財団法人母子健康協会 第30回シンポジウム 「保育における食物アレルギーの考え方と対応」
3.「幼児期の食物アレルギーへの対応」
あいち小児保健医療総合センター 中央検査部長兼アレルギー科医長 伊藤浩明先生
2.新たなアレルゲンとの遭遇
さて幼児期になると食べるものが広がりますので、いろいろなもののアレルゲンに遭遇してくることがあります。エビ、カニ、ピーナッツ、そば。それからイクラのアレルギーというのも結構多いです。山芋のアレルギーというのは私の患者さんにはいっぱいいます。結構強いアレルギー反応を起こします。お母さん方のほうがむしろよく知っています。「これはアレルギーが怖い食べ物でしょう」と、よくご存じですね。ほうっておくと食べていないです。
ここが、専門医と専門医じゃない先生方の大きな違いで、例えば卵と牛乳のアレルギーの患者さんを診たときに、「卵、牛乳は食べてないですか。症状は出てないですね? じゃあ大丈夫ですね」で、診療が終わってしまうのか、「ところで、エビは食べていますか?」という話をおもむろに診察室でするのか、この違いが決定的に大きいと思っています。
アレルゲンとわかっている食べ物は、知らずに食べて症状が出れば気がつくし、症状に気づく程でなければそれでいいわけですから、除去を徹底的にちゃんとできているか、守れているかということを追求するような診療は必要ありません。そのかわり、食べられるものを満遍なくちゃんと、お母さんの違和感なく食べさせているかということを、毎回の診察で追求していきます。
そうすると、例えばエビやソバなどでは、「そんな怖いものは家ではとても食べさせられません」というお母さんがたくさん出ます。しかも、血液検査を積極的にして、検査の値が陽性だった。例えば、エビの検査をして抗体価はクラス2でした。クラス2というのは、私たちはほとんど何ともないと思いますが、お母さんは怖くて家では食べさせられないわけです。でも、「試しに食べてごらん」と言うのも医者として無責任な話で、結局、そういう指導をしようと思うと、「じゃあ、安全に食べられるかどうか病院で確認しましょう」ということで、先ほどからお話のように経口負荷試験に持っていかざるを得ないのです。
ですから、アレルギーの診療上、いろいろなものをちゃんと食べさせようと思うと、経口負荷試験をやるという武器を一つ持っていないと、患者さんの指導はそこまで踏み込めないという側面があります。
海老澤先生は、日本で一番たくさん経口負荷試験をやられています。私たちのところは年間700件くらいで、全国でも5番目には入るぐらいの数をやっています。それぐらい数をやって初めて、エビとか、そばとか、ピーナッツとか、そういうちょっとマイナーな食品の負荷試験まで手が回るという状況が生まれてきます。そこまでやってようやく、満遍なく食べるという指導ができるのが状況です。これは実際、結構大変なことかもしれません。