妊婦の喫煙や受動喫煙は胎児の成長発達を妨げ、出生後にまで尾を引く著しい健康被害をもたらすことが明らかですから、妊婦の生活環境からはタバコの煙を完全に排除する必要があります。そのためには、妊婦自身への禁煙支援と並行して、妊婦を受動喫煙から守るために、夫や家族にも協力を求めなければなりません。
わが国では一般に喫煙の害に関する認識がまだ不十分で、「タバコを吸うと赤ちゃんが小さく生まれるから、お産が楽になる」と言って吸い続ける妊婦さえいるといいます。妊娠中の喫煙の害について、特に胎児の脳を傷つける可能性があることを、妊婦と家族にしっかり伝える必要があります。ただ、伝え方には注意が必要で、「赤ちゃんの知能が下がりますよ」というような断定的な言い方は、妊婦の心理面への影響が大きく、相手を責めるニュアンスも感じられて好ましくありません。そうではなくて、たとえば「最近このようなデータも出ているのですよ」といった伝え方が良いと思われます。このような言い方であれば、妊婦の心理的負担も大きくならず、しかも情報は正確に伝わります。
そして、正確な情報提供の後には禁煙支援をしっかり行うことが必要です。禁煙の必要性については、「できれば禁煙したほうがいいけど・・・」とか「本数を減らしてみては・・・」といった中途半端な言い方は不適切で、「赤ちゃんの健康のためには、禁煙が必要である」ときっぱり伝えることが大切です。
妊婦の禁煙治療にはニコチンガムやニコチンパッチのような禁煙補助薬を使うことができず、意志の力で禁煙してもらうしかありません。そのため、常に妊婦を励まし続ける身近な存在が必要で、家族の協力が不可欠です。特に夫に対しては、「がんばって禁煙して、妻にも禁煙を勧め、励まし続けてほしい」と伝えることが大切です。
インターネットを通じて禁煙支援サービスを受けられる「インターネット禁煙マラソン」というシステムもありますので、参加を勧めるのも一法です。
「赤ちゃん・妊産婦・家族のための禁煙支援ブック」(母子保健事業団発行、定価273円、ISBN 978-4-89430-417-8)も参考になります。