伊藤同じような話で、アレルギーを予防するためですか、「動物性蛋白を一切、離乳食から食べさせていませんでしたが、大豆をしっかり食べていたら大豆アレルギーになってしまいました」(笑)という話です。もともと親御さんもベジタリアンなんでしょうか。
蛋白質というのは、栄養的に言うとアミノ酸のバランスというのが必要で、植物性の蛋白質はどうしてもアミノ酸バランスで落ちるところがあるんです。食べているようでも身になっていかない部分がどうしても残ります。100グラム食べても7割ぐらいしか使われないとか、そういう欠点があります。
動物性蛋白はそのバランスが非常によくて、特に肉というのは、海老澤先生も言われましたよね。肉、筋肉そのものは実はアレルギーになる要素がほとんどないんです。なぜかというと、牛の筋肉とか、鶏の筋肉の、筋肉の細胞のアミノ酸の配列とかDNAは全部わかっていますが、ほとんど100%ぴったり近いぐらい、人間の筋肉と同じなんです。極端な話を言うと、筋肉のここが壊れてしまって、筋肉を全部とって豚肉の足の筋肉をここに移植したらそのまま生着してしまうぐらい、豚肉の筋肉と人間の筋肉はほとんど同じアミノ酸構造をしています。だから異物ではなくて、アレルギーにならないんです。
じゃあ、肉は何がアレルギーになるかというと、肉の中の血液の成分は、人間の血液の成分と60%くらいの相同性で、少し違いがあるために、「肉アレルギーです」という人は何に反応しているかというと、肉の中の血液に反応しているわけです。動物であればあるほど人間に近い構造をしていますから、逆にアレルギーになりにくいのです。
何となく日本人というのは、昔の日本の伝統で、お豆腐食べて白身魚食べて、それから肉に行きますね。それが日本人の習慣に合っているからと言われますけれども、アレルギーだけを考えたら、実はいきなり肉を食べたほうがずっと安全なんです。ですから、予防的にということは誤解です。
「食物除去をやっていると知能に問題するでしょうか」という話ですけれども、体の蛋白質をつくっていくのはアミノ酸ですから、本当にバランスの悪い状態になると、しないとも限らないですが、統計的にやると違いは出ません。私たちは実は、それを狙って統計をとろうとしたんですよ。なぜかというと、アレルギー外来に来る子どもって落ち着きのない子が多いんです。大体、ゴソゴソするか、あるいは自閉的な子どもが多いので、「アレルギー症状を起こすと自閉症になるのではないか」と真剣に考えて、そういう傾向があるかどうか、少し統計をとりました。さすがに統計的にはそんな差は出てこないですね。
ただ、すごく極端な重症のアトピーを放置して、低蛋白状態の脱水のひどい状態で、命からがら入院してきている子どもたちは脳萎縮しています。恐ろしいです。実際、障害が残った子どもがいます。本当に最悪は、この間、九州で報道されましたが、命を落とす子どもが2年に1人ぐらいは報道されますね。それも本当に最悪ですけれども、私たちの身近なところでも、そこまで至らないけれど、植物状態ぐらいになってしまった子どもさんはいます。だから、除去食をやって重症の湿疹を何とかしてやろうと思うと、大変なことになったりします。