—アレルギー、特にアトピー性皮膚炎も含めてですけれども、医学の進歩なのか、増えているという説があります。ある方から聞いたことがあるのは、高齢出産が原因ではないかという説もあるということで、DNAがよくなくなってみたいなことをおっしゃる方もいたりするのですが、そのあたりの免疫学的なことを教えていただけたらと思います。
伊藤高齢出産がというのは、少なくともアレルギー学会で話が出たことはないですし、僕は、お母さんの年齢調査までしたことはないですけれども、若いお母さんが多いですよ(笑)。年齢はあまり関係なさそうに思います。
アレルギーがどうして増えてきているかというのは、もちろん環境要因が大きく変わっていますので、最初に前川先生がお話しになられたように、基本的にはバイ菌−−身の回りのバクテリアといいますか、細菌といいますか、これが減ってきて、子どもが小さいうちから「免疫力を鍛える」というチャンスが少なくなってきている。
逆に言うと、昔は鍛えざるを得なかった。それに耐えられなかった子どもは感染症で亡くなっていたわけです。昔だったら感染症で亡くなっていたような、ある意味体の弱い子どもたちだって、いまは普通に生育しているわけです。そういう子たちが、弱い物質に対しても過剰に反応してしまうのがアレルギーだというふうに解釈できるのですが、小さい頃から免疫力の鍛えられ方が弱いということが一つの原因だろうと思います。
ただ、先ほどの「いつ検査ができますか」というお話とも関連がありますが、体に湿疹ができていると、例えば生後2カ月、3カ月から生後6カ月までの数カ月間で、IgE抗体は爆発的に上がっていくんです。その頃のIgE抗体というのは、10以下の1ケタぐらいが正常なのですが、4、5カ月の重症アトピーで私たちのところに入院してくるような子どもさんは、3000とか5000という値になります。大人の正常値の20倍ぐらいの値になります。ほんの数カ月間でそこまで上がります。
何を観察するかというと、そこで塗り薬をガンッと使って湿疹をなくしてあげたら、その後、半年間ぐらいかけるとIgE抗体はスーッと下がるんです。ということは、もっと早く治療をしてあげたらそんなに上がらなくて済んだでしょうということで、先ほど海老澤先生も言われた、早い時期のアトピー性皮膚炎を積極的に治療しましょう、というふうに私たちは強く思っているわけです。
ですから、実は重症のアレルギーを増やしている原因は、赤ちゃんの頃のアトピー性皮膚炎の治療に失敗しているからではないかというふうに結果的には思ってしまう部分があります。このあたりがもう少し社会全般に普及していきますと、食物アレルギーの子どもが少し減ってきた、特に小麦とか魚とかいろいろなものに反応する重症者が減ってきたね、という時代がつくれるかもしれないと思っています。