かれていますので、それを参照していただいたら間違いないのではないかと思います。

何を考えるかというと、2点あります。1つは、アレルゲンは蛋白質であるという一番基本のことを、素直に考えているということです。蛋白質としてどれだけの量を摂っているかということを考える。当たり前なんですけれども、これが第1です。

第2に考えるのは、その蛋白質が加熱したり、調理したり、加工されたりということで、蛋白質が壊れてアレルゲン性が落ちている場面があります。そのアレルゲン性が落ちているという条件をどのぐらい考えるか。

この2点を考えます。

では、蛋白質がどれだけ含まれているかということを考える一つの例をお話しします。例えば牛乳を飲みますね。牛乳の中に蛋白質が何%入っているか、ご存じですか。3.3%です。もうほとんどの牛乳は決まっています。牛乳100tを飲むと3.3グラムの牛乳蛋白を摂ることになります。ヨーグルトはどれぐらい入っているか。実はほとんど同じです。希釈して飲むヨーグルトではなくて普通の固まったヨーグルトです。プレーンヨーグルトはほとんど同じ、3.3〜3.4%です。

牛乳に関しては、発酵するとか、何か加工することによって、アレルゲン性というのはあまり変わらないという特徴があります。加熱をしても大きくは変わらない。カゼインという蛋白質がもともと固い立体構造をとらなくて、沸かしても何してもカゼインはカゼインのまま残りまして、それが一番強いアレルゲン活性を持っているから、大きくは変わらないんです。だから、加熱した料理であっても、生で飲んでもいい。あるいは、牛乳は沸かして飲んだらいいですと言う人がいますが、これはアレルギー的には誤解に近いと思います。あまり変わらないのです。

じゃあ、バターだったら何グラム使いますか。皆さん、バター5グラム入っていると、牛乳を5cc飲んだような気がするでしょう? 全然違いますよね。バターというのはほとんど油の固まりで、蛋白質含有量は0.6%、牛乳の5分の1です。だから、牛乳10cc飲めるということがわかっていたら、バター50グラム食べられるんです。ということは、牛乳をちょっと飲める人だったら、挑戦するとしたら、トーストにバターを塗って食べてもほとんど平気です。そのぐらいの換算になります。

気をつけなければいけないことは、パンの中に脱脂粉乳が混じります。脱脂粉乳が5%入っていると表示されている場合は、脱脂粉乳というのは粉ですから、10倍濃縮されています。蛋白含有量は10倍多いです。脱脂粉乳が5グラム入っていたら、牛乳50グラムを飲むのと同じ換算をしなければいけない。「蛋白質として考えましょう」というのは、そういう意味です。

もうちょっと多いところを言うと、うどんは蛋白質2.6%です。スパゲティを食べると、ちょうどその倍の濃度があります。うどん100グラム食べるのと、スパゲティ50グラム食べるのが同じぐらいの小麦蛋白の負荷になります。

これは全部、食品成分表の知識です。食品成分表を開いていただくとこんなことが全部書いてあります。もちろん代表的なものですので、それぞれの商品によって、うどんだって、コシの強いのとやわらかいのでは蛋白含有量は違うでしょう。商品ごとにあまり厳密に計算しないほうがいいのですが、大枠ではそんなふうに計算することができるというふうに考えてください。

そうすると、牛乳は飲めるけれども、チーズを食べてじんましんが出た。どうしてだろう、チーズのほうがアレルゲン性が強いのだろうかとよく質問されますが、そんなことはないです。チーズというのは、たくさん食べたつもりじゃないのに25グラムぐらい平気で食べますよね。チーズ25グラム食べたら、牛乳100cc以上飲んだことに該当します。だから、出て当たり前なんです。蛋白量としてアレルゲンを考えるということを少し頭の中で動かしていただくと、理解できる現象というのがたくさんあります。

ですから、牛乳の負荷試験は何を使いますかというご質問をいただいていますが、私たちは牛乳そのものでやります。しかも、生の牛乳でやります。沸かしてもたぶん変わらないと思っていますし、ヨーグルトを使っても恐らく変わらないだろうと思っています。

それから、ご質問の中に、乳化剤にどう対応したらいいでしょうか、これはよく聞かれます。あえて言いますが、患者さんたちにも教えてあげなければ100%間違えます。乳化剤の「乳」という字がついているので、牛乳だろうと皆さん誤解してしまうのですが、全く関係のない「乳化」という言葉です。

乳化というのは何かというと、水と油を混ぜ合わせて牛乳のように白く濁らせることです。そのための添加物ですから、ほとんどは大豆由来のレシチンというものが乳化剤として使われています。牛乳とは全く縁のない言葉です。ごく稀に、卵黄由来のレシチンが乳化剤として使われる場合があります。これは、必ずどこかに「卵を含む」という表示がされなければいけないというのが法的な決まりです。乳化剤は牛乳とは関係のない言葉です。乳酸というのもそうです。乳酸カルシウムとか、こういうものです。

乳糖のことは先ほど海老澤先生が言われたとおりです。乳糖の除去が必要な牛乳アレルギーの方というのは、超重症の、私たちが100人、200人診ている牛乳アレルギーの中の一、二を争う方に、乳糖3グラム飲ませるとポツッとじんましんが出ます。そのぐらいです。事実上、除去の対象にはしていないです。

ですから、牛乳をどこまで除去するかと考えた場合には、牛乳蛋白がどのくらい含まれているかということを考えていただいたらいいです。

卵はそれに比べると大きく違います。加熱することによって圧倒的にアレルゲン性が落ちます。例えば、ゆで卵1個を平気で食べられる子どもさんが、生卵を箸の先につけてなめただけでじんましんが出ます。ゆで卵と生卵はそれぐらいの差があります。

アレルゲン性が何で落ちるかというと、温度の高さと加熱された時間の長さを掛け算して考えたらいいというくらいの関係で落ちますから、例えば、半熟卵と固ゆで卵でも違いますし、普通の12分固ゆで卵と、1時間ゆでた卵とは随分反応性は違います。

私たちが患者さんたちに順番に解除の指示をするときには、例えば「おでんの卵だったら食べられるよ」という指導をすることもあります。おでんというのは、固ゆで卵をつくってからさらに鍋に入れて長い時間煮込みますね。コンビニでも、店頭で何時間も高温の中に置かれています。それだけでアレルゲン性はずっと落ちるんです。

それを、例えばわざわざ1時間、ゆで卵をつくって食べている。私は、ガス代がもったいないのであまりそういう指導をしませんけれども(笑)、そういうふうに指導を受けてやられている方もいます。でも、普通のゆで卵を食べると失敗したりするというのは、そんな関係があります。

ただ、そう考えていただくと、フライの衣は油と接したところにありますので、温度180度までいきます。かなりアレルゲン性は落ちます。ですから、解除を勧めるときにはそういうものから順番に解除が進んでいくことになります。

ですから、ゆで卵をしっかり食べることができても、スクランブルエッグとかはちょっと生でやわらかい部分が残りますから難しいし、卵スープというのは、どうしても溶き卵を入れてから20分も煮込んだりできないですよね。だから、給食の中ではどうしても最後まで食べにくい。あとは親子丼ですね。親子丼と卵スープが食べられたら、給食は全部食べられるというふうに考えています。

大豆と小麦に関して、味噌、醤油は先ほどのお話のとおりです。しっかり発酵してあれば圧倒的にアレルゲン性は落ちます。これは、蛋白質がどんどん発酵するときの菌の関係で、アミノ酸レベルまで分解されてしまいます。これは食品科学の方がしっかり証明していますので、発酵期間の長い味噌、醤油はまず大丈夫です。中に、豆味噌とか、豆の粒が残っている比較的発酵期間の短いものは、そこまで完全にいけているかというのはちょっとわからない。商品によって違いがあるかもしれません。

大豆アレルギーというのは実は非常に難しくて、どんなものにどう反応するのかというのがばらばらです。基本的には蛋白質が反応します。昔は根本的な誤解がありまして、大豆油は抗原性が強いといって油の除去を先にさせるというのが、20年前の食物アレルギーをやっていた方たちの意見でした。それはアレルギー的には完全に間違いです。

その当時の先生が何を観察したかというと、スナック菓子とか油物をたくさん食べると湿疹の調子が悪くなる。これは一般的にそうなんですね。おやつのスナック菓子ばかりを食べて、ちょっと肥満気味で、湿疹の悪い子というのがいます。そういう子どもたちに、油を食べ過ぎてはいけないと。あるいは、スナック菓子で酸化してちょっと傷んだりしていると、やはり炎症に影響があります。そういうことを大豆アレルギーだというふうに解釈していたのではないかと、私は思っています。

ですから、その当時は、大豆成分を全く含まない保証つきの油みたいなものが高い値段で売られたりしていましたが、これはアレルギー的に間違いだということがわかって、そんな商品はほとんど姿を消しました。ですから、「大豆油を除去してください」という指示が出たときには、これは20年前の知識だなと思ってもらったほうがいいです。基本的には蛋白質だと思いますけれども、それでも大豆についてはちょっと難しいです。非常に個別性があって、どこまで食べられるか、本当に個別で決めたりしています。

ただ、そこの細かいところは、例えば豆腐は食べさせないけど揚げだけは食べていいとか、そういうふうに考えていくとなかなか判断が難しいと思いますので、大ざっぱにどこかで線を引くことが必要かなと思います。家庭で十分食べて平気かどうか、やはりそこを基本にされるべきではないかと思います。

小麦に関しては、クッキーのように焼いても、どんな加工をしても、アレルゲン性は落ちません。生で小麦を食べることはあり得ないからそれはいいとして、パンでも、うどんでも、小麦は小麦です。

たまに間違うのが、「米パンですから大丈夫です」といいますが、米パンの中に、グルテン(小麦のグルテン)で膨らませているものがあって、これは完全にアレルゲン性が強い商品です。普通のお店で米パンとして売っているものを食べて失敗するという、これは初歩的な問題ですけれども、これは注意されたほうがいいです。

それから、甲殻類とゴマのご質問がありました。どちらも、本当にアレルギーを起こす人にはすごく強いアレルギーを起こしますので、アレルギーとわかっている人は完全除去です。あまり途中の妥協点はなくていいと思います。

ただ、抗体は陽性とか、親がエビアレルギーだからというだけで、子どもの除去というのは基本的に正しくないです。親が何アレルギーがあるかということで、子どもが同じアレルギーになるという遺伝の仕方はしないのです。全体的なアレルギー体質は遺伝しても、抗原特異性というのは遺伝しないですから、それはそれ、子どもは子どもで単独に診断して、アレルギーの危険があるものは完全除去。あまり段階は考えられなくていいと思っています。以上です。

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