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財団法人母子健康協会 第30回シンポジウム 「保育における食物アレルギーの考え方と対応」
4.総合討論(2)

海老澤アトピー性皮膚炎の話はまた後ほど触れるとして、保育園での対応についてちょっとお話ししたいと思います。

一般論の話をして、先ほど保育園向けのガイドラインという話をしましたけれども、それはいま、作りつつあります。さっきご紹介した食物アレルギー研究会という会を、今度、2月13日の土曜日に旗の台の昭和大学の講堂で予定しています。ホームページにそれも出ていますけれども、そこの午前中には、保育園保健協議会での全国の保育園の、食物アレルギーへの対応の実態の調査データの発表や、私たち(伊藤先生もそうですけれども)日本小児アレルギー学会の食物アレルギー委員会という専門家の集まりで考えた、どういう食物アレルギーの管理表が適切かということも、学会としては一応出していて、その辺の案を、皆さんからのたくさんのフィードバックをいただくために、今度の研究会でそういう議論の場を設けました。例えば、「これは一般の先生ではちょっと書けないんじゃないの?」という意見とか、「こんなに細かくはできないですよ」とか、いろんな意見を言っていただくんですね。

私たちがどんな考えでつくっていったかということに関しては、研究会等に来ていただければ話しますけれども、保育園での食物アレルギー対応はどういうファクターが入ってくるかというと、まず、生後かなり早いお子さんが入ってきますよね。そうすると、アトピー性皮膚炎も食物アレルギーも未発症の子が来るわけです。その後、だんだん症状が出てきて、これがダメになったとか、あれがダメになったという話とか、湿疹に対してどういうアプローチをしていくかとか、そういう話になります。

そして離乳食が始まってくる頃になると、今度は即時型の症状といって、食べてポッというすごく早い症状が出て、そういうものに対してどういう対応をしていくかということも問題になります。ゼロ歳のときというのは、さっきは6カ月までに勝負をつけますと言いましたけれども、私たち専門家ですら、つき切れないこともゼロではないんですね。そうすると一般の先生たちのところに行くと、まだ全然勝負がついていない人たちもたくさん皆さんのところに入ってくるわけです。

乳児期は、まだ一度も食べていない食品というのがたくさんあります。そういうものを食物アレルギーの管理表の中でどういうふうに取り扱っていくか。それから、お子さんの保護者と面談して、「これはこの間、食べて大丈夫でした」という情報を取り込んでいってやっていきます。家で食べたものは与えていこうというのは、まず第一に基本方針だと思います、安全優先ですから。それを毎回毎回、お医者さんに指示書を書いてくださいと言うのか。実際そんなの書けないですよね。

私たち学会としては、解除していくというものに関しては、保育園でお母さんとの文書の取り決め等だけでやっていけばいいのではないかというふうに考えています。制限しなければいけないというものに関しては、診断書をちゃんと出します。だから、これは食べられますと言うと、いま私たちの病院では、診断書を書いてくださいと言われるんです。保育園から要求されましたといって、保育園・幼稚園側が、食べられるようになったということを証明しろというふうに言ってくるわけです。

でも、実際にはそれは、親が一筆書いて、ちゃんとサインして、「食べさせていいです」というふうになったら、乳児から食物アレルギーの解除というところまでつながっていく基本ルールとして、そのまま受け入れていいのではないかと私は思っています。

そして、例えば乳児期に診断がついたら、管理表を出してもらって、「これとこれはこういう理由で食べられない」ということを、ちゃんと選択式で書けるようなものを私たちは考えています。あとは1年に1回ずつの更新で、食べられるようになったら、どんどん、医者からの診断の情報とか誤食の情報とかを取り込みながら、お母さんと保育園関係者の方々がちゃんと文書で取り決めてそういうことを広げていく。そういう作業をしていくのが妥当ではないかというふうに考えております。

薬は、保育園は小学校よりもはるかに管理しているわけですね。アナフィラキシー等の事故が発生したときも、すぐ緊急の対応をしていこうという姿勢も小学校以上によくやっていらっしゃると思います。そういう、よくやっていらっしゃる点に関しては、そのまま現状の状況でやっていくということ。

それから、給食の提供の仕方です。これは後で伊藤先生もお話しになると思いますけれども、例えば卵アレルギーといったときに、治っていく過程を家で指導しますという話をしました。例えば卵アレルギーが治りつつあると。少量使った加工食品は摂って大丈夫、負荷試験でこれぐらいの量までは大丈夫というのがわかったとすると、私たちは、その辺までは家で繰り返し試してみてくださいという話をします。じゃあ、それを保育園であなた方がやりますか、ということなのです。それは私たちとしては、やるべきではないと考えています。

そうするとどういうことになるかというと、例えば卵白だけの除去とか、そういうのはないということです。卵をやめるか摂るか、どっちか。だから、簡単にしなければいけないわけです。単純にすればいい。卵が食べられる・食べられないというだけにしたら、すごく変わったんですね。

でも、卵アレルギーという中にも、例えば卵殻カルシウムなんて全然問題ないわけですね。そこまで制限する必要はないし、牛乳アレルギーといった場合に、乳糖というのは牛乳から精製しますが、乳糖は、本当にひどい人たちを含めて10人のうち9人は摂れるんです。そうしたら、乳糖まで本当に制限しなければいけない子だけを制限すればいいとか、そういう細かいところに関してはさらに選択式で書けるようなスペースを設けて、いま、つくっています。

あと、大豆アレルギーのときに、味噌、醤油というのは実はかなりの人が摂れるんですね、本当にひどい人でも。私たちが負荷試験で診断した本物の大豆アレルギーでも、醤油とか味噌を摂れる人が結構います。豆腐あるいは油揚げ、豆乳は反応する。でも、醤油、味噌、下手すると納豆も摂れるとか、発酵という過程が食物アレルゲンの構造を弱めてしまうということがあるわけです。

では、小麦はどうか。小麦アレルギーの場合は、醤油には小麦という表示がありますけれども、摂れる人が大多数です。だから、お酢とか醤油とかそういうのは普通のものでいい。そういう形をオプションの中に書き込めるようにして、あとは、摂れるか・摂れないかという単純化したものにする。

その結果、どういうことになるかというと、保育園保健協議会で調査をすると、皆さんの保育園や幼稚園は、年に1回、必ず誤食事故を経験しているんですね。それによって医療機関に連れて行ったり、いろいろなことをしています。それがどこから発生するかというと、例えば卵アレルギーの人がいて、このお子さんは加工食品はいい、こちらのお子さんは卵何グラムまで、こちらのお子さんは黄身はオーケーと。そんなことをやっているから、皆さん、隣の子と間違えてしまったり、配膳で間違えてしまったり、いろいろなことで事故が起きるわけです。

だから、そこの安全の閾値というのをちゃんとプラスして、保育園や幼稚園は集団で安全に生活する。例えば家では卵を試している段階でも、保育園の1食で卵を抜いて何か問題はありますか。それを、ほかのお子さんたちと同じものを与えたい、なるべく近いものを与えたいからと僕に言ってくる保育士さんや栄養士さんがいますが、それって逆にリスクを高めますよね。これはリスク・マネージメントと言いますけれども、そういう考え方が必要なんですよ。そういうことを皆さんの保育園では、たぶん、考えていらっしゃらないのではないかと思います。だから、今度のガイドラインはその辺を基本に進めていきたいと考えています。

私だけ話していると申し訳ないので、この先は伊藤先生に。細かい質問のところが来ていると思うので、実際の食物アレルギーを解説してもらいたいと思います。

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